DNA Ligation Kit

ライゲーション一般

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Q1 プラスミドベクターへのクローニングには、どのライゲーションキットを用いればよいか?
A1 標準的なプラスミドベクターへのライゲーションには、DNA Ligation Kit< Mighty Mix >(製品コード 6023)をお勧めします。本キットは、粘着末端はもちろん、高い効率を得ることが難しい平滑末端クローニングやT-Vectorへのクローニングにおいても、従来品(Ver. 1、Ver.2. 1)に比べて同等以上の高い効率が得られます。また、酵素、バッファーを含む1液タイプのプレミックス試薬なので、迅速かつ簡便にライゲーション反応が行えます。
Q2 DNA Ligation Kit Ver. 1とVer. 2とはどのような違いがあるか?
A2 大部分のライゲーション反応において、Ver. 2はVer. 1より反応液量を1/3~1/5と少量に抑えることができます。ライゲーションの効率は同等です。
Q3 PCR産物のクローニングには何がお勧め?
A3 PCR酵素の種類によって、3’末端にdAが一塩基付加した増幅産物が得られる場合と平滑末端の増幅産物が得られる場合があります。TaKaRa Ex TaqTaKaRa Taqなどで増幅したdAが付加したPCR産物の場合は、そのままライゲーションが可能なT-Vectorの利用が便利です。Mighty TA-cloning Kit(製品コード 6028)をご利用ください。ただし、長鎖のPCR産物(5 kb以上)のT Vectorへのクローニングは効率が悪くなりますので、その場合は平滑末端クローニングをお勧めします。末端平滑化およびリン酸化のための簡便な前処理用試薬も含むMighty Cloning Reagent Set (Blunt End) (製品コード 6027)が大変便利です。
PrimeSTARシリーズなどで増幅した平滑末端のPCR産物の場合はMighty Cloning Reagent Set (Blunt End) を用いた平滑末端クローニングが便利ですが、dA付加などの前処理用試薬を含むMighty TA-cloning Reagent Set for PrimeSTAR(製品コード 6019)を使用すれば、T-Vectorへのクローニングも可能です。
Q4 クローニングが可能なインサートは何kbまで?
A4 プラスミドに導入できるインサートDNAのサイズに何kbまでという制限はありませんが、長鎖になるほどライゲーション効率が低下する傾向があります。TaKaRa DNA Ligation Kit LONG(製品コード 6024)は長鎖DNAのライゲーションに最適化していますので、10 kb以上のライゲーションを行う場合に威力を発揮します。また、インサートDNAを含めたプラスミドの全サイズが大きくなると(特に10 kbを超えると)大腸菌への導入効率が低くなり、大腸菌内でのプラスミドの安定性も悪くなる場合があり、欠失したクローンになる確率が高くなります。長鎖DNAの形質転換には、大きなサイズのDNAを効率よく形質転換できるE. coli HST08 PremiumCompetent Cells(製品コード 9128)をご使用ください。
Q5 TaKaRa DNA Ligation Kit LONGは、短いDNAのライゲーションにも使用できるか?
A5 はい。TaKaRa DNA Ligation Kit LONGは、インサートDNAが数kb以下の場合でも他のライゲーションキットと同等以上の効率を示します。ただ、本キットは標準反応時間が長く、プレミックスタイプの製品ではありませんので、短鎖DNAのライゲーションには迅速・簡便にライゲーションができるDNALigation Kit <Mighty Mix>をお勧めします。
Q6 TaKaRa DNA Ligation Kit LONGでBAC Libraryは作製できるか?
A6 はい、作製できます。詳しくはテクニカルノートVol.3をご覧ください。
Q7 DNA Ligation Kit <Mighty Mix>で、反応条件を変えた方がよい場合はあるか?
A7 DNA Ligation Kit<Mighty Mix>の標準反応時間は16℃、30分です。ほとんどのライゲーション反応では、この条件で効率よくライゲーションが可能です。平滑末端ライゲーションなどライゲーションが起こりにくい場合には、反応時間を数時間から一晩に延ばすことで改善する場合があります。また、比較的ライゲーションが簡単な突出末端ライゲーションなどで反応時間を短縮したい場合には、25℃、5分の高速プロトコールでも、16℃、30分の標準プロトコールと同等の効率が得られます。
Q8 ベクターを脱リン酸化している場合、インサートDNAとどのようにつながり、環状化されるのか?
A8 アルカリホスファターゼで脱リン酸化したプラスミドベクターは、インサートDNAの5’末端リン酸基で片側の鎖のみが連結され、大腸菌導入後、大腸菌のDNA修復機構でつなぎあわされてプラスミド状態で保持されます。
Q9 DNA Ligation Kitで反応後、反応液をエタノール沈殿する際、通常通り塩(NaCl等)を加える必要があるか?
A9 DNA Ligation Kit(Ver. 1、Ver. 2.1、Mighty Mix、 LONG)で反応後は、通常通り塩(NaCl終濃度150 mM、酢酸アンモニウム終濃度2 M、酢酸ナトリウム終濃度300 mM)を加えてから、エタノール沈殿を行ってください。
Q10 制限酵素反応後の溶液をそのままLigation Kitの系に持ち込むことができるか?
A10 エタノール沈殿してからTEバッファーに溶解し直す方が望ましいでしょう。逆にライゲーション後の反応液を制限酵素処理する場合にもエタノール沈殿してから反応を行ってください。
Q11 エレクトロポレーションにより形質転換する時、ライゲーション反応液をそのまま使用できるか?
A11 効率が低下する場合がありますので、そのままエレクトロポレーションには使用できません。エタノール沈殿等のバッファー交換をしてからエレクトロポレーションにご使用ください。
Q12 クローニングに用いるコンピテントセルは何がよいか?
A12 通常のプラスミドベクターへのクローニングには、形質転換効率の高いK12株由来の大腸菌をご使用ください。プラスミドを安定に保つrecAなどの組換え能欠損、プラスミドの純度に影響を与えるendAなどのエンドヌクレアーゼ欠損を持つ大腸菌が適しています。青/白スクリーニングを行う場合は、lacZ M15を持つJM109、DH5αなどがよく用いられます。HST08 Premium、HST02、Supercharge EZ10は、上記の遺伝子型に加えてメチル化DNAを切断する遺伝子群mrr, mcrBC, hsdRMS, mcrAを完全に欠失しているため、メチル化されたDNAのクローニングにも最適です。HST08PremiumおよびSupercharge EZ10は、さらにFであり、BACライブラリーの作製にも利用できます。なお、発現用の宿主(BL21など)は一般的に形質転換効率が低くrecAendAの欠損株でもないため、クローニング用の宿主には適していません。
Q13 DNA Blunting Kit(製品コード 6025)中のLigation Solution A液、B液は、DNA Ligation Kit <Mighty Mix>で代用できるか?
A13 DNA Blunting Kit(製品コード 6025)中のLigation Solution A液、B液は、DNA Ligation Kit Ver. 1と同じ組成です。DNA Ligation Kit <Mighty Mix>はVer. 1よりも反応スケールを落とすために、DNA溶液と等量の Ligation Mixを混合するように設計されています。そのため、DNA溶液の組成による影響を受けやすく、DNA Blunting Kit中の Ligation Solution A液、B液の代りにLigation Kit <Mighty Mix>を使用するとライゲーションされないことがあります。<Mighty Mix>をお使いになる際は、DNA溶液を一旦フェノール抽出、エタノール沈殿させてから反応に供して下さい。
Q14 DNA Ligation Kit <Mighty Mix>を用いてコスミドにライゲーションするときの方法は?
A14 通常のプラスミドのようにコンピテントセルで形質転換を行う場合は、取り扱い説明書中の「【1】プラスミドベクターに外来DNAを挿入する場合」に従って操作してください。ただしパッケージングを行う場合は「【5】λファージベクターに外来DNAを挿入する場合」に従ってください。
Q15 タカラバイオではクロンテックのIn-Fusion PCR Cloning Kitも販売しているが、どのように使い分けるのか?
A15 In-Fusion HD Cloning Kitをはじめ、クロンテックのIn-Fusionキットは、独自のIn-Fusion酵素を利用するディレクショナルクローニングに便利なキットです。DNA末端に相同な15塩基があれば、どのような配列でもシームレスに融合して結合できるので、適切な制限酵素サイトが存在しない、余分な配列を一切付加したくない、サブクローニングなしで発現用ベクターに直接クローニングしたい、複数のDNA断片を正しい順番でクローニングしたいなど、通常のライゲーション反応では困難な場合にも対応が可能です。ライゲーション反応に比べて形質転換効率は1~2桁程度低くなりますが、得られた形質転換体は高い確率で意図した方向に適切にクローニングされています。クローニングを行う対象が適切な制限酵素サイトを有する場合やディレクショナルクローニングに拘らない場合には、効率の良い通常のライゲーション反応で十分ですが、上記のような問題がある場合にはIn-Fusionキットの利用もあわせてご検討ください。

トラブルシューティング

Q1 アガロースゲルから回収したDNA断片を用いるとライゲーション効率が悪い。
A1 カラムやシリカゲルを用いる市販のDNA抽出キットの場合、カラムやゲルからの抽出液をそのままライゲーション反応に用いると、効率が悪くなることがあります。このような場合、得られたDNA抽出液からNaIやその他不純物を除くために、エタノール沈殿を行いTEバッファーなどに溶解後、ライゲーション反応に用いることにより効率が改善することがあります。また、DNA量が少ない場合は、エタノール沈殿の時に共沈剤 [Genとるくんエタ沈キャリア(製品コード 9094)、グリコーゲン(DNA溶液100 μlあたり約1 μg)] を添加することにより回収率が上がります。
Q2 ライゲーションが起こりにくく、形質転換効率が悪いときに注意する点は?
A2 
  • ライゲーション反応時間を延長してください。
  • DNA溶液の塩濃度が高いとライゲーション効率が低下します。特にエタノール沈澱時の酢酸アンモニウム塩は阻害作用を示しますので、エタノール沈澱の際には塩が残らないよう、丁寧に洗浄操作を行ってください。
  • インサートDNAをアガロースゲルから切り出して精製する際、UV照射によりDNAが損傷を受けます。DNAへのUV照射時間をできるだけ短くして素早く操作を行ってください(特に300 nm以下の短波長域UV照射時)。また、市販のアガロースゲルからのDNA抽出キットで、カラムからの抽出液をそのままライゲーションに用いるキットの場合は、最終的に得られた抽出液のエタノール沈澱を行い、バッファー交換を行うことで、ライゲーション効率が改善する場合があります。
  • DNA Ligation Kitの各試薬は融解後、必ずピペッティング等によりよく混合してからご使用ください。混合が不十分な場合、組成が不均一になり、安定した結果が得られません。
  • 平滑末端のベクターライゲーションの場合は、DNA溶液の塩濃度が高いとライゲーション効率が低下します。ライゲーションに用いるDNA溶液は、可能な限り塩を除いて下さい。
  • 突出末端のライゲーションの場合、DNA溶液(ベクター+インサートDNA)を60~65℃で2~3分加温後、急冷してからLigation Kitの各試薬を加え反応を行って下さい。ライゲーションに有効な突出末端が確保され、形質転換効率が改善される場合があります。以上の操作で改善されない場合はDNAの再精製をお勧めします。

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