細胞・培地

PromoCell社 ヒト内皮細胞 Q&A

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内皮細胞一般

Q1 血管形成の研究に適した内皮細胞のタイプは?
A1 血管形成の研究は、in vitroで内皮細胞を培養する技術の向上に伴って進歩してきました。 初期の頃はヒト臍帯静脈から単離した大血管内皮細胞(HUVEC)が使用されていましたが、血管形成は大血管内皮細胞よりも微小血管内皮細胞でよく見られる現象であるため、現在では微小血管内皮細胞モデルがより適切であると考えられています。
Q2 アテローム性動脈硬化症の研究にはどのタイプの内皮細胞が使用できるか?
A2 アテローム性動脈硬化症は、動脈壁(粥腫:プラーク)に脂肪が蓄積して血流を阻害します。 粥腫が血塊を引き起こして破裂することもあります。 アテローム性動脈硬化症はしばしば心臓疾患とみなされますが、体内のどの動脈でも起こります。 PromoCell社の冠状動脈内皮細胞(HCAEC)、大動脈内皮細胞(HAoEC)、肺動脈内皮細胞(HPAEC)は、アテローム性動脈硬化症の研究に使用することができます。
Q3 初代内皮細胞の培養にはどのタイプのフラスコを使用すれば良いか?
A3 PromoCell社の内皮細胞増殖培地は初代内皮細胞培養のために至適化されており、培養容器のコーティングは必要ありません。 コーティングフラスコ/プレートを使用したい場合は、コラーゲンタイプI、ゼラチン、フィブロネクチンでコーティングしたものが使用できます。ただし、コーティングのタイプによって細胞の表現型が変わる可能性があることに留意してください。結果を比較する一連の実験には同じタイプの容器を用いることが重要です。
Q4 内皮細胞の培養にはどの培地が適しているか?
A4 ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、ヒト臍帯動脈内皮細胞(HUAEC)、ヒト肺動脈内皮細胞(HPAEC)、ヒト伏在静脈内皮細胞(HSaVEC)の単離に使用している標準培地はEndothelial Cell Growth Medium(製品コード C-22110、C-22010)です。この培地にはECGS(ウシ視床下部抽出物)が含まれており、内皮細胞の分裂促進効果があります。合成培地に近い培地を望む場合は、Endothelial Cell Growth Medium 2(製品コード C-22111、C-22011)が使用できます。この培地は、内皮細胞の増殖刺激因子として、ECGSの代わりにVEGF、IGF、bFGF、EGFが含まれています。
他の細胞の培地についてはWEBカタログ、説明書をご参照ください。

内皮細胞増殖培地

Q5 内皮細胞増殖培地MV/MV2(製品コード C-22120、C-22121など)のpHは?
A5 内皮細胞基本培地MV/MV2 のpHは7.4±0.1です。
Q6 内皮細胞増殖培地2/MV2(製品コード C-22111、C-22121など)に含まれるVEGFの種類は?
A6 大腸菌で調製した組換えヒトVEGF-165(製品コード C-64420)を用いています。
Q7 ECGS/heparin(ECGS/H)とは何か?
A7 ECGSはEndothelial Cell Growth Supplement(内皮細胞増殖サプリメント)の略で、内容は水溶性ウシ視床下部抽出物です。内皮細胞や数種類の細胞に対して分裂促進効果を持ち、特に低血清や無血清条件下での細胞培養に効果があります。また、ヘパリンは臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)や成人由来の血管内皮細胞の増殖においてECGSの刺激効果を大幅に増強するため、ECGSと組み合わせて使用されます(Maciag et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. (1979); 76, 5674-5678; Thornton et al., Science (1983); 222, 623-625.)。
なお、PromoCell社のECGSに使用されるウシの脳組織はニュージーランド産で、BSE-freeに分類されています。
Q8 内皮細胞増殖培地/脂肪前駆細胞増殖培地に含まれるECGSの濃度は?
A8 ECGSはタンパク質濃度3 mg/mlで調製しています。内皮細胞と微小血管内皮細胞のECGSの最適添加濃度は2 ml/500 mlです。ECGS/Hはヘパリン(22.5 mg/ml)を含んでおり、終濃度は45 mgヘパリン/500 ml培地となります。
Q9 内皮細胞増殖培地(製品コード C-22110、C-22111、C-22120など)に含まれるヘパリンのタイプは?HMW(高分子量未分画ヘパリン)か?それともLMW(低分子量ヘパリン)か?ヘパリンの由来は?
A9 内皮細胞増殖培地に含まれているヘパリンは、ブタ粘膜由来のHMW(高分子量未分画ヘパリン)です。分子量は20~30 kDaです。

ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)

Q10 ヒト臍帯静脈内皮細胞(単一ドナー)(製品コード C-12200)とヒト臍帯静脈内皮細胞(プールド)(製品コード C-12203)の違いは何か?
A10 ヒト臍帯静脈内皮細胞(単一ドナー)は一人のドナーの臍帯から単離し、初代培養後、サブコンフルエントの状態で凍結しています。 ヒト臍帯静脈内皮細胞(プールド)は2~4人の臍帯から同時に単離して別々のディッシュで培養します。細胞をトリプシンで剥がした後、増殖効率を考慮してプールしています。融解した細胞はどちらも第一継代になります。推奨培地はEndothelial Cell Growth Medium(製品コード C-22110、C-22010)、またはEndothelial Cell Growth Medium 2(製品コード C-22111、C-22011)です。doubling timeは両方のタイプで同じです(通常18~36時間)。
Q11 どのような方法で、抗生物質を使用することなくHUVECを臍帯から分離しているのか?
A11 PromoCell社では、バッファーや培地で洗浄していない状態で臍帯を入手しています。この方法は、洗浄によって血管が微生物に汚染されるのを防ぎます。 細胞の調製を始める前に、臍帯を両端から滅菌されたメスでカットします。この方法で内皮細胞を臍帯静脈から無菌的に分離して、抗生物質を含まない培地で細胞を調製することができます。
Q12 コンフルエント状態まで培養したHUVECはCD31抗原を発現するか?
A12 はい。PromoCell社では品質検定としてコンフルエント状態まで培養した内皮細胞のCD31抗原の発現を調べています。抗原の発現は細胞間の接触部分ではっきりと見られます。

ヒト肺動脈内皮細胞 (HPAEC)

Q13 PromoCell社のヒト肺動脈内皮細胞(HPAEC)(製品コード C-12241)は胎児由来か?新生児由来か?成人由来か?
A13 PromoCell社のヒト肺動脈内皮細胞(HPAEC)は成人ドナーの肺動脈から単離されています。組織は法医学分野から入手しています。
Q14 ヒト肺動脈内皮細胞(HPAEC)は肺動脈から直接培養しているか?それとも微小血管由来か?
A14 PromoCell社のヒト肺動脈内皮細胞(HPAEC)は、肺動脈から直接培養しています。心臓のすぐ後ろから分岐を含む動脈部分を採取して培養に用います。HPAECは、肺動脈の一番奥の細胞層(すなわち内皮細胞)です。
PromoCell社では、周辺肺組織の毛細管から単離した肺微小血管内皮細胞(HPMEC)(製品コード C-12281)も販売しています。

ヒト大動脈内皮細胞(HAoEC)

Q15 ヒト大動脈内皮細胞(HAoEC)(製品コード C-12271)は大動脈のどの部分から単離しているか?
A15 大動脈は上行大動脈、大動脈弓、下行大動脈に分けることができます。下行大動脈は、更に、胸部大動脈と腹部大動脈に分類されます。PromoCell社のヒト大動脈内皮細胞(HAoEC)は、ほとんどのロットが胸部大動脈または腹部大動脈から単離されています。

皮膚微小血管内皮細胞(HDMEC)

Q16 小児由来(製品コード C-12210)と成人由来(製品コード C-12212)皮膚微小血管内皮細胞の違いは?
A16 小児由来HDMECは男児(1~10歳)の包皮から単離しています。これに対して成人由来HDMECは頬、こめかみ、乳房など異なる部位から調製しており、ドナーは20歳以上でほとんどが女性です。
Q17 ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HDMEC)を培養すると2種類の形態の違う細胞が含まれているように見えるが、これは正常か?HDMECの純度はどの様に保証されているか?
A17 ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HDMEC)は小児の包皮、または成人の真皮から単離されており、純度は95%以上です。真皮には血管やリンパ管が含まれているため、HDMECには形態が異なる微小血管細胞と微小リンパ管細胞が含まれています。両者は起源が共通で、数種類のマーカーで同定することができます。
Q18 皮膚微小血管内皮細胞(HDMEC)に含まれる皮膚リンパ管内皮細胞(HDLEC)の割合は調べているか?
A18 いいえ。ロット毎のHDLECとHDMECの割合は調べていません。HDLECの割合はロットによって異なり、5~60%の間です。
Q19 皮膚微小血管内皮細胞の小児由来(製品コード C-12210)と 成人由来(製品コード C-12212)は増殖効率が違うのか?
A19 成人由来の方が小児由来より増殖が遅い傾向がありますが、顕著な差はありません。両者の倍加時間(doubling time)は、通常、20~45時間です。
Q20 Endothelial Cell Growth Medium MV Kit(製品コード C-22120)からヒドロコルチゾンを除去すると、皮膚微小血管内皮細胞(HDMEC)の増殖効率が顕著に落ちるのは何故か?
A20 EGFとヒドロコルチゾンは微小血管内皮細胞の増殖に対して相乗効果が報告されています。従って、ヒドロコルチゾンを除くと皮膚微小血管内皮細胞の増殖に明らかな影響が出ます。
Q21 PromoCell社の皮膚微小血管内皮細胞(HDMEC)は、血管形成刺激に応答して遊走と管形成を示すか?
A21 原則として全ての微小血管内皮細胞は遊走能、増殖能を持っており、血管形成刺激後のアッセイで管形成または発芽が認められるはずです。しかしながら、PromoCell社では全ての製品についてロット毎の試験は行っていないため、全てのロットが血管形成刺激に反応すると断言はできません。PromoCell社では、一般的な品質検定に加えて3D血管形成アッセイでVEGF応答が陽性であることを確認した製品も用意しています(ヒト皮膚微小血管内皮細胞(pre-screened)(製品コード C-12215))。このアッセイは、血管形成の4つのステージ(タンパク質分解活性、遊走、増殖、管形成)をシミュレーションしています。HDMEC pre-screenedは、組換えヒトVEGF(20 ng/ml)で24~48時間刺激すると、明確な発芽構造を示します。

ヒト肺微小血管内皮細胞(HPMEC)

Q22 ヒト肺微小血管内皮細胞(HPMEC)(製品コード C-12281)は肺のどの部分から採っているか?細動脈か?毛細血管か?
A22 ヒト肺微小血管内皮細胞(HPMEC)は予め大血管を除いた肺実質組織から調製しています。従って、HPMECの大部分は毛細血管由来です。
Q23 PromoCell社のヒト心臓微小血管内皮細胞(HCMEC)(製品コード C-12285)は、心内膜細胞(心室の内側の細胞)か?
A23 PromoCell社のヒト心臓微小血管内皮細胞(HCMEC)は心内膜細胞ではありません。心筋の毛細血管から単離されています。本当の微小血管内皮細胞です。
Q24 ヒト子宮微小血管内皮細胞(HUtMEC)(製品コード C-12295)はどんな組織から調製されているか?
A24 ヒト子宮微小血管内皮細胞(HUtMEC)は子宮壁(子宮筋層)の中央の層から分離されます。組織提供者は、ホルモン類の投与は受けていません。