Marathon cDNA Amplification Kitは、特別に設計したアダプターを利用してバックグラウンドを大幅に低下させ、同じ鋳型で5’-RACEと3’-RACEの両反応を可能にする方法である(1、2)。Marathon cDNA増幅法を用いると、 EST(expressed sequenced tag)、ディファレンシャルディスプレイ、RNAフィンガープリントまたはcDNAサブトラクションで特定した各種RNAを速やかに検討することができる。
Marathon cDNA合成法では、まず最初に3’末端に2残基の縮重ヌクレオチドを含む改変型ロックドック(lock-docking)オリゴ(dT)プライマーとpoly A
+ RNAを使用する。この縮重ヌクレオチドによってpoly A
+テール開始部位にプライマーが結合するため、従来のオリゴ(dT)プライマー法のような3’側の不均一性が避けられる。cDNA合成後に平滑末端を形成させ、二本鎖cDNAの両端にMarathon Adaptorをライゲートする。
Marathon cDNA Amplification Kitには、cDNA合成5回分の試薬類、PCR100回分のPCRプライマーの他に、お試しサイズのNucleoTrap Gel Extraction Kitが試供品として同梱されている。
ClontechではMarathon-Ready cDNAも用意している。これは高品質なPremium Poly A
+ RNAから作製した二本鎖cDNAであり、Marathon Adaptorがあらかじめ連結されている。これらのcDNAはそのまま5’-RACEと3’-RACE PCRに使用可能であり、種々の組織や細胞に由来する製品が利用できる。
※本キットにはPCR酵素が含まれないので、別途用意する。Clontechでは、Advantage 2 Polymerase Mixの使用を推奨している。
図1. Marathon cDNA法による、存在量の多い転写産物(アクチン、1.9 kb)および中程度に稀少な転写産物(TFR、5.1 kb)の増幅
ヒト胎盤poly A+ RNA 1 μgを材料にds cDNAを調製してアダプターをライゲートし、アクチンおよびTFRについて5’-と3’-の両RACE反応を行った。PCRは25サイクルで行った。ユーザーマニュアルに記載の方法で、両末端を含む全長cDNAがend-to-end に増幅された。
レーン1:1.2 kbアクチン5’-RACE産物
レーン2:1.3 kbアクチン3’-RACE産物
レーン3:全長1.9 kbアクチンcDNA
レーン4:2.6 kb TFR 5’-RACE産物
レーン5:2.9 kb TFR 3’-RACE産物
レーン6:全長5.1 kb TFR cDNA
レーンM:1 kb DNAラダー