スワブ(綿棒)は、遺伝子解析や感染症検査に一般的に使用される取扱いが容易な試料採取用具である。口腔スワブは、ヒトゲノムDNAの単離用に標準化された遺伝子検査ワークフローに組み込まれ、臨床的もしくは学術的なDNAプロファイリングに使用されている。また、上皮表面用の様々なスワブ(例:歯/鼻咽頭/膣スワブなど)も分子遺伝学的研究および感染症診断などに使用されている。
NucleoMag DNA Swabは、スワブ標本からゲノムDNA(ヒトおよび/または微生物)を精製するキットである。本キットは、一般的に使用されている綿棒および試料採取用綿棒(例えば、植毛綿棒)に対して使用することができる。
スワブ標本は強力な溶解バッファーであるBuffer FLBとProteinase Kを加えて56℃で溶解させ、その後溶解液からスワブ自体を取り除く。この過程にはNucleoSpin Forensic Filter(少数のサンプルの場合)やNucleoSpin Trace Filter Plate(96 well plateの場合)を使用するのが便利である。
溶解後の精製過程は、高反応性の超常磁性ビーズへの核酸の可逆的吸着に基づいており、高塩濃度下でDNAを磁気ビーズに吸着し、数度の洗浄を行った後、低塩濃度の溶出バッファーで高純度のDNAが溶出される。このDNA溶液はそのまま直接様々なアプリケーションに使用できる。
本製品は、手動または自動分注機器(Hamilton、Tecan、Eppendorfプラットフォームなど)や磁気分離装置(KingFisher Duo、Flexなど)のどちらにも使用可能である。
原理 | 磁性ビーズ法 |
形状 | 高反応性超磁性ビーズ |
操作 | 手動または自動化装置 |
サンプル | スワブ(通常または試料採取用綿棒) |
回収量 | 1~3 μg(サンプル量や品質に依存) |
回収濃度 | 10~30 ng/μl |
溶出液量 | 50~100 μl |
精製時間 | 120分/96サンプル(手動) 30分/96サンプル(KingFisher Flex使用時) (溶解ステップは除く)
|
理論上の結合容量 | 0.4 μg/μl ビーズ |
2種のスワブからのヒトゲノムDNAの回収とqPCRによる評価
標準的な綿棒およびFLOQSwabs(COPAN社)を用いて6人以上から口腔スワブ検体を集めた。ライセートはNucleoSpin Forensic Filtersを使用して調製し、NucleoMag DNA Swabの標準プロトコルに従って、KingFisher Flexプラットフォーム(ThermoFisher Scientific社)を用いてDNAを精製した。得られたDNAの品質は、Quantifiler Human DNA Quantification assay(ThermoFisher Scientific社)を用いて評価した。
どちらのスワブからも良好なDNAが抽出されていることがわかった。
ヒト検体中の細菌DNAの高感度検出
KingFisher FlexプラットフォームでNucleoMag DNA Swabを用いて8人の口腔スワブからDNAを抽出した。得られたDNAに対して細菌の16S RNA遺伝子を標的とするqPCRを行ったところ、すべてのDNA溶液で良好な結果が得られた。このことから、NucleoMag DNA Swabを用いてスワブ検体からの細菌の検出が可能であることを実証した。
NucleoMag DNA Swabで検出された病原体種のリスト
さまさまな種類のスワブ検体からNucleoMag DNA Swabを用いてDNAを抽出し、qPCRにより検出された病原体のリストを示す。
注:一部の病原体、特に酵母の良好な検出にはLysis Buffer FLBおよびLiquid Proteinase Kを使用した追加の溶解ステップが必要です。
NucleoMagおよびNucleoSpinはマッハライ・ナーゲル社の、KingFisherはThermoFisher Scientific社の登録商標です。