PALSTATION™を用いたヒトIgGの糖鎖分析

IgGの構造

免疫グロブリン、すなわち抗体は、すべての哺乳動物の血清や組織体液中に存在する糖タンパク質の一群である。IgG(Immunoglobulin G)は、正常ヒト血清中の免疫グロブリンの約75~85%を占め、9~15 mg/mlの濃度で存在しており、その構造は図1に示したように、同一の2本のH鎖(Heavy chain)と、同一の2本のL鎖(Light chain)とから構成されている対称形の分子である。このIgGが生理活性を発揮するためには、抗原と反応すること(抗原抗体反応)が必要であるが、この作用には図1中に示したVの部分が関与している。一方、Fcの部分は、マクロファージや白血球などのレセプターに結合し、異物を破壊しやすくする働きや、補体の活性化などに関与している。

図1 IgGの構造

IgGの糖鎖構造とその異常

糖鎖はIgGのY字型のちょうど“首”にあたる部分に存在し、IgG全体の立体構造を保つ上でも重要な働きをもっており、その糖鎖は中性化糖鎖として、16種類存在している(図2)。このようにIgGの糖鎖構造は、非常に不均一な糖鎖の混合物により構成されているが、健常人ではその16種類の相対比率は、ほぼ一定である。しかし骨髄腫患者やリューマチ患者の糖鎖は、非常に特異な相対比率を示すことが知られている1,2)

図2 IgGの糖鎖を構成する16種類の中性化糖鎖

PA化法によるヒト血清中IgGの糖鎖パターン解析

IgGの糖鎖構造の解析をPA化により近い、それぞれの糖鎖の相対比が定量的に確認できることを高橋らが報告した3)。これらの研究をもとに我々は、図3のようなプロトコールに従って、新しく開発したPA化法を血清中IgGの糖鎖パターンの解析に応用した。その結果、健常人と白血病患者のIgGの糖鎖パターンには顕著な差が見られた(図4)。このことを臨床に応用できれば、糖鎖の構造変化の検出法を用いた特異的診断が可能となる。さらに今後、この構造異常の起こる原因や機序が解明されれば、糖鎖の構造変化と病態との関係が議論できるようになるであろう。
Sugar chain analysis of human serum IgG

Serum
 ↓ Protein A(Immuno Pure)
 ↓ Hydrazinolysis/N-Acetylation
 ↓ Pyridylamination(PALSTATION)
PA-Sugar Chains
●Amine-silica(PALPAK Type N)
●ODS-silica(PALPAK Type R)
図3 ヒト血清IgGの糖鎖分析

Column:PALPAK Type R(4.6 mmΦ×250 mm)
Solvent A:100 mM acetic acid-triethylamine(pH3.8)
Solvent B:Solvent A containing 0.5% 1-butanol
Gradient:0→60 min, 20→50% B
Flow Rate:1.0 ml/min
Column Temp:40℃



※ ピーク上のアルファベットは図2に示す糖鎖構造に対応する。
図4 白血病患者と健常人のHPLC分析によるIgG糖鎖の比較

Protocol

1. 血清からのIgGの精製

血清からのIgGの精製にはImmunoPure IgG Purification Kitを使用する。
1. ヒト血清50 μlをImmunoPure Binding Bufferで平衡化したProtein A AffinityPak Columnに添加する。
2. 未結合タンパク質を洗い落とすためにImmunoPure Binding Buffer 4 ml、さらに10 mM NH4HCO3 15 mlでカラムを洗う。
3. pH2.2の希TFA水溶液を用いてIgGを溶出させ、1 mlずつ分取し、280 nmの吸収を測定する(図4)。
4. 抗ヒトIgG抗体を用い、aの部分にのみIgGが存在することを確かめた後、その部分を集める。

図5 血清からのIgGの精製

2. 糖鎖の切り出し

A ヒドラジン分解による糖鎖の切り出し
1. 図5のaで示した部分を集め、そのうちの約2 nmol相当をガラスチューブに入れて凍結乾燥する。
2. 無水ヒドラジンを100 μlを加えて減圧下封管し、100℃、10時間加熱する。
3. 開管後、トルエンを加え減圧濃縮する操作を繰り返し、ヒドラジンを完全に共沸留去する*
4. 残渣に新しく調製した飽和NaHCO3水溶液100 μlを加えて溶かし、その液が弱塩基性になっていることを確かめる。
5. 無水酢酸を10 μl加え、よく撹拌し、15分間室温に放置する。
6. さらに100 μlの飽和NaHCO3水溶液と10 μlの無水酢酸を加えてよく撹拌し、20分間室温に放置してN-アセチル化を行う。
7. 反応後、Dowex 50(H+型)を加えてpH3.0に調整する。
8. 別にパスツールピペットの底にグラスウールをつめたカラムを作っておき、ここに反応液とDowex 50を入れ、樹脂の5倍量の水で洗う。
9. ろ液と洗液をロータリーエバポレーターで40℃以下の温度で濃縮乾固する。
*この操作の間は、反応チューブを加熱しないこと。

B 酵素処理による糖鎖の切り出し
1. 図5のaで示した部分を集め、そのうちの約2 nmol相当をマイクロ遠心チューブに入れて凍結乾燥する。
2. 100 mM NH4HCO3(pH8.6)40 μlと水20 μlを加えて溶解する。そこへGlycopeptidase Fを20 μl (10 mU)加え、37℃で一晩インキュベーションする。
3. 反応後、100 mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.0)50 μlを添加し、37℃にて1時間インキュベーションし、グリコシルアミンからアンモニアを遊離させる。

3. 切り出された糖鎖のPA化

プロトコールの2-Aで得た残渣に水を加えて溶解し、PALSTATION専用バイアルに移し凍結乾燥したもの、またはプロトコールの2-Bで得た液をPALSTATION専用バイアルに移し凍結乾燥したものをPALSTATIONによりPA化した。PA化の操作はPALSTATION専用の「糖鎖分析用」試薬キットのプロトコールに従い行う。

4. PA化糖鎖のシアル酸含量の測定

1. プロトコールの3で得たPA化糖鎖の約1/100量(約20 pmol相当)をあらかじめSolvent Aで平衡化したPALPAK Type Nに注入する。
2. Solvent Bの割合を40分間かけて100%まで直線的に上昇させ、10分間100%のまま保持させ溶出する。
Column:PALPAK Type N(4.6 mmΦ×250 mm)
Solvent
A:
20 mM acetic acid-triethylamine(pH7.3)/acetonitrile(40/60,v/v)
Solvent
B:
320 mM acetic acid-triethylamine(pH7.3)/acetonitrile(40/60,v/v)
Gradient:0→40 min, 0→100% B
Flow
Rate:
1.0 ml/min
Column
Temp:
40℃

図6 シアル酸含量の測定

5. PA化糖鎖の糖鎖パターン

1. プロトコールの3で得たPA化糖鎖の約1/10量(約200 pmol相当)を0.05 NのHClで90℃1時間処理し、シアル酸残基を除去する。
2. この試料をあらかじめSolvent B 20%、Solvent A 80%を含む液で平衡化したPALPAK Type Rに注入する。
3. Solvent Bの割合を60分間かけて50%まで直線的に上昇させ溶出する。
Column:PALPAK Type R(4.6 mmΦ×250 mm)
Solvent
A:
10 mM acetic acid-triethylamine(pH3.8)
Solvent
B:
Solvent A containing 0.5% 1-butanol
Flow
Rate:
1.0 ml/min
Column
Temp:
40℃

図7 HPLCによるPA化糖鎖のパターン分析

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