Guide-it™ Recombinant Cas9 (3 µg/µl)

【ユーザー様実施例】マイクロインジェクション法によるCas9タンパク質とガイドRNA複合体(RNP)を用いたマウスのゲノム編集(ノックアウト/ノックイン)

データご提供:東京医科歯科大学 未来ゲノム研究開発支援室 石久保 春美様 平岡 優一様

東京医科歯科大学 未来ゲノム研究開発支援室 平岡優一様から、Guide-it Recombinant Cas9 (3 μg/μl)(製品コード 632641)を用いた実施例をご提供いただきました。また、平岡様に詳しいご研究内容やCRISPR/Cas9に関するお話をお伺いしましたので、是非ご一読ください。
CRISPR/Cas9実験例

■ 実験の背景

未来ゲノム研究開発支援室は、ゲノム編集技術(CRISPR/Cas)を用いた遺伝子改変マウス作製サービスを実施しており、遺伝子組換えマウスの樹立や飼育、特定病原体の排除、受精卵の凍結保存などで、所内の共同利用実験室の1つとして各分野の研究をサポートしている。

■ 経緯と問題点

タカラバイオ社のCas9タンパク質を使用する前は、複数社のCas9タンパク質を使用していた。しかし、Cas9タンパク質に含まれる高濃度のグリセロールにより、マイクロインジェクション時のキャピラリーに目詰まりを起こし、その度にキャピラリーを交換する必要に迫られたため、作業者は大変ストレスを感じていた。また、製造ロットごとにゲノム編集効率が安定せず、複数社のCas9タンパク質を併用することで対応していたが、安定した活性を示しかつ継続的に入手可能な製品が必要だった。

■ 解決策

目詰まりの問題を解決するために、各社から発売のCas9タンパク質を調査したところ、タカラバイオ社のCas9タンパク質が低グリセロール濃度のため、早速購入し、ロット間差と合わせて他社製品も含めた性能比較実験を行った。

■ 結果

タカラバイオ社のCas9タンパク質使用により、キャピラリーでのマイクロインジェクション作業時の目詰まりが改善され、作業時のストレスを大きく低減できた。また、今まで実施した複数ロットでのCas9の性能は安定しており、問題なくゲノム編集を実施することができるようになった。
他社製品と比較すると、タカラバイオ社のCas9では相同組換え修復による遺伝子ノックインの効率が優れていた。
下表にタカラバイオ社のCas9を用いたマウスのゲノム編集結果を示す。

遺伝子名Type (挿入カセット長/欠失長)ドナー産仔数改変あり
産仔数
効率
遺伝子AKI (insert長=3 kb)プラスミド9444%
遺伝子BKI (insert長=7.5 kb)プラスミド11436%
遺伝子CKO (deletion長=51 kb)オリゴDNAドナー14428%
遺伝子DSNPオリゴDNA8225%
遺伝子EFloxプラスミド6233%
遺伝子FFloxプラスミド8225%

■ 今後

ゲノム編集によるノックインやノックアウトを安定して作成可能なタカラバイオのCas9タンパク質に満足しており、引続き使用していく予定である。

補足:近交系(C57BL/6J)マウス凍結受精卵をマイクロインジェクションに使用している。近交系受精卵は産子数が少なくなる傾向が強いが、その条件においても安定した結果を得ている。
KIドナーとして二本鎖環状DNAを用いているため、エレクトロポレーションではなくマイクロインジェクションを実施している。

■ 実験プロトコール

Aida et al. Genome Biology (2015) 16:87
Aida et al. BMC Genomics (2016) 17:979

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