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Q1 このキットの原理は?
A1 従来のPTK活性測定法はRI(32P-ATP)を用いて、合成ペプチド基質へ取り込まれた32Pを電気泳動やTCA沈殿法やペーパーディスク吸着法で分離し放射能をカウントする方法が用いられてきました。本キットは合成ペプチド基質が固定化された96 wellマイクロタイタープレートにPTK含有サンプルとATPを添加し、反応後リン酸化されたチロシンを抗リン酸化Tyrosine-POD標識抗体によって特異的に検出する方法を用いています。
Q2 PTK以外のkinaseが検出されないか?
A2 Protein kinaseにはPTKの他に、Ser / Thr kinasesが存在します。しかし、検出系にリン酸化Ser/Thrとは反応しない抗体を用いていますし、また合成基質はPoly(Glu-Tyr)ですので、PTK以外のprotein kinaseの活性を測り込むことは原理的に考えられません。
Q3 Protein Tyrosine Phosphatase(PTP)が測定を妨害しないか?
A3 たしかに、細胞抽出液中にはPTPならびにProtein Phosphatase(PP)が存在しています。この影響を抑えるため細胞抽出用緩衝液ならびにKinase反応用緩衝液の中にはSodium VanadateならびにNaF(各々PTP、PPの阻害剤)が予め添加されています。
Q4 細胞抽出検体中のリン酸化蛋白質が測定を妨害しないか?
A4 本キットでは合成基質が予め固定化されていますので、操作の途中で検体中のリン酸化蛋白質は洗い流されてしまいます。この点ビオチンーアビジンの系で合成ペプチドをトラップする系より確実と思われます。従って最後のELISAの段階で妨害されることはありません。ただし、検体の蛋白量が異常に濃い場合は非特異的にリン酸化蛋白質がプレートに吸着する場合があります。このような場合、検体を希釈して測定するか、市販の無処理96wellマイクロタイタープレートをブランクに用いてチェックしてください。ブランク測定を並行して行った場合は1キット当りの測定可能な検体数は少なくなります。
Q5 検体としてはどんなものが使用可能か?
A5 本キットは基本的に培養細胞、または血液などから分画された血球成分用に開発されています。弊社では組織を検体としたデータは数例しかありませんが、考えられる手法としては組織と細胞抽出用緩衝液を混合し、ホモゲナイズし、遠心分離後の上清を使用する方法があげられます。
Q6 キットに用いられている合成ペプチド基質のスペクトル(特異性)は?
A6 合成ペプチド基質としてはPoly(Glu-Tyr)(4:1,20-50kDa)を用いています。本基質はFAK,ZAP-70, c-Src,EGF-Rなど広範囲のPTK活性の測定に用いられています。他社のキットでは酵素特異的な合成基質を用いてきましたが、あらゆる多種の基質を準備する必要があり大変でした。また感度も十分とはいえませんでした。本キットとPTK特異抗体を組み合わせることで特有のPTKだけを単一の基質でnon-RI高感度検出することができます。
Q7 活性の定義は?
A7 組換え体c-Srcを基準として、1 pmol phosphateを1分間に基質(KVEKIGEGTYGVVYK)に取り込む活性を1 unitとしています。
Q8 Kinase標準品とは?
A8 培養細胞由来のKinase粗抽出物を凍結乾燥したもので、c-Srcを基準としてロットごとにunit管理されています。
Q9 本キットの測定感度と測定レンジは?
A9 検出感度は2.16×10
-5U/μlで、測定範囲は2.16~135×10
-5U/μl(86.4×10
-5~5400×10
-5U/well)です。
なお、実際の検体を他社キットと弊社キットで測定した場合の発色の度合の比較データを下記に示します。
A431細胞またはWiDr細胞各々1×10
7cellsを1 mlの細胞抽出用緩衝液で抽出した検体を3倍希釈しPTK活性を両キットで測定した。本キットははるかに強い発色を示した。
細胞 |
吸光度(OD450) |
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本キット | 他社キット |
A431 |
2.207 | 0.748 |
WiDr |
1.015 | 0.004 |
Q10 細胞は何個あれば検出可能か?
A10 細胞の種類ならびに与えられた刺激によっても異なりますが、たとえばU937細胞、P3U1細胞、Neuro2A細胞では500~1,000個あれば検出可能でした。
Q11 キットで用いられている細胞抽出用緩衝液で懸濁するだけでPTKの抽出が可能か?
A11 大丈夫です。他社キットで用いられている抽出液(EDTA, 2-ME, PMSF, ベンザミジン含有50 mM Tris-HCl,pH7.5)で抽出しさらに超音波破砕処理をした検体(1)と、同一細胞から本キットの細胞抽出用緩衝液で抽出した検体(2)、ならびに5秒間8回超音波破砕処理を行った検体(3)を用いてPTK活性を本キットで測定した結果を下記に示します。他社キットの抽出液に比べPTK抽出効率が良いこと、ならびに細胞を本キットの抽出用緩衝液に懸濁混和するだけで十分であることがわかります。
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抽出方法 |
PTK活性(OD450) |
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(1) |
0.217 |
(2) |
2.316 |
(3) |
2.324 |
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Q12 トラブルへの対応は?
A12
バックグランドが高い:Kinase反応時間を短く(約15分)してみてください。
全体に発色が悪い:Kinase反応時間を長く(約60分)してみてください。
発色が異常に強い:検体中のPTK活性が強すぎることが考えられます。
例えば、×5、×15、×45、×135、×405と段階希釈し、適当な希釈倍率を予め検討してください。
Q13 本キットを使用した応用例は?
A13 1)胚発生に伴うPTK活性の変動
マウス胎児11日目と15日目(通常20日で新生)を用いて本キットでPTK活性を測定した。
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マウス胎児 |
PTK活性(U/mg protein) |
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11日目 |
0.82 |
15日目 |
25.6 |
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2)U937細胞をIFN-γ (1000 U/ml)で48時間処理し、無処理の場合とPTK活性を比較した。
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処理 |
PTK活性(×10-5U/106cells) |
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無処理 |
1.53 |
IFN-γ処理 |
2.39 |
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3)免疫沈降法と組み合わせた、EGF-RならびにFAKのPTK活性の特異的測定法
- A431細胞 (107 cells/9 mmシャーレ) にEGF (終濃度10 ng/ml) を添加したRPMI-10%FCS培地で48時間培養し、PBSで1回洗浄し、細胞抽出用緩衝液1 mlを添加し、ラバーポリスマンでエッペンドルフチューブ1.5 ml容器に細胞懸濁液を回収した。
- この液にProteinA-agarose 50 μlを加え、20分間室温で静置し、10,000×g 5分遠心分離し、上清を回収した。
- この液に各種抗体を加えよく混和し、室温で1時間放置した。
- これにさらにProteinA-agaroseを30μlを加えよく混和し、さらに20分間室温で放置した。
- 10,000×g 5分間遠心分離し、上清を除き、沈殿をPBS 1 mlで懸濁し、遠心洗浄した。この操作を合計3回繰り返した。
- 沈殿にメルカプトエタノール添加済Kinase反応緩衝液150 μlを加え、よく混和し、その50 μlをゲルを含んだ状態でwellに添加し、40 mM ATPを10 μl加え、30分間Kinase反応を行い、各種PTKの特異的な検出を行った。