LA PCR関連

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Q1 LA PCR反応を行う際の反応条件は?
A1 増幅サイズ、反応volume、使用機器等により至適条件が異なります。
●サイクル数
鋳型DNA量および増幅サイズを考慮し、25~35サイクルの範囲で至適サイクル数を設定してください。
サイクル数が少なすぎると充分な増幅量が得られない場合があります。また、サイクル数が多すぎると、全体にスメアが生じる場合があります。
●初期変性
ゲノムDNAを鋳型とする場合でも、94℃、1~2分で十分です。
●サイクル中の変性温度と時間
0.2 mlマイクロチューブを使用する場合には、98℃、10秒あるいは94℃、20秒を推奨します。
変性時間が短かすぎたり、変性温度が低すぎると全体的にスメアが生じたり、増幅効率が悪くなる場合があります。また、変性時間が長すぎたり、変性温度が高すぎると増幅産物が全く確認できない場合があります。
●アニーリングおよび伸長
至適アニーリング温度(通常55~68℃)は、2℃間隔で検討してください。また、60~68℃の間でもTaKaRa LA Taqは充分な活性を示しますので、アニーリング-伸長温度をこの範囲に設定することにより2段階温度PCR(シャトルPCR)が可能です。伸長温度が68~72℃の場合には、1 kbあたりおおよそ30秒~1分間の設定をお勧めします。設定温度が68℃以下の場合、長めの時間設定が必要となりますのでご注意ください。
通常、アニーリング温度が高すぎると全く増幅産物は認められず、低すぎると非特異的な反応が起こりやすくなります。また、伸長時間が短すぎると全く増幅産物は認められないか、あるいは短い非特異的産物が優先的に増幅する場合があります。逆に長すぎるとスメアが生じるようになります。
Q2 LA PCRのプライマーを選ぶ際の注意点は?
A2 特異性が非常に重要です。20 mer程度のプライマーでも、特異性が高ければ20 kb以上の増幅反応に使用できます。ただし、可能ならば25~30 mer程度のプライマーを設計することをお勧めします。特異性の低いプライマーの場合、非常に多くのエキストラバンドを生ずることになります。
プライマー設計の注意点としては、GC含量が40~60%くらいで、3'末端部がGCリッチにならないこと、上流・下流プライマーのTm値を揃えるなどがあります。
Q3 プライマーの使用量は?
A3 最終濃度0.1 μM~1.0 μMの範囲で至適濃度を検討してください。プライマー濃度が低すぎると、増幅量が少なくなる場合があります。プライマー濃度が高すぎると、非特異的な反応が助長し、結果的に特異的な増幅反応が起こりにくくなる場合があります。 通常、鋳型DNA量が多い場合、あるいはHigh Complexity DNA(例、ヒトゲノムDNA)を鋳型にする場合、プライマー濃度は低めに設定します。また鋳型DNA量が少ない場合、あるいはLow Complexity DNA(例、プラスミド等)を鋳型にする場合、プライマー濃度は高めに設定します。
Q4 LA PCRを行う際の至適酵素量は?
A4 TaKaRa LA PCR Kit Ver. 2.1の場合、50 μlの反応の際には2.5 UのTaKaRa LA Taqをお勧めします。しかし、至適酵素量は鋳型DNA量あるいはcomplexity、そして増幅サイズ等により影響される場合があります。酵素量が多すぎると非特異的な反応が起こりやすくなったり、全体的にスメアが生じることがあります。また、酵素量が少なすぎると増幅効率が悪くなることがあります。
Q5 LA PCRを行う際の鋳型DNAの調製法および使用量は?
A5 鋳型DNAの状態は、LA PCRの成否に重要なファクターです。10 kbを超える増幅反応を行う場合には、簡便な方法(例えばcellを熱処理あるいはプロテアーゼ処理のみ)で調製したサンプルDNAは鋳型としては適さないようです。精製度の高いインタクトなDNA(nick等が入っていないもの)を使用することをお勧めします。
Q6 λファージ粒子から直接LA PCRが行えるか?
A6 はい。99℃、10分処理後のファージ粒子約106~107 pfuを鋳型にして、少なくとも8 kbの増幅が可能です。
Q7 Mammalian cell、あるいはE. coliを熱処理(98℃、2分)あるいはプロテアーゼ処理しただけのサンプルをLA PCRに利用できるか?
A7
E. coliの場合
熱処理しただけで10 kbの増幅が可能です。(37℃ overnight culture in L-brothを2 μl使用/50 μl PCR)
●ヒト細胞(培養細胞)の場合
熱処理しただけでは、数百ベースの増幅が限界です。
また、プロテアーゼ処理し、熱処理したサンプルでも、1~2 kbの増幅が限界と考えます。長鎖フラグメントの増幅は、推奨標準プロトコールによって精製したDNAの利用をお勧めします。
Q8 泳動した際に全体的にスメアが生じる、なぜか?
A8 スメアの原因としては次のことが考えられます。
原 因 改善方法
使用酵素量が多すぎる。 0.5 U間隔で酵素量を減らしていく。
変性時間が短すぎる。 変性時間を5秒間隔で長くする。
変性温度が低すぎる。 変性温度を0.5℃間隔で上げていく。
dNTP量が少なすぎる。 50 μM間隔で上げていく。
extension時間が長すぎる。 1分間隔で短くしていく。
サイクル数が多すぎる。 2サイクル間隔で減らしていく。
Template量が多すぎる。 Template量を20%ずつ減らしていく。
プライマー配列が特異的でない。 特異的配列を選ぶ。
Q9 非特異的に反応したバンドが多くみられる、なぜか?
A9 原因としては次のことが考えられます。
原 因 改善方法
プライマー濃度が高すぎる。 0.1 μM間隔で濃度を変化させる。
プライマーのデザインが悪い。 プライマーの場所を変更し、特異性を高める。3'末端がGCリッチにならないようにする。上流・下流プライマーの配列が相補配列にならないようにする。
酵素量が多すぎる。 0.5 U間隔で酵素量を減らしていく。
サイクル数が多すぎる。 2サイクル間隔で減らしていく。
アニーリング温度が低すぎる。 2℃間隔で上げていく。
室温から変性温度(94℃~98℃)に達する間に起こる、プライマーの非特異的なアニーリング。 Cool Start法を行う。あるいは、ホットスタートPCR用酵素、TaKaRa LA Taq Hot Start Version (製品コード RR042A/B)を利用する。
extension時間が短すぎる。 1分間隔で上げていく。
変性が不充分である。 温度を0.5℃間隔で、時間を5秒間隔で増やしていく。
Template量が多すぎる。 Template量を20%ずつ減らしていく。
Q10 長鎖PCRフラグメントの泳動に適したゲルは?
A10 PrimeGel Agarose GOLD 3-40K(製品コード 5802)をゲル濃度0.3~0.5%で使用されることをお勧めします。(フラグメント長が15 kb以上の場合は、0.3%での使用をお勧めします。)