PCR、LA PCR™、Hot Start PCR について

PCR法の原理

PCR(Polymerase Chain Reaction)法とは、

 ・DNA鎖の熱変性(denaturation step)
 ・プライマーのアニーリング(annealing step)
 ・ポリメラーゼによる相補鎖の合成(extension step)

を繰り返し行うことによりin vitroでDNAを増幅する方法である(図1参照)。この方法を用いると、DNAを数時間で少なくとも105倍に増幅できる。TaKaRa Taq(製品コード R001)は、Thermus aquaticus YT-1株よりDNA Polymerase遺伝子をクローニングし、この遺伝子を導入した組換え体大腸菌を用いて大量発現し、高度に精製した94 kDaの耐熱性DNAポリメラーゼで、天然のTaq DNA Polymeraseと同じ機能を持っている。


図1 PCRによるDNA増幅の工程

ステップ1:プライマー、dNTP、ポリメラーゼを含んだ反応液中で、目的とする二本鎖DNA断片を熱変性する(例えば、94℃、30 sec.)
ステップ2:熱変性により生じた一本鎖鋳型DNAにプライマーをアニーリングする(例えば、55℃、30 sec.)
ステップ3:DNAポリメラーゼを用いて相補鎖DNAを合成する(例えば、72℃、1 min./kb)
ステップ4:増幅産物としての二本鎖DNAを再度熱変性して一本鎖にする(ステップ1に戻る)
ステップ1~4を1サイクルとして、25~30サイクル繰り返す。ただし、目的DNA断片により、増幅の最大効率を得る条件が異なるので、目的DNA断片に応じて設定条件を変更する必要がある。

LA PCR法

PCR法は、分子生物学のみならず、医学を始め生物学全体に広く浸透し、加えて法医学、食品、環境衛生検査、動植物検査等の分野で、簡便迅速な方法として汎用されている。PCR法に使用されるポリメラーゼとしては、Taq DNA Polymeraseが一般的であるが、Taq DNA Polymeraseを用いたPCR法には以下のような限界もある。
  1. 正確性(Fidelity)
    Taq DNA Polymeraseは、一般的にfidelityがあまり高くないといわれ、PCR中のmisincorporationが問題になる場合もあり、PCRクローニング、変異導入等の際、注意が必要とされている。
  2. 増幅鎖長
    Taq DNA Polymeraseを用いたPCRでは、通常、数kbのDNAを増幅し、10 kbを超える増幅は困難だといわれている。これは、特にマッピング等のゲノム解析にPCR法を導入する際の障害となっている。
また、クローニング等PCR以降の実験や、感度を要求する食品環境衛生検査等において、増幅量を多くすることは非常に重要なことである。
タカラバイオは、これらの限界を解決すべく、ポリメラーゼ/バッファー/反応条件を総合的に検討することで、正確性を改善するとともに、40 kbのDNAも効率よく増幅できるLA PCR(Long and Accurate PCR)テクノロジーを開発した。このLA PCRテクノロジーは、PCRの応用分野をさらに拡大するもので、今後ゲノム解析、遺伝子診断、長鎖フラグメントのクローニングおよび変異導入等、さまざまな利用が期待できる。

LA PCR™の原理

LA PCRの鍵となるのは酵素である。TaKaRa Ex TaqTaKaRa LA Taqは3’→5’エキソヌクレアーゼ活性(proof reading活性)を含む耐熱性DNAポリメラーゼである。まちがった塩基が取り込まれると、それ以後の反応性が極端に悪くなる。これを3'→5'エキソヌクレアーゼ活性により取り除いて反応をスムーズに進めることにより、結果的に長鎖DNAの増幅が可能となる(図2)。


図2 LA PCRの原理

Hot Start PCR法

Hot Start PCR法は、サイクル前のミスプライミングやプライマーダイマーに由来する非特異的増幅を防ぎ、目的断片の増幅効率を高める有効な方法である。TaKaRa Taq Hot Start Version 、TaKaRa Ex Taq Hot Start Version、TaKaRa LA Taq Hot Start Versionには、抗Taq抗体と結合させた Hot Start 用のPCR酵素を使用しており、最初の熱変性(ステップ1)で抗体が変性し酵素から外れるまで、ポリメラーゼ活性が抑制される。


図3 Hot Start PCRの原理

Hot Start Versionをもうお試しになりましたか?
-Hot Start PCR酵素の特長-

タカラバイオのHot Start PCR酵素は…
非特異的増幅を強力に抑制
反応液が高温に達するまで、抗体がポリメラーゼ活性を抑えます。
PCRサイクル前のミスプライミングやプライマーダイマーに由来する非特異的増幅はもう起こりません(下記実験例参照)。
再現性の高いPCRが可能
反応液の室温調製が可能です。(各コンポーネントは氷上に置いてください。)
反応液調製時の温度や時間の影響を受けにくいため、ハンドリングに起因する結果のバラツキが軽減されます。
特別な反応ステップの追加は不要
ポリメラーゼ活性を抑制する抗体はPCRの最初の変成ステップで速やかに失活し、ポリメラーゼ活性が100%回復します。化学修飾タイプのHot Start PCR酵素と違い、長時間の活性化ステップは必要ありません。
幅広い製品ラインナップをご用意
タカラバイオでは、ほとんどすべてのPCR酵素についてHot Start Versionをご用意しています。
同じサイクリング条件で、従来酵素からHot Start Versionへ安心して切り替えていただくことができます。
もちろん、基本性能はそのままです。

実験例:ノーマル酵素とHot Start Versionの比較
3人の実験者がそれぞれ、TaKaRa Ex TaqおよびTaKaRa Ex Taq Hot Start Versionを使用して同じ条件でPCRを実施した。 反応液の調製は室温で行った(各コンポーネントは氷上)。

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