畜産、養殖、作物、昆虫などの産業生物では、肉質、成長性、環境応答、病害抵抗性などの形質が、組織内の特定の細胞集団や発現状態に関係している場合があります。組織全体のRNA-seqだけでは見えにくい細胞集団の違いを、シングルセル解析またはシングル核RNA-seqにより評価し、形質評価や選抜指標につながる候補マーカーを探索します。
解析の進め方
- 対象組織から取得した細胞または核をクラスタリングし、主要な細胞集団、細胞タイプごとのマーカー遺伝子、形質に関係する候補遺伝子を整理します。
- 比較条件や発育段階、品種、処理条件がある場合は、細胞集団の割合、発現変化、経路解析を組み合わせ、形質差の背景にある細胞状態を評価します。
- 非モデル生物では、参照ゲノムやde novo transcriptome assembly、機能アノテーションを組み合わせ、細胞クラスターの解釈に必要な情報を補います。
解決が期待される課題
- 組織全体の平均値では見えにくい、形質に関係する細胞集団や発現状態の違いを把握できます。
- 肉質、成長性、病害応答、ストレス応答などに関わる候補マーカーを抽出し、育種、品質評価、追加検証項目の検討に活用できます。
- 抗体試薬や既存マーカーが限られる生物種でも、細胞タイプの推定や評価指標づくりに向けた基礎情報を整備できます。
Keyword: single-cell RNA-seq、single-nucleus RNA-seq、非モデル生物、産業動物、形質評価、候補マーカー探索、細胞タイプ解析
参考文献
鶏肉の肉質に関わる筋内脂肪細胞マーカー候補を評価した参考論文です。
Li, J., Xing, S., Zhao, G., Zheng, M., Yang, X., Sun, J., Wen, J., & Liu, R. (2020). Identification of diverse cell populations in skeletal muscles and biomarkers for intramuscular fat of chicken by single-cell RNA sequencing. BMC Genomics, 21, 752.
解析結果イメージ
シングルセル解析図: UMAPによる次元削減により区分された各クラスターに、発現マーカー遺伝子に基づく胞タイピングを実施した図認するデモ図
共発現ネットワーク: 発現パターンが似ている遺伝子群をネットワークとして整理し、形質や細胞状態に関わる候補遺伝子モジュールを確認する図の例