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SmartChip™ Real-Time PCR System

癌および他の疾患のバイオマーカーとしてのmRNA、miRNA、およびlncRNAの使用

癌および疾患を診断する主流の方法というのは、すでに症状が現れている病的状態の患者において、時間を要する高額で煩雑な組織学的な診断方法によって実施されている。理想的な診断の方法とは、症状が現れる前の予備群や、その兆候が見られない人々でも非侵襲的で、迅速かつ効率的な手法により、手ごろで正確なスクリーニングできることである。そこで、体内の血中を循環する核酸は、癌および疾患の潜在的なバイオマーカーの1つとして注目されている。臨床的には、循環する核酸はすでに出生前診断に利用されており、その他にも様々な病的状態に対して多数の候補試験が検討されている。これらの循環する核酸は、mRNA、microRNA(miRNA)、およびlong noncoding RNA (lncRNA)の3つのカテゴリーに分類されている。

それぞれの RNAバイオマーカーの特徴
それぞれのRNAバイオマーカーの特徴
肝臓癌、乳癌および前立腺癌において体内を循環するmRNAバイオマーカーが報告されている。しかし、細胞外mRNAは急速に分解されて、ユニークなバイオマーカーとして特徴づけるには困難なほど小さな断片になる。いくつかの場合において循環mRNAはタンパク質または脂質のシャペロンと複合体を形成し、血液中に持続的に残存することが可能である。循環mRNAは種類が多く代謝回転率が高いため、プレシジョン診断の挑戦的なバイオマーカーの候補となる。

miRNAは、タンパク質に翻訳されずに機能する非コードの小さなRNA(通常20塩基未満)で、遺伝子発現を調節すると考えられている。mRNAとは異なり、miRNAは比較的安定であり、断片化に耐える傾向にある。現在、多数の癌、遺伝病、心臓病、腎臓病、中枢神経系の機能不全および障害、ならびに肥満やウイルス性および寄生虫性感染症に至るまで、何百もの疾患にまたがる何千ものユニークなmiRNAが同定されている。miRNAは、唾液、涙、脳脊髄液、尿など血液以外の体液にも存在している。

lncRNAは、特定のタンパク質をコードしない、より長いRNA転写産物(通常200塩基以上)である。miRNAと同様、lncRNAは遺伝子発現の調節に関与すると考えられている。何十万ものlncRNAが同定されており、複数の癌、神経疾患、心疾患および老化は疾患特異的なlncRNAと関連している。
RNAバイオマーカースクリーニングのためのソリューション
これらのRNAバイオマーカーをスクリーニングする時の課題の1つは、様々なサンプルで数百の標的バイオマーカーをスクリーニングする必要があることである。ハイスループットリアルタイムPCRは、解決策の1つとなり、多くのターゲットバイオマーカーを迅速かつ高感度に検出することができる。SmartChip Real-Time PCR Systemを利用し、血液、細胞株、T細胞、血漿、および様々なタイプの患者生検を含む多様なサンプルから複数の癌および疾患に関するmiRNA、lncRNA、およびmRNAをプロファイリングする論文報告が多数発表されている。バイオマーカー研究に重要だったのは、SmartChipシステムがたくさんのアッセイおよびサンプルの組み合わせを実現し、疾患ごとにバイオマーカーパネルが準備されていることである。WaferGen社(現 Takara Bio USA社)は共同研究を通じ、mRNA、miRNA、およびlncRNAの複数のパネルを設計・提供するといった研究サポートを行い、SmartChipシステム上で疾患モデル中に存在する様な主要なバイオマーカーをハイスループットにスクリーニングすることができる。
ハイスループット研究
いくつかのバイオマーカー研究では、ヒトオンコロジーパネルが利用された。このパネルには、シグナル伝達、癌、アポトーシス、血管新生、心臓血管疾患、ADME(毒性学、薬物代謝および輸送)、炎症、キナーゼ、転写因子、薬物標的、G-細胞周期および増殖、DNA損傷修復、成長因子、プロテイナーゼ、およびホスファターゼといった16の機能グループを網羅する1,200以上の特異的なターゲットが含まれる。ある研究では、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)と癌との間の相互作用を研究するためにヒトオンコロジーパネルが用いられた。この研究では、シグナル伝達(MAPKおよびPI3K/Akt)、炎症、血管新生、腫瘍サプレッサー、プロアポトーシスおよびDNA損傷修復経路を含む複数の経路にて発現に差異が観られた20遺伝子が同定された。これらのデータは、HCMVが正常な細胞においても発癌性および/または癌の悪性度を高める(oncomodulation)活性を有する可能性を示した。また同パネルは、タンパク質合成の関連因子であるtyrosyl-tRNA synthetaseが核に局在し、DNA損傷修復遺伝子の発現を調節する過程を解明する研究にも利用された。

別の研究では、事前に検証済みの1,306のmiRNAを標的としたmiRNAパネルが利用されている。miRNAパネルは、SmatChipシステムと併せて使用することで、患者の腫瘍から採取した大腸癌細胞および膵管腺癌細胞を含む数多くのサンプル中の数千のmiRNAのスクリーニングを可能にし、疾患の重要なmiRNAを同定することができた。また癌の他にも、同miRNAパネルは、出生前診断の非侵襲的方法として、母体血漿中のダウン症候群に関連するmiRNAを同定するための研究にも利用された。さらに異なる細胞からなる集合体を研究・特徴づけるために同パネルが利用されており、1つの研究事例を挙げると、癌細胞とアポトーシスを調節する幹細胞の間で共有されるmiRNAの特性解析が行われた。別の例では、血清、血漿および白血球中のmiRNAを縦方向に特徴づけた。さらに別のグループでは、SmartChipシステムを利用したスクリーニングにより、miRNA-98に依存的なT細胞のグルココルチコイド抑制のメカニズムを見出した。

最後にSmartChipシステムと、1,700以上のアッセイを含むlncRNAパネルを用いた研究を紹介する。このパネルはBiogazelle社と共同で開発され、Minimum Information for Publication of Quantitative Real-Time PCR Experiments(MIQE)ガイドラインに準拠し、ゲノムデータベースより厳選されたlncRNAを対象としている。ある研究事例では、脳、血液、骨髄、乳癌、結腸癌、腎臓癌、膵臓癌、卵巣癌、膵臓癌、肺、卵巣、前立腺および皮膚由来の60種類のヒト癌細胞株からなるNCI-60癌細胞株パネル中のlncRNAの発現を研究するためにこのlncRNAパネルが利用された。その結果、1,700種のlncRNAの97%がNCI-60パネル中の少なくとも1つの細胞株において再現良く発現していることが確認された。また別の研究事例では、メラノーマ形成時に中心的な役割を果たすlncRNAを同定するために、同lncRNAパネルが使用された。この研究では、SAMMSONというlncRNAがメラノーマにおいて高発現しているとが分かり、そのメカニズムを解明する研究につながった。最近の研究事例では同パネルを利用して、体細胞コピー数変化(SCNA)が癌遺伝子または癌抑制遺伝子として機能するlncRNAの変化過程に及ぼす影響を確認するためのスクリーニング系が開発された。SmartChipのlncRNAパネルは、癌を引き起こすlncRNAを同定するのに大変役立つ可能性があるパネルと言える。

以下にSmartChip Real-Time PCR SystemによるmRNA、miRNAおよびlncRNAバイオマーカーの研究の文献例を紹介する。
SmartChip システム使用文献
  • Intraindividual Temporal miRNA Variability in Serum, Plasma, and White Blood Cell Subpopulations.
    Ammerlaan, W. & Betsou, F. Biopreserv. Biobank (2016) 14:bio.2015.0125.
  • Defining a population of stem-like human prostate cancer cells that can generate and propagate castration-resistant prostate cancer.
    Chen, X. et al. Clin. Cancer Res. (2016) 22:4505-4516.
  • MicroRNA-5p and -3p co-expression and cross-targeting in colon cancer cells.
    Choo, K. B., Soon, Y. L., Nguyen, P. N. N., Hiew, M. S. Y. & Huang, C.-J. J. Biomed. Sci. (2014) 21:95.
  • G. C. Glucocorticoids suppress T cell function by up-regulating microRNA-98.
    Davis, T. E., Kis-Toth, K., Szanto, A. & Tsokos, Arthritis Rheum. (2013) 65:1882-1890.
  • BRD4 is a novel therapeutic target for liver fibrosis.
    Ding, N. et al.Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. (2015) 112:15713-8.
  • Differentially expressed microRNAs in maternal plasma for the noninvasive prenatal diagnosis of down syndrome (Trisomy 21).
    Kamhieh-Milz, J. et al. Biomed Res. Int. (2014) 2014.
  • Melanoma addiction to the long non-coding RNA SAMMSON.
    Leucci, E. et al. Nature (2016) 531:518-522.
  • Evaluation of quantitative miRNA expression platforms in the microRNA quality control (miRQC) study.
    Mestdagh, P. et al. Nat. Methods (2014) 11:809-815.
  • Long non-coding RNA expression pro fi ling in the NCI 60 cancer cell line panel using.
    Mestdagh, P., Lefever, S., Volders, P. & Derveaux, S. Sci. Data 1-6 doi:10.1038/sdata.2016.52 (2016).
  • RNA-Seq versus oligonucleotide array assessment of dose-dependent TCDD-elicited hepatic gene expression in mice.
    Nault, R., Fader, K. A. & Zacharewski, T. BMC Genomics (2015) 16:373.
  • Selective activation of miRNAs of the primate-specific chromosome 19 miRNA cluster (C19MC) in cancer and stem cells and possible contribution to regulation of apoptosis.
    Nguyen, P. N. N., Huang, C.-J., Sugii, S., Cheong, S. K. & Choo, K. B. J. Biomed. Sci. (2017) 24:20.
  • Evaluation and validation of a robust single cell RNA-amplification protocol through transcriptional profiling of enriched lung cancer initiating cells.
    Rothwell, D. G. et al. BMC Genomics (2014) 15:1129.
  • Identification of Critical Biomarkers Responsive to Anti-Autophagy Therapies for Pancreatic Ductal Adenocarcinoma through a Performance Analysis of miRNA Platforms.
    Sardi, S. H., Glassner, B. J., Chang, J. R. & Yim, S. H. J. Bioanal. Biomed. (2014) 1:doi:10.4172/1948-593X.S10-001.
  • Prevalence of PALB2 mutations in the Creighton University Breast Cancer Family Registry.
    Snyder, C. et al. Breast Cancer Res. Treat. (2015) 150:637-641.
  • Hypoxia-responsive miR-210 promotes self-renewal capacity of colon tumor-initiating cells by repressing ISCU and by inducing lactate production.
    Ullmann, P. et al. Oncotarget. (2016) 7.
  • Targeted genomic screen reveals focal long non-coding RNA copy number alterations in cancer.
    Volders, P.-J. et al. bioRxiv (2017) 113316:doi:10.1101/113316.
  • Oxidative stress diverts trna synthetase to nucleus for protection against dna damage.
    Wei, N. et al. Mol. Cell (2014) 56:323-332.
  • Full-length single-cell RNA-seq applied to a viral human cancer: applications to HPV expression and splicing analysis in HeLa S3 cells.
    Wu, L. et al. Gigascience (2015) 4:51.
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