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制限酵素の使用に際して

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Q1 酵素、DNA基質はどれくらいの量、濃度、時間で使用すればよいか?
A1 酵素、DNA基質の標準使用量はデータシートの ‘一般的な反応液’の記載をご参照ください。
制限酵素のユニットの定義は1時間の反応で行われており、通常は1時間から数時間程度での反応時間をお勧めします。反応に使用する標準酵素量は、反応系全体液量の1/20です。酵素を増やす場合にも、反応系の1/10以下に抑えてください。制限酵素溶液に含まれるグリセロールの反応液への過剰な持ち込み(5%以上)は、制限酵素によるDNA配列に対する認識に影響して不正確な配列認識を生じ、結果として非特異的な切断を起こす原因となります。酵素の使用量(ユニット)がDNA基質に対して少ない場合には、より長い反応時間が必要になります。なお、制限酵素の活性は認識部位の前後の配列から影響を受け、切れやすさが異なります。
Q2 制限酵素の製品名が、Mva I(EcoR II)のように書かれているが、この2つの制限酵素は同じように使用できるのか?
A2 カタログなどで( )で記載している酵素はアイソシゾマーです。同じ塩基配列を認識する制限酵素をアイソシゾマーと呼びますが、切断位置が異なる場合もあります。
Mva IとEcoR IIの場合、両者の認識配列は同じですが、Mva Iは、CC↓WGG、EcoR IIは↓CCWGGと切断位置が異なりますので、ご注意ください。
また、切断位置が同じアイソシゾマーの制限酵素の場合でも、メチル化の影響が異なる制限酵素もあります。Sau3A Iと、Mbo Iは認識配列および切断位置も同じアイソシゾマーですが、Mbo Iは、dam methylaseの影響を受けますので、一般的な大腸菌由来のDNAの切断はできませんが、Sau3A Iはdam methylaseの影響は受けませんので、一般的な大腸菌由来のDNAでも切断は可能です。
注)W:A or T
Q3 EcoR IなどではUnit濃度の高い高濃度品が用意されているが、どのように使いわければよいか?
A3 高濃度の酵素はゲノムの切断など高濃度のDNAサンプルの処理に用いられ、酵素溶液中のグリセロールが過剰に反応液へ持ち込まれることによるStar活性を未然に防ぐことができます。また、大量の酵素が必要なパルスフィールド電気泳動などでも高濃度品が便利です。しかし、反応液中の基質DNAの濃度が低い場合、高濃度品では適当なユニット数を添加するためのピペッティング操作はかなり難しくなりますので、通常品の使用をお勧めします。酵素の保存安定性はどちらも同程度です。
Q4 反応後、制限酵素を必ず失活させる必要があるか?
A4 制限酵素反応後すぐに電気泳動を行う場合には、10× Loading Bufferを添加し泳動サンプルとすれば良く、制限酵素の失活処理は不要です。しかし、制限酵素の中には安定性の高いものもあり、そのまま次の反応系に持ちこむと残存する酵素の活性が影響を与える場合があります。制限酵素の多くは加熱により失活しますが、70℃の加熱処理でも完全に失活しないものもあります。このような酵素には、フェノール処理による完全な失活処理を行ってください。失活処理後にみられる残存活性については下記のサイトをご参照ください。
各種失活処理後の残存活性
Q5 DNA基質をTEバッファーに溶解している。バッファー中のEDTAは制限酵素反応に影響しないか?
A5 制限酵素反応には、Mgイオンが必須です。過剰なEDTAは反応液中の金属イオンをキレートしてしまうため反応を阻害することがあります。核酸の調製には普通1 mMのEDTAが含まれています。反応液にDNA基質を1/10量程度加える場合、反応に影響はありません。
Q6 制限酵素で切断されたDNA鎖の末端はどのような形状か?
A6 一般に制限酵素は切断されたDNA二本鎖の5’末端に必ずリン酸基が残り、3’末端には-OH基があります。特殊な制限酵素には3’末端にはリン酸基が残るものがありますがタカラバイオで取り扱いしている製品中にはありません。
Q7 制限酵素サイトを付加したプライマーを用いてPCR増幅し、そのPCR産物を切断したい。制限酵素の認識配列の外側に何塩基必要か?
A7 制限酵素により異なりますが多くの酵素はプライマー上の制限酵素認識配列から5’側に3塩基付加することにより切断できると報告されています。下記のサイトより制限酵素ごとの一覧をご覧いただけます。
PCR産物末端の制限酵素切断
さらに詳しい情報については、Zimmermann, K.(1988)BioTechniques 24, 582-584をご覧ください。
Q8 DNA配列から切れるはずのプラスミドが制限酵素で切断されないのはなぜか?
A8 ご使用になる制限酵素が認識配列のメチル化(damdcmメチレースによる)修飾の影響を受ける場合、メチラーゼ欠損株(E.coli HST04製品コード 9129など)を宿主として、プラスミドを再調製する必要があります。なお、弊社のプラスミド製品はメチラーゼ欠損株の大腸菌を用いて調製されたものではありません。
Q9 制限酵素のメチル化の影響の項目に記載されているCG methylase、dam methylase、dcm methylaseの影響とは何か?
A9 哺乳類由来のゲノムDNAは、CG methylaseにより一部のCG配列のC塩基がメチル化され、5mCGとなっています。また、一般的によく用いられる大腸菌(JM109, DH5αなど)のほとんどは、dam methylaseとdcm methylaseを持つため、これらの宿主から調製されたプラスミドは、GATC、CCWGGの配列のそれぞれのA塩基とC塩基がメチル化され、G6mATC、C5mCWGGとなっています。DNA配列のメチル化により影響を受ける制限酵素は、その認識配列中のこれらの部位がメチル化されたDNAを切断しません。以上のように、反応に用いるDNAの由来によっては切断できない場合もありますので、メチル化の影響は必ず確認してからご使用ください。
注)W:A or T
Q10 販売している制限酵素の中で、哺乳類ゲノムのDNAメチル化解析に使用できる制限酵素はどれか?
A10 哺乳ゲノムのDNAメチル化解析に利用可能なCpGメチル化感受性制限酵素を下記サイトにまとめましたので、ご参照ください。
DNAメチル化解析に利用可能なCpGメチル化感受性制限酵素
Q11 制限酵素に添付されているBufferの組成が他社の推奨Bufferと異なる場合があるのはなぜか?
A11 制限酵素製品には必ずしも一番高い活性を示すBufferを添付しているわけではありません。Universal Bufferと専用のBasal Buffer(単離された当初に酵素ごとに最適化され使用されたBuffer)の活性に大きな違いがない場合、各種酵素で共通で使用できるUniversal Bufferを優先的に添付しています。Universal BufferはL→M→Hの順に塩濃度が高くなっており、反応液に塩を加えるだけで2つ目の制限酵素反応のためのBuffer条件となります。
Q12 制限酵素にはそれぞれUniversal Bufferでの相対活性が表示してあるが、添付Buffer以外のバッファーで高い活性を示す制限酵素もある。この場合、高い活性を示すバッファーで反応しても問題はないか?
A12 問題ありません。添付Bufferは活性測定を行っているバッファーで、もとのBasal Bufferに近い組成のもの等を選んでいます。そのため、必ずしも一番高い活性を示すバッファーではない場合があります。添付Buffer以外のバッファーで反応していただいても問題ありませんが、相対活性の数字に( )の付いている場合はStar活性の影響が出る可能性がありますので使用を避けてください。
Q13 タカラバイオの制限酵素の中には、Basal Bufferに比べて相対活性の低いUniversal Bufferを添付している酵素があるのはなぜ?
A13 タカラバイオの制限酵素は2種類の制限酵素を同時に反応させるDouble Digestionを考慮して、可能な限りUniversal Bufferを添付しています。L、M、H各BufferはNaClとTrisバッファーの濃度が異なるため、まず低い塩濃度のBufferの制限酵素を用いて第1の酵素反応を行い、その後NaCl, Tris-HCl濃度を第2の制限酵素の条件に合うように、高濃度のものを添加した後、第二の酵素反応を行うことができます。エタノール沈殿等のBuffer交換の必要がありません(通常は、Tris-HCl濃度はそのままでNaClの添加だけで十分です)。しかし、5種類のUniversal Bufferで相対活性が高くない酵素にはBasal Bufferを添付しています。このBasal Bufferは各制限酵素の至適Bufferであるため、組成が制限酵素によって異なりますのでご注意ください。

なお制限酵素をお買い上げの際、ご要望があればUniversal Buffer Set(5種類のUniversal Buffer)を同封いたします。ただし、本セットのみの発送はお受けできませんのでご了承ください。
Q14 PCR増幅産物から鋳型として用いたプラスミドDNAを除去する際に使用できる制限酵素は?
A14 GmA↓TCを認識して切断するDpn I(製品コード 1235A/B)が便利です。本酵素はdam methylaseでメチル化されたGmATCを切断しますが、メチル化されていないGATCは切断しません。従って、一般的な大腸菌(dam+株)で調製したプラスミドDNAは切断しますが、PCR産物を切断しないため、PCR増幅産物からの鋳型プラスミドの除去にも使用可能です。


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