再生/細胞医療・遺伝子治療支援

G-Rex®とRetroNectin®による簡便なCAR-T製法開発と短期間製造法(Spo-T®法)への応用

CAR(キメラ抗原受容体)-T細胞療法は、がん抗原を特異的に認識するCAR遺伝子を患者由来のT細胞に導入し、再び患者に輸注する治療法です。
一般的にCAR-T細胞製造には7~14日間を要しますが、長期培養によりT細胞の分化・疲弊を招いて治療効果が減弱するだけでなく、製造コストの上昇も課題になります。
タカラバイオでは、高機能CAR-Tをより短期間に製造するためのSpo-T法をこれまでに開発していますが、よりシンプルかつ低コストな手法への改良を進めています。
今回、浮遊細胞の高密度培養が可能なガス透過性培養容器『G-Rex』を用いたCAR-T細胞製造法の構築を試みました。

  1. 従来のCAR-T製造
    従来のCAR-T製造


  2. G-Rexを用いた簡便なCAR-T製造

    G-Rexを用いた簡便なCAR-T製造

【実験結果】
  1. G-Rexを用いたCAR-T細胞の性能評価
    1. T細胞増殖とCAR陽性率
      CD3/CD28 beads刺激と比較して、RetroNectinと抗CD3抗体による共刺激(RN/OKT3刺激)、あるいはCD3/CD28 beads刺激時にRetroNectinコーティングを併用することで増殖率が向上した(図a)。また、T細胞刺激と同じタイミングでレンチウイルスベクター感染を開始した場合(Day 0 LV transduction)、RetroNectinを併用した場合に高いCAR陽性率が得られた(図b)。

      a. T細胞増殖

      T細胞増殖

      b. CAR陽性率

      CAR陽性率
    2. 免疫表現型
      刺激法によってCAR-T細胞の免疫表現型にはバラエティが見られ、RN/OKT3刺激法の場合に、Naive細胞分画を含む未分化なCAR-T細胞が最も高い割合で維持されていた。

      免疫表現型
      免疫表現型
  2. G-Rex × Spo-Tで製造したCAR-Tの性能評価
    レンチウイルスベクターで遺伝子導入後、10日目で回収した細胞(従来法)と2日目で回収した細胞(Spo-T法)の性能を比較した。 従来法またはSpo-T法でCAR-T細胞を培養したときの性能比較
    1. CAR陽性率
      Spo-T法で製造した細胞のCAR陽性率は、従来法と同等であった。
      CAR陽性率
    2. 免疫表現型
      Spo-T法は、従来法に比べて、未分化(Naïve)なCAR-T細胞の割合が高かった。
      免疫表現型
    3. 腫瘍細胞に対するCAR-T細胞の反応性
      CAR-T細胞と腫瘍細胞(Nalm-6-GFP-Luc) をウェルプレート中で共培養し(E/T=0.1, n=3)、 翌日(Day 1) および、4日後(Day 4)にフローサイトメトリー解析により、CD3陽性T細胞数・腫瘍細胞数を計測した。その結果、Spo-T法で製造したCAR-T細胞は腫瘍細胞と共培養した際に、従来法CAR-T細胞よりも著しい増殖性と強力な細胞傷害活性を示した。
      T細胞増殖
      腫瘍細胞数

以上より、G-Rexを用いたCAR-T細胞作製において、RN/OKT3刺激によりT細胞刺激とCAR遺伝子導入を同時に行うことで高効率にCAR-T細胞が得られること、さらに、短期間製造法であるSpo-T法も適用できることが実証されました。

本製造法にご興味がありましたら、ぜひお問い合わせください。
お問い合わせはこちら