タンパク質抽出用試薬キット、TALON xTractor Buffer Kit(製品コード 635623:現在は製品名がxTractor Buffer Kitに変更になり、製品仕様も若干異なります)を用いて抽出を行う際に、DNase Iを添加する代わりにCryonase Cold-active Nucleaseを添加し、粘性の低減を検討した例を以下に示す。
【方法】
TALON xTractor Buffer Kitのプロトコールに準じて行った。
タンパク質Aを発現させた大腸菌BL21湿菌体6.4 mgに128 μlのTALON xTractor Buffer、1.28 μlのLysozyme(50×)、さらにそれぞれ3通りの量(0.256 U、2.56 U、25.6 U)のDNase IまたはCryonase Cold-active Nucleaseを添加し、30℃または氷上で30分間反応させた。
【結果】
(1)アガロースゲル電気泳動による大腸菌ゲノムの解析
それぞれ抽出処理液の10 μl分を電気泳動に供した。
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M : λ-Hind III digest
1 : nuclease無添加
2 : +DNase I、0.256 U
3 : +DNase I、2.56 U
4 : +DNase I、25.6 U
5 : +Cryonase Cold-active
Nuclease、0.256 U
6 : +Cryonase Cold-active
Nuclease、2.56 U
7 : +Cryonase Cold-active
Nuclease、25.6 U
(TALON xTractor Buffer Kitのプロトコールでは、0.256 UのDNase I を使用)
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上記の電気泳動画像でバンドが認められないレーンは、粘性のためピペッティングができず、適切にアプライできなかったものである。
氷上で処理した場合、DNase Iは2.56 Uの使用でもピペッティングが困難なほどの粘性が残ったが、Cryonase Cold-active Nucleaseでは2.56 UでゲノムDNAの分解による粘性の低減が確認された。
(2) SDS-PAGEによる抽出タンパク質の解析
アガロースゲル電気泳動に使用した残りの抽出処理液にサンプルバッファーを加えて煮沸後、抽出処理液4 μl相当分をそれぞれSDS-PAGEに供した。
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M : 97、66、45、31、21、14 kDa
1 : nuclease無添加
2 : +DNase I、0.256 U
3 : +DNase I、2.56 U
4 : +DNase I、25.6 U
5 : +Cryonase Cold-active
Nuclease、0.256 U
6 : +Cryonase Cold-active
Nuclease、2.56 U
7 : +Cryonase Cold-active
Nuclease、25.6 U
(TALON xTractor Buffer Kitのプロトコールでは、0.256 Uを使用)
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氷上での処理の場合、Cryonase Cold-active NucleaseはDNase Iより1オーダー低い添加量で粘性低減の効果を示している。
氷上処理によりタンパク質に影響を与えることなく粘性を下げることのできる本酵素は、タンパク質抽出に有用な酵素であると考えられる。