蛍光タンパク質を目的タンパク質との融合タグとして利用する場合、タグ自身が目的タンパク質の生物学的機能に影響を与えないことが重要である。蛍光タンパク質がオリゴマーを形成する傾向が強い場合、融合タグとして用いることで目的タンパク質本来の機能を損ねる可能性がある。それに対し、真の単量体であるAcGFP1やDsRed-Monomer、mCherryなどは、融合タンパク質としての使用を特に推奨できる蛍光タンパク質である。
Living Colors蛍光タンパク質 AcGFP1
AcGFP1蛍光タンパク質は、クラゲの一種Aequorea coerulescensから発見され、すでに利用されている変異型GFPタンパク質(EGFP; 1)に代わる製品である。AcGFP1タンパク質は、EGFPタンパク質とアミノ酸レベルで94%のホモロジーを持つ改変型蛍光タンパク質で、ヒトのコドン使用に最適化された配列を持っている。本タンパク質は、FPLCゲル濾過クロマトグラフィー法による分画分析およびショ糖密度勾配超遠心法での分画分析、SDS-PAGEによる分析から、単量体であることを示す結果が得られている。
AcGFP1タンパク質は安定なため、非常に長時間にわたって蛍光を観察できる。発色基は速やかに成熟し、トランスフェクションの8~12時間後から検出可能である。
AcGFP1タンパク質のスペクトル特性は、励起極大波長475 nm 、蛍光極大波長505 nmである。これは、DsRed-Monomerのスペクトル特性(励起極大波長557 nm、蛍光極大波長592 nm)とは有意に離れているため、AcGFP1とDsRed-Monomerによる二重染色は、2つの目的タンパク質の細胞内局在を同時に可視化するために最適である(図1、2)。また、目的タンパク質の細胞内挙動の追跡やフローサイトメトリーによる細胞の検出やソーティングにも非常に適している。
Living Colors蛍光タンパク質 DsRed-Monomer
DsRed-Monomer(単量体DsRed)は、珊瑚礁に生息する造礁サンゴの一種(学名
Discosoma)に由来する赤色蛍光タンパク質の変異体で、元のタンパク質のアミノ酸のうち45個を別のアミノ酸と置換している。スペクトル特性をはじめ、DsRed-Expressタンパク質と類似するさまざまな特性を有しており、フローサイトメトリーや蛍光顕微鏡を用いた多重蛍光解析に最適である。この単量体DsRedタンパク質は極めて安定で、長時間の蛍光観察が行える。また、発色基は速やかに成熟するため、トランスフェクションの12時間後から蛍光検出が可能である。
DsRed-Monomerタンパク質は、FPLCゲル濾過クロマトグラフィーでの分画分析およびSDS-PAGE分析の結果から、単量体であることが確認された。
DsRed-Monomerタンパク質が多岐にわたるさまざまな機能と細胞局在性を持つタンパク質と融合タンパク質を形成し、タグとして有効に機能することはすでに確認されている。DsRed-Monomerタンパク質の検出には、Living Colors DsRedポリクローナル抗体(製品コード 632496)が使用可能である。この抗体は、ウェスタンブロットや免疫沈降法でDsRed-Monomerタンパク質を検出できる(2)。
図1. DsRed-MonomerおよびAcGFP1の励起&蛍光スペクトル
図2. DsRed-Monomer-Golgi(trans Golgi stack)とAcGFP1-Nuc(核)を用いた二重染色 フルーツ蛍光タンパク質
mCherryはヒトチューブリン(図3)ほかいくつかの遺伝子と融合し発現することが確かめられている。ほかにも、
Arabidopsisやゼブラフィッシュ、
E. coli、HIVビリオン、酵母でmCherry融合タンパク質の使用例が報告されている。また、蛍光共鳴エネルギー伝達のような定量性の要求される実験(FRET;3、FRAP、FLIM)でも使用例がある。mCherryタンパク質のスペクトル特性は、励起極大波長587 nm、蛍光極大波長610 nmである。
図3. mCherry-Tubulin融合タンパク質
mCherryをヒトチューブリンと融合し、哺乳類発現ベクター上にクローニング後HeLa細胞にリポソーム法を用いて導入した、細胞は形質転換36時間後に4%のパラホルムアルデヒドで固定し、ツァイス Axioskop顕微鏡、575/50、610、640/50 フィルターセットを用いて観察を行った。 さまざまなベクターが使用可能
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