G3T-hi細胞は、ヒト腎臓由来の細胞株293T(G418耐性)にハイグロマイシン耐性遺伝子を用いてヒト
N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ III(
N-acetylglucosaminyltransferase III :GnT-III)を導入したGnT-III高発現細胞株である。
本細胞は、
Retrovirus Packaging Kit Eco(製品コード 6160)または
Retrovirus Packaging Kit Ampho(製品コード 6161)を用いて、
gag-pol、
env遺伝子の発現ベクタープラスミドと目的遺伝子を組み込んだ組換えレトロウイルスベクタープラスミドを共導入することにより、迅速かつ一過性に高力価の組換えウイルスを産生できるようデザインされている。本細胞は293T由来であるため、SV40のT抗原遺伝子が導入されており、この働きによってレトロウイルスのRNAが増幅され、高力価ウイルス液が得られる。通常、Retrovirus Packaging Kitを用いた一過性発現では10
5~10
7 cfu/mlのウイルス液が得られる。
G3T-hi細胞は、細胞膜糖鎖がGnT-IIIにより修飾されることを特徴とする。発芽するレトロウイルスは宿主細胞膜を纏うため、本細胞より得られた組換えレトロウイルスの膜タンパク質糖鎖は、GnT-IIIにより修飾を受けていると推測される。この糖鎖修飾により、本細胞を用いて調製したレトロウイルスは、RetroNectin
*(組換えヒトフィブロネクチンフラグメント)への親和性が高くなっている。したがって、培養器のコート剤としてRetroNectinを用いることにより標的細胞への遺伝子導入効率が大きく向上する。RetroNectinは特に血球系細胞を標的とした遺伝子導入に有効である。
* RetroNectin(製品コード T100A/B):フィブロネクチンの細胞接着ドメインとヘパリン結合ドメインを有する組換えヒトフィブロネクチンフラグメント
【組換えレトロウイルスの作製の概略】