現在、市販されているPCR酵素の多くは、クローン化したものを大腸菌で発現させ精製しているので、
E. coli ゲノムDNAによる内因性コンタミネーションの可能性がある。このため、精製時に
E. coli 由来のDNA量を最低限に抑えた、高品質の酵素を使用することは、実験上の種々のトラブルを防止する上で重要なポイントとなっている。
PrimeSTAR HS DNA Polymeraseと、他社High-Fidelity PCR酵素について、製品に混入している
E. coli ゲノムDNAの程度を、ori領域のnested PCRを行って検証した例を示す。
PrimeSTAR HS DNA Polymeraseでは、
E. coli ゲノムDNAのコンタミネーションは認められなかった(下図A)。これに対し、他社High-Fidelity PCR酵素では、鋳型を加えない系においてもori領域(143 bp)の増幅が認められた(下図B)。これらの結果から、PrimeSTAR HS DNA Polymeraseに混入している
E. coli ゲノムDNA量は、100 fg未満であると考えられ、他社High-Fidelity PCR酵素よりも品質が高いことがわかる。
(A)PrimeSTAR HS DNA Polymeraseを使用 |
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(B)他社High-Fidelity PCR酵素を使用 |
レーン7、8での増幅も、E. coli ゲノムDNAが混入していたことに起因するものと考えられる。 |
図
E. coli ori領域のnested PCRの比較
増幅領域:
E. coli ori region
増幅サイズ:2nd PCR 143 bp
レーンM:100 bp DNA Ladder
1~6:Negative Control(鋳型DNAなし)
7:
E. coli JM109ゲノムDNA1 fgを添加
8:
E. coli JM109ゲノムDNA10 fgを添加
9:
E. coli JM109ゲノムDNA100 fgを添加
10:
E. coli JM109ゲノムDNA1 pgを添加
レーン7~10は、positive controlとして、それぞれ1 fg、10 fg、100 fg、1 pgの
E. coli JM109ゲノムDNAを1st PCR時に加えてnested PCRを行った。