【実験結果】
- CAR-T細胞培養期間の比較
CD4/CD8細胞を選択的に分離したT細胞をCD3/CD28ビーズで刺激し、翌日にレンチウイルスベクターでHER2-CAR遺伝子を導入した。培養開始2日で凍結した細胞(Day2細胞)と、4日目と7日目に拡大培養して製造開始9日で凍結した細胞(Day9細胞)を比較した。
- 抗原刺激後の細胞増殖と疲弊マーカー発現
HCT15細胞(HER2発現細胞)とCAR導入細胞を3日間共培養した後、CAR導入細胞の増殖は、Day2細胞で優位に高かった。また、Day9細胞の方が疲弊マーカーを発現している細胞の比率が高かった。
- 細胞傷害活性
HCT15細胞に対する細胞傷害活性をxCELLigence RTCA(Agilent社)を用いて評価した結果、Day2細胞で高い細胞傷害活性が確認された。
- RetroNectin/OKT3刺激法による製造法の開発
RetroNectin/OKT3(RN/OKT3)刺激により誘導されたT細胞は、未分化(ナイーブ)な細胞集団を多く含む特徴がある。そこで、CD3/CD28ビーズの代わりにRN/OKT3により刺激することで、よりナイーブな細胞を保つことができるかを検討した。
- CD4/CD8陽性率、CAR陽性率、ナイーブ細胞比率
CD4細胞とCD8細胞の比率は、Day9細胞においてRN/OKT3刺激でCD8細胞比率が上昇した。Day2細胞は刺激方法による差はなかった。
CARは、RN/OKT3刺激でもDay2細胞では完全に発現が成立していなかった。Day9細胞で、RN/OKT3刺激で高いCARの陽性率が観察された。
ナイーブ比率(CCR7+CD45RA+比率)は、Day2細胞では同等であったが、Day9細胞ではRN/OKT3で高かった。
CD4/CD8陽性率
CAR陽性率
ナイーブ細胞比率
- 抗原刺激後の細胞増殖と疲弊マーカー発現
HCT15細胞共培養3日後の細胞増殖は、Day2細胞において刺激方法による顕著な差はなかったが、RN/OKT3刺激ではCD3/CD28ビーズ刺激より疲弊マーカーを発現している細胞が少なかった。
- 細胞傷害活性
HCT15共培養後、Day2細胞においてRN/OKT3刺激でCD3/CD28ビーズ刺激より高い細胞傷害活性が見られた。
2日間でCAR-T細胞を製造する方法を検討し、従来の製造法と比べてCAR-T細胞の性能が高いことが示唆されました。また、短期間製造法においても、RetroNectin/OKT3刺激法が高機能を有するCAR-T細胞製造法であることが示されました。
短期間で遺伝子導入T細胞を製造するこの方法をSpo-T法と名付けました。
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