AAVpro® Purification Kit Maxi/Midi (All Serotypes)

【ユーザー様実施例】AAVベクター抽出液の調製および精製、濃縮(スモールスケール)

本プロトコールでは、10cm dish 6~8枚からのスモールスケールでのAAVベクター抽出液の調製および精製、濃縮をすることができる。

<AAVベクター抽出液の調製>
  1. AAVベクター産生細胞を含む培養液に、0.5 M EDTA(pH8.0)を1/80容量添加し、よく混合する。
  2. 室温で10分間反応後、細胞を剥離させ、回収する。
  3. 1,700~2,000×g、4℃で10分間遠心後、上清を除去する。
  4. 再度、1,700~2,000×g、4℃で1分間遠心し、完全に上清を除去する。
    注 上清が残っていると以降の工程に影響が出ることがあるため、完全に上清を除去できたことを確認する。
  5. 細胞ペレットをタッピングもしくはボルテックスで十分にほぐす。
    注 細胞ペレットが十分にほぐれていない場合、抽出効率が低下する恐れがある。細胞の塊がないことを確認してから次の工程に進む。
  6. 10 cm dish 1枚当たり0.5 mlのAAV Extraction Solution A plusを添加する(6枚の場合は3 ml)。
  7. ボルテックスで15秒間懸濁する。
    注 細胞の塊がないことを確認し、細胞の塊がある場合は、なくなるまで懸濁する。
  8. 室温で5分間静置後、さらに15秒間ボルテックスして懸濁する。
  9. 4,000~9,000×g、4℃で10分間遠心する。
    注 上記7.~9.の工程を繰り返すことで効率が向上することがある。
  10. 上清を新しい滅菌済み遠心チューブに、なるべく不純物の混入がないようピペットなどを用いて回収し、AAV Extraction Solution Bを上清の1/10量添加する。
    注1 この時点で-80℃で保存することができる。保存しない場合は速やかに<AAVベクターの精製、濃縮>の1.へ進む。-80℃で保存した場合は、37℃の恒温槽で速やかに溶解してから使用する。
    -80℃で保存する際は、凍結に耐性があり、その後の遠心操作に耐えうるチューブを使用する。
    注2 サンプルによってはAAV Extraction Solution Bを添加した際にピンク色に変わることがあるが、性能には問題ない。


<AAVベクターの精製、濃縮>
※AmiconUltra 4, 100kDa(#UFC810024 , Merck)が別途必要(10cm dish 6~8枚で1本必要)。

5、6、7ではスイングローターを使用してください。
  1. AAVベクター抽出液の調製10.で得られた溶液に、Cryonase Cold-active Nucleaseを1/100量(終濃度200 U/ml)添加し、37℃で1時間反応させる。
  2. 1.の溶液にPrecipitator Aを1/10量添加し、ボルテックスで10秒間混和後、37℃で30分間反応させ、再度ボルテックスで10秒間混和する。
    注1 Precipitator Aは低温保存により白色沈殿物が生じることがあるが、品質、性能には問題ない。この場合は、37℃で温めて完全に溶解させてから使用する。
    注2 反応中に沈殿物が生じることがあるが問題ない。そのまま次のステップに進む。
  3. 2.の溶液に1/20量のPrecipitator Bを添加し、速やかにボルテックスで10秒間混和し、9,000×g、4℃で20分間遠心する。
    注 Precipitator B添加後に沈殿物が生じるが問題ない。そのまま遠心操作に進む。
  4. 上清を新しいチューブに移し、再度9,000×g、4℃で20分間遠心する。
  5. 上清をMillex-HV 0.45 μmを用いてろ過する。
  6. 4.でろ過したAAVベクター溶液をAmicon Ultra 4, 100 kDaに添加し、2,000×g、15℃で5分間遠心し、AAVベクター溶液が1.5 ml以下になったことを確認する。
    注 AAVベクター溶液が1.5 ml以下になっていない場合は、6.の遠心操作を繰り返し実施する。
  7. ろ液を除去後、5 mlのSuspension Bufferをカップ内に添加し、ピペッティングで溶液を均一化し、2,000×g、15℃で5分間遠心する。AAVベクター溶液が1.5 ml以下になったことを確認する。
    注 AAVベクター溶液が1.5 ml以下になっていない場合は、7.の遠心操作を繰り返し実施する。
  8. Kit添付のSuspension bufferで7.の操作を5~7回繰り返し、最終的に任意の容量まで濃縮する。Suspension bufferが不足する場合は、1X D-PBS(-)で代用可能。
  9. ろ液を除去後、ピペッティングで十分に懸濁し、一度P200チップで回収し、1.5mlチューブに移す。AmiconUltra 4の場合、通常は100 μl以下になる。最終的な液量にメスアップする残量を計算し、その量のbufferをP200チップでとり、AmiconUltra 4を洗う(厳密な調製はは難しいので、おおよそでよい)。
    注1 ウイルス濃度はベクターサイズや配列に大きく影響されるので、事前に目標濃度に合わせて懸濁容量を決めるのは難しいため、基本的に10cm dish 8枚の場合は、最終懸濁量を200 μlとしている。
    注2 回収後のウイルス溶液は、20~30 μlずつ1.5mlチューブに分注し、-80℃で保存する。凍結融解は推奨しない。

プロトコールご提供:東京大学医科学研究所 幹細胞治療部門 水野直彬様

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