AAVpro CRISPR/Cas9 Helper Free Systemは、CRISPR/Cas9ゲノム編集に使用するsingle guide RNA(sgRNA)とCas9遺伝子を発現するAAV2ウイルス粒子をヘルパーウイルスを使用せずに作製するためのシステムである。本製品は、クローニングしたsgRNA、Cas9ヌクレアーゼを同時に発現できる。4.1 kbのCas9遺伝子を2種類のベクターに分割することにより、AAVウイルスによるCas9遺伝子の細胞への導入を可能にし、さまざまな細胞での効率的なゲノム編集が可能となる。sgRNAは線状化pGuide-it-Down Vectorに1ステップで直接クローニングでき、キットに含まれるプラスミドと共にHEK293T細胞へ導入することにより、ヘルパーウイルスを使用せずに、高タイタ―組換えAAV2ウイルス粒子を調製できる。本キットは、sgRNAクローニングのための、線状化ベクター、高効率のLigation Mix、高効率のStellar Competent Cellsが含まれており、sgRNAに対応して設計したオリゴDNAをアニーリング後、簡単に効率良くベクターにライゲーションし、形質転換することができる。さらに、AAV粒子調製、ウイルス抽出溶液も含まれている。
本製品には、sgRNA発現AAVウイルスプラスミド構築に必要な試薬(10回分)、および組換えAAV2粒子作製に必要なpRC2-mi342 VectorとpHelper Vectorが含まれている。
図1.全長Cas9遺伝子とsgRNAの発現
pAAV-Guide-it-UpとpAAV-Guide-it-Down Vectorは、Cas9遺伝子の上流領域と下流領域部分をそれぞれコードしており、1.6 kb領域を重複している。標的遺伝子に対するsgRNAをpAAV-Guide-it-Down Vectorにクローニング後、HEK293T細胞へpRC2-mi342とpHelper Vectorと共に導入し、AAVウイルス粒子を作製する。また、pAAV-Guide-it-Upを使用し別途AAVウイルス粒子を作製する。作製された2種類のウイルス粒子は、AAV Extraction Solutionにより抽出する。標的細胞へAAV2-UpとAAV2-Downウイルス粒子を同時感染させると、AAVゲノムプロセッシング過程で、1.6 kb相同重複領域を介して完全長Cas9遺伝子が作製され、Cas9タンパク質が発現する。
図2.2種類のベクターによる全長Cas9とsgRNAの発現
Cas9遺伝子はサイズが大きいため、単一のAAV粒子にはパッケージングできない。pAAV-Guide-it-UpとpAAV-Guide-it-Down vectorには、それぞれCas9遺伝子の上流領域部分と下流領域が含まれており、それらは中間部分が1.6 kb重複した状態でクローニングされている。各ベクターから調製されたAAV粒子を同時に標的細胞へ形質導入すると細胞内で相同組換えが起こり、完全長のCas9遺伝子(4.1 kb)が作製される。その結果、標的細胞では、機能を有するCas9タンパク質とpAAV-Guide-it-Down vectorにクローニングしたsgRNAが発現し、ゲノム編集が行われる。
図3.pAAV-Guide-it-Upベクター
本ベクターは、AAVpro CRISPR/Cas9 Helper Free System内の1つであり、Cas9遺伝子(4.1 kb)のN末端1,035アミノ酸配列をコードしている上流領域部分(3,106 bp)を含んでいる。
図4.pAAV-Guide-it-Downベクター
本ベクターは線状化ベクターとして供給される。
本ベクターは、AAVpro CRISPR/Cas9 Helper Free System内の1つであり、Cas9遺伝子(4.1 kb)のC末端872アミノ酸配列をコードしている下流領域部分(2,616 bp)を含んでいる。設計されたsgRNAを本ベクターのHuman U6プロモーター下流にクローニングする。
図5.HEK293T細胞において生成した2つのAAV2ベクターの力価測定
AAV2-UpウイルスベクターとAAV2-Downウイルスベクターは、AAVpro Extraction Solutionを用いてHEK293T細胞からそれぞれ回収した。
各ウイルスベクターの力価はAAVpro Titration Kit (for Real Time PCR)(製品コード 6233)を用いて測定した(ベクターゲノム定量法、n=3)。
図6.AAVpro CRISPR/Cas9 Systemを用いた異なる細胞種でのゲノム編集効率
12ウェルプレートに1×10
5個の細胞を播種し、一晩培養後、CCR5遺伝子をターゲットとしてゲノム編集を行うため、AAV2-UpウイルスベクターとAAV2-Downウイルスベクターをそれぞれ1×10
5タイター分(ベクターゲノム定量法)感染させた。72時間後に細胞を回収し、ゲノムDNAへの変異導入効率をGuide-it Mutation Detection Kit(製品コード 631448)を用いて比較した(アガロースゲル電気泳動後、デンシトメーターで変異導入の割合を測定)。 比較実験として、pGuide-it-ZsGreen1プラスミドベクターをXfectトランスフェクション試薬を用いて導入した(Pla; 2.5 μg)。