Peptide Coating Kit

Peptide Coating Kit

ハプテン抗原に対する抗体作製とその特異抗体の検出

かつて、抗体の作製と言えば、抗原物質の精製からスタートせざるを得ず、そこにかなりの時間をとられていた。最近では、数多くのタンパク質のアミノ酸配列が報告され、自動ペプチド合成技術が広く浸透したことにより、目的タンパク質のアミノ酸配列さえわかれば、その領域の合成ペプチドと適当な実験動物への免疫感作により、特異抗体の作製はかなり容易にかつ確実に行えるようになった。この場合、自動合成装置で合成可能なペプチドの長さはおよそ20~30残基で、通常はハプテン抗原として取り扱うことになる。キャリアータンパク質(通常BSAやKLHが使われる)にペプチドを結合させて動物に感作すると、キャリアーとペプチドの両方に対する抗体が産生されるため、目的のペプチド特異抗体がそのうちどの程度の量があるかが問題となる。この時、抗原ペプチドを直接にコートした96穴マイクロプレートを用いて、そのペプチドに特異的な抗体をELISA法で検出確認することが必要となる。

難水溶性低分子ペプチドの固相吸着

抗体作製を目的としてその部分ペプチドを合成する場合、親水性領域を狙うことが多く、その場合、それらのペプチドは概ね水溶性となり、本キットにより簡単に固相化できる。しかし、ペプチドがPheやTrpなどの疎水性アミノ酸を多く含む場合、水性緩衝液に難溶であることが時々見受けられ、固相化の処理は困難になる。そのような場合でも、多少の試薬を用意するだけで、本キットを用いてこれら難溶性ペプチドのマイクロプレートへの固相化を簡単に行うことができる。
■操作手順
1.Trp、Phe、Leuなどの疎水性アミノ酸を多く含む低分子タンパクあるいはオリゴペプチドを、添付のリアクションバッファーの代わりにジメチルスルホキシド(スペクトル用)により、4 μg/mlの濃度になるように溶解し、リアクションプレート各穴に50 μlずつ分注する。
2.カップリング試薬を5 mlのジメチルスルホキシドに溶かし、すばやくプレート各穴に10 μlずつ添加し、よく混合する。そのまま室温で2時間静置する。
3.プレート内の反応液を捨てて、大量の純水でプレートを数回洗浄する。
4.抗体やその他のタンパク質が非特異的にプレート底面に結合しないように、キット内のブロッキング液にてブロッキング処理する(37℃で1時間インキュベート)。
注意
ペプチド架橋反応系にアミノ基やカルボキシル基を有する緩衝液成分(トリス、グリシンなど)が混入すると、架橋反応が妨害されることがあるので、あらかじめそれらの混入がないことを確認してからキット操作をする。

ELISAによるペプチド特異抗体の検出

1.目的のペプチドを免疫したウサギより採血し、分離した血清を1%BSA含有PBSにて適当に希釈し、プレート中で反応させる。
2.Peroxidase標識Anti-rabbit lg(from donkey、Whole lg)ABTS付を用いて酵素(パーオキシダーゼ)標識第二抗体および基質(ABTS)液を順次反応させ、抗ペプチド抗体を検出する。
以上の操作を応用した例を以下に紹介する。

実験例

Papillomavirus E5 proteinの一部のペプチド残基LFFLVWWDQFGをコーティングしたプレートで、このペプチドを抗原として作製したウサギ血清を10倍率で段階希釈し、反応させたところ、難水溶性ペプチドへの強い抗体反応が確認できた。コントロールとして非構成アミノ酸のLysのみをコートしたプレートで同一反応を実施したが、軽微な抗体反応が認められたにすぎなかった(図)。

図 難水溶性ペプチドコートプレート上での特異抗体によるELISA

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