HEK293T細胞由来のTotal RNA 100 μgに対し、spike-inとして既知配列の人工環状RNAを10 ng添加しました。その後、RNase R処理なしおよびRNase R処理あり(40 U、37℃、30分間)についてそれぞれRNAを精製し、各1 ngを用いてRNA-Seqを行いました。
Spike-inとして添加した人工環状RNA領域のTPM値を算出しました(表1)。
その結果、RNase R処理ありのサンプルにおける人工環状RNA領域のTPM値は、処理なしの場合と比較して約4.8倍高くなりました。
これにより、RNase Rを用いて環状RNAの濃縮を行ったサンプルを解析に使用することで、存在量の少ない環状RNAをより選択的に検出できることが示されました。
表1. RNase R処理の有無による人工環状RNA領域発現量(TPM*値)の比較
RNase R処理 | TPM*1値 |
なし | 5,964 |
あり | 28,890 |
*1 Transcripts per million
ここでは、100万フラグメントあたりの人工環状RNA由来のフラグメントの数を示す。
次に、ヒトゲノムにおいて環状RNAの発現が報告されている6つの遺伝子について、BSJを含むフラグメント数をRNase R処理の有無で比較しました(表2)。
その結果、RNase R処理ありの場合、処理なしのサンプルよりBSJを含むフラグメントが多く検出されました。また、RNase R処理なしではBSJを含むフラグメントが検出されなかった遺伝子に関しても、RNase R処理ありでは検出が可能となりました。
これにより、RNase Rを用いた環状RNAの濃縮は、定量性の向上および検出感度の引き上げに有用であることが示されました。
*2 フラグメントの両末端から150塩基ずつシーケンス解析を行う。
1)Salzman, Julia
et al.(2013)
PLoS genetics vol. 9,9: e1003777.