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Q&A

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Adenovirus Dual Expression Kit

Q1 組換えウイルスの作製方法はどのようにして決めればよいか?
A1 目的遺伝子の性質によって異なります。
  1. まず、コスミドベクター pAxcwit2またはpAxCAwtit2に目的遺伝子を挿入し組換えコスミドを作製した後、「完全長DNA導入法」で組換えウイルスを作製してください。ほとんどの場合、この方法で組換えアデノウイルスを作製することができます。ただ、目的遺伝子産物の影響、transfectionの効率、あるいは293細胞の状態などの要因により、ウイルス作製効率が低く目的ウイルスが得られにくいことがあります。その場合は、同じ組換えコスミドとAdenovirus genome DNA-TPC(別売、製品コード 6171)を用いて、「COS-TPC法」に切替え、組換えアデノウイルスを作製してください。ただし、挿入遺伝子配列内に制限酵素BspT104 I、またはPac I 認識サイトが存在している場合は「完全長DNA 導入法」は行えませんので、最初から「COS-TPC法」で行ってください。
  2. 1.の方法で目的ウイルスが得られない場合、「Cre/loxP発現制御系」の利用をご検討ください。組換えアデノウイルスの調製には、293細胞内でウイルスを増殖させることが必要です。従って、293細胞に対して挿入遺伝子産物が悪影響をおよぼす場合には、組換えアデノウイルスは得られにくい、あるいは得られないことがあります。アデノウイルスは感染後、1細胞あたり10,000個に増殖するため遺伝子産物の影響を強く受けます。プラスミドの導入では大きな影響がない場合でも、組換えウイルスが得られない可能性があります。「Cre/loxP発現制御系」では、このように遺伝子産物による悪影響がある場合でも組換えアデノウイルスを作製することができます。発現制御系で組換えアデノウイルスを作製するには、Adenovirus Cre/loxP Kit (Dual Version)(製品コード 6173)をご使用ください。
    【ご注意】
    コントロールコスミド pAxCAiLacZitを用いたコントロール実験を行ってください。組換えウイルスの作製効率が悪い、あるいは組換えウイルスが得られない場合、コントロール実験を並行して行うことで、その原因が目的遺伝子にあるのか、あるいはtransfection効率や293細胞の状態など、実験環境にあるのかを容易に判断することができます。(Q4参照
Q2 組換えコスミドの発現確認は必要か、どのように行えばよいか?
A2 確認実験を行っていただくことをお勧めいたします。
組換えアデノウイルス作製には時間がかかるため、面倒なようでも、各ステップで確認実験を行いながら進めていただくほうが、より確実に結果を得られます。組換えコスミド、あるいは組換えコスミドより調製したアデノ落としプラスミドを目的細胞にtransfectionし、適当な方法によって遺伝子の発現を確認して下さい。目的細胞へのtransfectionが困難な場合には、transfection効率の高い細胞(293細胞など)を利用することもできます。組換えコスミドのサイズは、プラスミドと異なり約40 kbとかなり大きいため、プラスミドと同じ量(重量)を使用しても分子数としては少なくなります。組換えコスミドをtransfectionされるときには、その点にご注意下さい。

Q3 「完全長DNA導入法」でも、ウイルス株の分離操作は必要か?
A3 必要です。
確かに「完全長DNA導入法」では、親ウイルスの混入はないとされていますが、一部を欠失したウイルスクローンが含まれてくることはあります。欠失したウイルスクローンの増殖が速い場合は、実際に実験を行うとき、あるいは、拡大調製を行うときに、それら欠失したクローンが優勢になることがあります。早い段階で、これらの目的ウイルスではないクローンを除くためにもウイルス株の分離操作は必要です。この操作には約3週間という時間がかかりますが、より確実に、結果を得るために必要な操作とお考え下さい。

Q4 組換えウイルスが現れない。
A4 コントロールコスミドpAxCAiLacZitを用いたコントロール実験を行ってください。
コントロール実験で組換えアデノウイルスが現れるなら、コスミドの純度が低かった可能性があります。コスミドの純度はtransfectionの効率に重大な影響を与えます。コントロール実験でも組換えウイルスが現れないなら、transfectionがうまく行われていない可能性があります。transfectionの条件を検討してください。また、できるだけ継代数の少なく、状態の良い293細胞を用いるようにしてください。2ヵ月以上の継代した293細胞では、アデノウイルス感染増殖効率が低下することがあります。
また、高発現により細胞機能障害をきたす遺伝子を組み込んだ組換えアデノウイルスは通常の方法では得られません。そのような場合は、Adenovirus Cre/loxP Kit (Dual Version)(製品コード 6173)をご使用いただき、発現制御系で組換えアデノウイルスを作製されることを薦めします。(Q1参照
【ご参考】コントロールコスミドpAxCAiLacZitを用いた場合、「完全長DNA導入法」では、10倍希釈のプレートで10~20個のウェルで細胞の変性が現れ、1次ウイルスを調製することができます。そのほとんどが目的ウイルスです。また、「COS-TPC法」では、100倍希釈のプレートで、10~20個のウェルで細胞変性が現れ、その50%以上が目的ウイルスです。細胞変性が現れるウェルの個数(得られる1次ウイルスの個数)は、transfection効率や293細胞の状態によってぶれることがあります。

Q5 コントロール実験と比較して、得られた1次ウイルスの数が極端に少ない。
A5 挿入遺伝子による影響が考えられます。そのため、得られた組換えウイルスには変異が入っているなど、目的ウイルスと異なっている可能性があります。説明書のプロトコールに従って、構造確認を確実に行うようにして下さい。また、構造に問題がない場合でも、力価があがらないこともあります。得られたウイルスのすべてに変異が入っている、力価があがらないといった場合には、挿入遺伝子の発現を抑制する必要があります。その場合には、Cre/loxP発現制御系により、組換えウイルスの作製を行うことをお勧めします。

Q6 すべてのウェルで細胞変性が見られた。
A6 本製品では、コントロールコスミドpAxCAiLacZitなど、マーカー遺伝子を挿入した組換えコスミドを使用した場合に、「完全長DNA導入法」では10倍希釈のプレートで、「COS-TPC法」の場合には100倍希釈のプレートで、10~20個ウェルで細胞変性が見られるよう(1次ウイルスが得られるよう)設定されています。ただ、293細胞の状態によっては、18日目には細胞が死滅してしまい、ウイルスによる変性と区別がつきにくくなることがあります。293細胞は、継代数が少なく状態の良いものを使用するようにして下さい。また、transfectionする組換えコスミドやDNA-TPCの量、transfectionの方法や条件によっては、ほぼすべてのウェルで細胞の変性が見られることがあります。この場合は、ウイルス液中に複数のクローンが混在している可能性があるため、初めからやり直すか、構造確認の後、限界希釈法により純化することをお勧めします。

Q7 ウイルスの力価が上がらない。
A7 力価を上げようとして293細胞に濃いウイルス液を感染させると、細胞毒性のため細胞が死滅してしまいかえって力価が下がってしまうことがあります。力価の高いウイルス液を得るためには、至適な感染条件でウイルス感染を行う必要があります。293細胞に感染を行い、ウイルスを調製する際には、10~20 PFU/cellの重複感染度(MOI: multiplicity of infection)で感染することをお勧めします。
また、濃いウイルス液を得ようとして、感染細胞の培地の大半を捨ててからウイルス液を調製すると、ウイルスとともに細胞毒性も濃縮されます。そのため、測定上のウイルス力価は上がっても細胞毒性が強すぎて、次に感染した細胞からウイルスが増殖できないことや発現が阻止されるといったことが起きやすいのでお勧めしません。いったん毒性の高いウイルス液になると、限界希釈法により純化する必要があります。
プロトコールどおりに行っても挿入した遺伝子によっては力価が上がらない場合は、ウイルスを精製・濃縮して下さい。ウイルスの精製法に関しては説明書の「付録5」や下記文献を参照して下さい。
  • Kanegae, Y., Makimura, M., and Saito, I. (1994) Jpn. J. Med. Sci. Biol., 47, 153.
  • 鐘ヶ江裕美、斎藤泉 (1999) 実験医学別冊「新訂 新遺伝子工学ハンドブック 改訂 第3版」、202.
  • 鐘ヶ江裕美、斎藤泉 (2003) 実験医学別冊「新訂 新遺伝子工学ハンドブック 改訂 第4版」、166.

Q8 目的細胞に感染させるときにどのくらい希釈して使うのか?
A8 アデノウイルスベクターによる遺伝子導入は、エレクトロポレーションやリン酸カルシウム法などの他の遺伝子導入法に比べると毒性が低く、細胞の正常機能を損なわずに目的遺伝子を発現させることが可能です。しかし、濃いウイルス液を用いて感染を行うと過剰生産されたウイルスのコートタンパク質が細胞毒性を示すこともあります。細胞が傷んでも高い発現が必要な場合は10倍希釈、細胞の正常機能を損なわないように発現させる場合は、20倍希釈くらいが限界と思ってください。ただし目的細胞の特性によっても至適条件は異なりますので、説明書の「E. 目的細胞へのウイルスの感染」に従い、条件検討を行って下さい。

Q9 発現はどのくらい持続するのか?
A9 細胞分裂が顕著でない場合は、発現は1日後から観察され、2、3日でピークに達して1週間程度持続し、以後低下しますが、3~8週目あたりでも一部の発現は見られると考えられます。なお、アデノウイルスベクターは細胞のゲノムとは独立に存在し、複製しないので、細胞が分裂しているときには希釈されてしまい、発現の持続は短くなってしまいます。従って、可能ならば細胞分裂を抑制するような条件で(例えば full sheetsになってから)感染させる方が発現は高く持続します。

Q10 この製品を使いたいが、遺伝子組換え生物の使用等を規制するカルタヘナ法の適用はどのようになるのか?
A10 本製品の使用は、「遺伝子組換え生物等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」(平成15年法律第97号)の第2条の6及び7に定められる第二種使用等にあたります。よって、本製品を研究目的に使用される場合には、「研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令」(平成16年2月19日施行)の適用を受けます。
本省令に定められる拡散防止措置は、組換えコスミドを作製する段階と組換えアデノウイルスの作製・感染実験の段階で異なり、それぞれ以下のようになります。なお、目的遺伝子が毒性あるいは病原性等を有する恐れのある場合または、その核酸供与体の実験分類がクラス3を超え、高度の拡散防止措置を必要とする場合は、より厳しい基準が適応され、文部科学大臣による確認実験になる場合もあります。いずれにせよ、個人で判断せずにご所属研究機関の安全委員会の判断に従ってください。

<参考>
・組換えコスミドベクター作製
宿主ベクター系:EK1系(Escherichia coli K12株又はこの誘導株を宿主とする場合)
宿主の実験分類:認定宿主ベクター系区分B1
核酸供与体の実験分類:クラス1またはクラス2(クラス3もありえる)
拡散防止措置の区分:P1またはP2(核酸供与体のクラスによりP3もありえる)
実験に係わる手続き:機関実験 
大臣確認実験(二種省令第4条関係別表第1の1に該当する場合)

・組換えアデノウイルス作製・組換えアデノウイルス感染
宿主:ヒトアデノウイルス5型由来非増殖型ベクター
宿主としての実験分類:クラス2
核酸供与体の実験分類:クラス1またはクラス2(クラス3もありえる)
拡散防止措置の区分:P2(核酸供与体によりP3もありえる)
実験に係わる手続き:機関実験
大臣確認実験(二種省令第4条関係別表第1に該当する場合)

・拡散防止措置施設以外での遺伝子組換え生物の運搬、保管
漏出、逃亡その他拡散しない構造の容器に入れて運送すること。
容器又は包装に遺伝子組換え生物等である旨を表示すること。
保管場所に遺伝子組換え生物等を保管している旨を表示すること。

Q11 293細胞内での継代でRCA (Replication Competent Adenovirus) が混入してくることはあるのか?
A11 アデノウイルスベクターは、力価が極めて高いため、5~6回以上の継代が必要なケースは稀です。従って、実験で用いる場合にはRCAが問題になることはほとんどありません。ただ、10回以上継代を続けると、293細胞との相同組換えなどにより、E1A、E1B遺伝子を獲得した複製機能をもつアデノウイルス(RCA)が混入してくることが報告されています。RCAの出現頻度、検出法などについても多数報告があります(下記文献を参照)。
そのため、継代を繰返してアデノウイルスベクターを使用される場合には、RCAのチェックを行うことをお勧めいたします。RCAの検出は、HeLa細胞やA549細胞に感染させた後、しばらく維持してこれらの細胞に変性が認められないことで確認を行う方法が一般的ですが、PCR法をもちいれば短期間で高感度に検出することもできます(説明書の「付録6」を参照)。
  • Lochmuller, H., Jani, A., Huard, J., Prescott, S., Simoneae, M., Massie, B., Karpati, G. and Acsadi, G. (1994) Human Gene Therapy 5, 1485.
  • Hehir, KM, Armentano, D., Cardoza, LM., Choquette, TL., Berthelette, PB., White, GA.,Couture, LA., Everton, MB., Keegan, J., Martin, JM., Pratt, DA., Smith, AE. and Wadsworth, SC. (1996) J. of Virol. 70, 8459.
  • Zhang, WW., Koch, PE., and Roth, JA. (1995) BioTech. 18, 444.
  • Dion, LD., Fang, J. and Garver Jr., RI. (1996) J. of Virological Methods 56, 99.

Q12 万が一汚染があった場合、どれくらいの感染があるか?
A12 この製品で作製する組換えアデノウイルスはアデノウイルス5型由来ではありますが、E1遺伝子を欠失させているため、293細胞以外では実際上増殖しません。そのため、一般のウイルスのようにヒトで感染増殖してカゼ症状を起こすなど、ヒトからヒトへ伝播することは有りえないと考えられます。しかし、万一、ヒト細胞に感染すれば、核内へ遺伝子を運び、組み込んだ遺伝子を発現することが考えられます。従って、P2 レベルのウイルス(通常のカゼのウイルスからB型肝炎ウイルスまでを含む)として消毒等を必ず行ってください。
なお、野生型のアデノウイルス5型はありふれたものです。ほとんどの人は、3歳くらいまでにアデノウイルス5型の風邪に感染するため中和抗体を持っています。

Q13 汚染時の消毒はどのようにおこなうべきか?(例えば培地がこぼれたときなど)
A13 一般的な消毒法でよいのですが、アデノウイルスの知識も役立つと思います。アデノウイルスはエンベロープ(細胞膜由来)を持たず、タンパクの殻をかぶっています。従って、タンパクを変性させれば失活します。安全キャビネット内にて作業を行い、消毒には10%SDSで拭いた後、さらに70%エタノールで拭いてください。また、アデノウイルスは熱に弱く、56℃、30分で失活するといわれていますが、実際の消毒には、オートクレーブを10分以上行ってください。また、ウイルスを取り扱う場合には、フィルター付きのチップを使用してください。安全キャビネットでアデノウイルスを扱った後は必ずUVランプを30分~1時間つけてください。

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