Agarose H14「TAKARA」

アガロースゲルによる核酸電気泳動の基本

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Q1 アガロースゲルとアクリルアミドゲルはどう使い分けるのか?
A1 アガロースゲルはゲルの調製が簡単で、分離できる核酸サイズの範囲も広く便利です。しかし、ゲル厚やゲル濃度を調節しても直鎖状DNAの1~2塩基の違いを検出できません。
アクリルアミドゲルはDNAサイズの分解能が良く1塩基の違いも検出でき、小さいサイズ(数塩基)から数kb程度のサイズの断片の泳動にも使用できます。しかし、分離できるDNAサイズの範囲が狭いためサイズに合わせてゲル濃度を変える必要があります。
Q2 アガロースはどれを使っても同じなのか?
A2 精製度の低い(安価な)アガロースは不純物を多く含み、特にDNAをアガロースゲルから回収する場合に、次の酵素反応を阻害する原因となります。タカラバイオのPrimeGelシリーズ等のアガロースは高度に精製されており、不純物が慎重に取り除かれています。さらに高度に精製されたDNAを回収する場合は、DNA回収用グレードのアガロース[PrimeGel Agarose LE 1-20K GAT(製品コード 5801A)PrimeGel Agarose LMT PCR-Sieve GAT(製品コード 5815A)]の使用をお勧めします。
Q3 アガロースゲル電気泳動の際、使用するバッファーは何がよいか?
A3 1,000 bp以下のDNAで回収率をあまり問題にしない場合は、1×TBE Bufferがお勧めできます。TAE BufferよりTBE Bufferを用いた方が、よりシャープなDNAバンドになります。近接したDNAサイズを解析する場合、TBE Bufferを用いることにより、明確に分離することができます。
15,000 bp以上のDNAについては、1×TAE Bufferを用いることにより、DNAバンドの分離が促進され、よい結果が得られます。ただ、TAE BufferはTBE Bufferより緩衝力が低いため、長時間の泳動の際は時々バッファーを循環させたり陰極側と陽極側のバッファーを混合する操作が必要です。バッファーの緩衝力の低下速度は電圧(v/h)やバッファー槽の容量により変わります。
どちらのバッファーを使用する場合でも、ゲル上に3~8 mm高のバッファー容量が必要で、少ないとゲルが乾燥してしまう危険性が高くなります。一方、過剰量のバッファーは電気泳動槽の陰極と陽極の間の抵抗を下げ、その結果ゲルへの電圧勾配が下がり、DNAの移動度が遅くなります。また過熱やDNAバンドのひずみを引き起こすこともあります。
Q4 DNAサンプルをアプライする時のローディングダイには何を使えば良いのか?
A4 キシレンシアノールかBPB(ブロモフェノールブルー)を泳動サンプルに加え、電気泳動中にサンプルがゲルのどこまで泳動されているかを確認してください。色素の移動度はゲルの濃度、アガロースの種類、泳動バッファーにより異なります。各条件における色素の移動度はこちらからご覧いただけます。
Q5 泳動後のゲルの染色には何を使えば良いのか?
A5 エチジウムブロマイドは一般的なUVイルミネーターで観察でき、安価なため広く使われています。SYBR Green I(製品コード 5760A/5761A)は二本鎖DNAの、SYBR Green II(製品コード 5770A/5771A)はRNAや一本鎖DNAの染色に使用でき、専用のフィルター(や光源)を用いることで高感度な検出が可能です。サイズの小さな(約1 kb以下)DNA断片はモル数が同じでもDNA量が少ないため、染色後も薄く見づらくなりますが、SYBR Green Iは検出感度が高く、エチジウムブロマイド染色で見えなかった小さなDNA断片でも検出が可能です。短い波長域の紫外線UVの照射は切断などのDNAダメージが大きいため、精製後クローニングをされる場合には長波長域の照射光源を持つイルミネーターを使用してください。
Q6 泳動後ゲルを染色する場合と、色素をゲルに入れておく場合の違いは何ですか?
A6 泳動後染色すると、染色むらなく染まり、鮮明な泳動像が得られます。
また、染色液は数回使用できるため、ゲル数が多い場合には少ない色素量でゲルの染色をしていただけます。泳動槽とゲルへ直接、色素を加える場合には、ゲルの調製時に色素を加えておく必要があり、均一な染色像も得られにくい欠点がありますが、染色時間を短縮できます。
SYBR Greenをあらかじめ加えたゲルを用いた場合、電気泳動後に染色する方法に比べ、感度が低下し、シャープなバンドになりません。またDNAの移動度も異なるため、SYBR Greenをあらかじめ加えたゲルを用いて染色する方法はお勧めしません。
Q7 Mupidと大きな泳動槽のそれぞれの利点は?
A7 Mupidなどの小型泳動装置は、短時間で泳動が終了しプラスミド、PCR産物の解析には機能的に十分です。大きな泳動槽では、分解能がよくなり、電圧、電流の調節が可能となり泳動時間を容易に変えられます。また、ゲルサイズが大きいため一度に多くのサンプルの解析を行えます。
Q8 染色液の廃液はどのように処理すればよいのか?
A8 核酸の染色液は変異原性を持つものが多いため、そのまま排水として流さずに、廃液を市販の専用の吸着カラム[bond Ex Starter Kit(製品コード 740701)など]や活性炭に通し、色素を吸着処理後に廃棄してください。活性炭の廃棄方法は、関連法令ならびに地方自治体の基準に従ってください。

トラブルシューティング

Q1 サンプルをアガロースゲルのウェル(櫛穴)にうまくアプライできない。
A1 DNA溶液などはそのままでは比重が軽くウェルに入っていきません。
タカラバイオの制限酵素にはサンプルアプライ用の10×Loading Buffer(泳動用色素とグリセロール入り)が添付していますので、サンプルとよく混ぜてアプライしてください。グリセロールの重みにより、泳動サンプルがウェルの中にゆっくりと沈んでいきます。
Q2 プラスミドを制限酵素処理した後、電気泳動すると数百bp付近に強い染色像が拡がってみられる。これは何?
A2 プラスミドと一緒に抽出されたRNA(主にrRNA)が、DNA調製時にRNase処理していない場合、数百bp付近にかなり濃い染色像として見られます。これは、大腸菌への形質転換、制限酵素処理、PCR反応には影響はありません。 RNase Aをローディングバッファーに加えるか、プラスミドDNAをRNase Aで処理するとこの染色像はなくなります。
Q3 泳動中にゲルをみるとローディングダイが弓状になって泳動されている。
A3 高電圧下で電気泳動を行うと、ゲル全体の温度が不均一になり、ゲルの端部と中央で泳動度が異なるいわゆるスマイリング現象が起こります。ゲル全体を冷却するか電圧を下げて泳動するとこの現象は起こりません。
Q4 泳動後ゲル写真を撮るとバンドがにじんだような泳動像がみえる。
A4 ウェルの中に気泡が入っていたり、完全にウェルがバッファーに浸っていない場合には、電気泳動後のバンドが不鮮明になります。サンプルをアプライ後、ウェルが完全にバッファーに浸っていることを確認してください。

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