複合糖質の糖組成分析の操作手順
糖組成分析の操作手順を下に示す。これは従来の方法と異なり、酸加水分解、N-アセチル化、PA化のすべてのステップで揮発性の試薬を用いるので、過剰の試薬を減圧留去するだけで除くことができる。このことにより1本の試験管内ですべての反応を行うone-tube reactionが可能となった。またHPLC分析に陰イオン交換カラムを、溶出にホウ酸緩衝液を用いているので分離能が非常によくなり、PA化単糖のピークを残存の試薬や試料のタンパク質、脂質部分由来のピークに影響されることなく分析できる。このことにより蛍光標識後、試料を精製することなく直接HPLCのカラムで分析できるようになった4)。
■操作手順
試料(100 pmol~10 nmol)
|←4 Mトリフルオロ酢酸を40 μl添加、100℃にて3時間加熱
|←内部標準(リボース、100 pmol~10 nmol)を添加
├ 濃縮乾固
|←ピリジン/メタノール/水(15:30:10)を50μl、無水酢酸を2 μl添加
| 室温にて30分間放置
├ 濃縮乾固
↓
糖混合物
|
├ PA化
| (PA化の操作は、PALSTATION専用の単糖分析用試薬キットの
| プロトコールに従い行う)
↓
PA化糖混合物
|
|←水を100 μl~1 ml添加
↓
HPLC分析(1/10~1/100量をカラムに注入)
図2 複合糖質の糖組成分析
PA化単糖混合物の分離
■操作手順
1. 複合糖質に含まれる主な10種類の糖をそれぞれ1 nmol用意し、混合したものをプロトコールに従いPA化する。
2. PA化単糖の混合物を水に溶解する。
3. 1/100量にあたる10 pmol相当をPALPAK Type Aにて分析する。
■結果PA-
N-アセチルガラクトサミン、PA-2-デオキシリボース、PA-ラムノース、PA-キシロース、PA-
N-アセチルグルコサミン、PA-リボース、PA-グルコース、PA-マンノース、PA-フコース、PA-ガラクトースの溶出順序で、よい分離パターンが得られた。
Column: | PALPAK Type A(4.6 mmΦ×150 mm) |
Solvent: | CH3CN:0.7 M H3BO3-KOH(pH9.0)="1":9 |
Flow rate: | 0.3 ml/min |
Column Temp: | 65℃ |
図3 PA化単糖10種混合物のHPLC分析
PA化単糖の定量性の確認
■操作手順
1. 各糖の含量を10 pmolから1 nmolに調製した混合物を、それぞれプロトコールに従い酸加水分解、
N-アセチル化、PA化を行う。
2. PALPAK Type Aにて分析する。
■結果
 |
図4 PA化単糖の検量線 |
縦軸にPA化の単糖のピークの高さ、横軸に試料の糖の量をとり検量線を作成する(図4)。
このように
N-アセチルガラクトサミン、
N-アセチルグルコサミン、フコース、ガラクトース、マンノースともによい直線性を示し、定量性を確認することができた(縦軸にPA化単糖のピークの面積をとった検量線も同様の結果を示すことを確認している)。
糖タンパク質の糖組成分析〔α1-酸性糖タンパク質〕
α
1-酸性糖タンパク質は約44,000の分子量を持ち、約44%の
N-アセチルラクトサミン型糖鎖を含むことが知られている。このことを以下の実験により確認する。
■操作手順
1. α
1-酸性糖タンパク質100 pmolを用い、プロトコールに従って酸加水分解、
N-アセチル化、PA化を行う。
2. 1/10量にあたる10 pmol相当をPALPAK Type Aにて分析する。
■結果スタンダードのPA化単糖とのピークの高さの比較により
N-アセチルグルコサミン、マンノース、フコース、ガラクトースを22:12:2:12の割合で含むことが確認できた。
Column: | PALPAK Type A(4.6 mmΦ×150 mm) |
Solvent: | CH3CN:0.7 M H3BO3-KOH(pH9.0)="1":9 |
Flow rate: | 0.3 ml/min |
Column Temp: | 65℃ |
図5 α1-酸性糖タンパク質のHPLC分析
糖脂質の糖組成分析〔ガングリオシド(GM2)〕
■操作手順
1. ガングリオ系列の糖脂質GM2を100 pmolとり、プロトコールに従ってPA化を行う。
2. 1/10量にあたる10 pmol相当をPALPAK Type Aにて分析する。
■結果
スタンダードのPA化単糖とのピークの高さの比較により
N-アセチルガラクトサミン、グルコース、ガラクトースを1.0:1.0:1.0の割合で含むことが確認できた。
Column: | PALPAK Type A(4.6 mmΦ×150 mm) |
Solvent: | CH3CN:0.7 M H3BO3-KOH(pH9.0)="1":9 |
Flow rate: | 0.3 ml/min |
Column Temp: | 65℃ |
図6 糖脂質GM2のHPLC分析
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