GlycoTAG™を用いたオボムコイドの糖鎖分析

オボムコイドは卵白の全タンパク質のうち約11%を占めるプロテアーゼインヒビターであり、3つのタンデムなドメインから成っている。アミノ酸配列は加藤ら1)によってすでに報告されており(図1)、分子量は約28,000で1分子に5本または4本の糖鎖が結合している。オボムコイドの糖鎖には多くのmicroheterogeneityが存在し4,6,7)、阻害活性において役割を担っている可能性がある2,3)

図1 オボムコイドのアミノ酸配列(文献1より引用)

1. オボムコイドよりヒドラジン分解による糖鎖の切り出し

オボムコイド140 μg(5 nmol相当)をガラスチューブに入れ凍結乾燥し、無水ヒドラジン100 μl加え減圧封管し、100℃にて10時間加熱した。開管後トルエンを加え、減圧濃縮する操作を数回行ってヒドラジンを完全に共沸留去した。残渣に用時調製した飽和NaHCO3水溶液を100 μl加えて溶かし、その溶液が弱塩基性(約pH8.5)になっていることをpH試験紙で確かめた後、無水酢酸を10 μl加えてよく撹拌した。15分間室温に放置した後、さらに100 μlの飽和NaHCO3水溶液と、無水酢酸10 μlを加えて撹拌後、30分間室温に放置することでN-アセチル化を行った。反応後、pH3付近になるまでイオン交換樹脂アンバーライト120(H+型)を加え、37℃で1時間放置した。樹脂をその5倍量以上の水で洗浄し、ろ液と洗浄液を合わせ濃縮乾固した。

2. 切り出された糖鎖のGlycoTAGによるPA化

プロトコール1で得た残渣を少量の水で溶解し、GlycoTAG専用バイアルに移して凍結乾燥したものをGlycoTAGにセットしてPA化を行った。

3. PA化糖鎖のHPLCによる分析

GlycoTAGによりPA化したサンプルをイオン交換モードで分析したところ、図2のように中性糖鎖が大部分(84.7%)で酸性糖鎖も少量(15.3%)見られた。このサンプルをSialidase(Arthrobacter ureafaciens)で消化したところ、酸性糖鎖のうち82.0%がアシアロ体となり、残り18.0%は消化されなかったことから、それぞれシアル酸の結合した糖鎖と硫酸基が結合していると思われる糖鎖と考えられた。この結果はすでに報告されている値とほぼ一致する4)
次にSialidaseで消化したサンプルを逆相および順相系HPLCで分析した(図3、4、5)。Amide-Silicaカラム(PALPAK Type S)を用いて各ピークa~iを分取(図5)し、さらに逆相系HPLCによって分析したところ(図6-a~図6-i)、ピークbおよびfからはPA化糖鎖は検出されなかった。
溶出位置はグルコースオリゴマーをPA化したスタンダードの溶出位置と比べることによってグルコースユニットを算出した5)。例えば、ピークaはPALPAK Type S(順相系カラム)ではグルコースユニット4.2の位置に溶出し、PALPAK Type R-MB(逆相系カラム)ではグルコースユニット6.6の位置に溶出した。この値はスタンダードのPA-Sugar Chain 016と一致したので、ピークaはMan3GlcNAc2-PAと推定できる。ピークc~iについても同様にカラムからの溶出位置5)および文献6、7の構造とから表1のように推定できる。
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図2
イオン交換系HPLC条件
Column :PALPAK Type N(4.6 mmΦ×250 mm)
Solvent A:50 mM acetic acid-triethylamine(pH7.3)/acetonitrile(40/60,v/v)
Solvent B:1 M acetic acid-triethylamine(pH7.3)/acetonitrile(50/50,v/v)
Gradient:0→110 min, 0→55% B
Flow Rate:1.0 ml/min
Column Temp:40℃
Detection:Fluorescence(Ex:310 nm, Em:380 nm)
図3
逆相系HPLC条件
Column:PALPAK Type R-MB(2.1 mmΦ×150 mm)
Solvent A:20 mM sodium phosphate(pH4.0)
Solvent B:Solvent A containing 1% 1-butanol
Gradient:0→90 min, 5→50% B
Flow Rate:0.5 ml/min
Column Temp:40℃
Detection:Fluorescence(Ex:310 nm, Em:380 nm)
図4
順相系HPLC条件
Column :PALPAK Type N(4.6 mmΦ×250 mm)
Solvent A:200 mM acetic acid-triethylamine(pH7.3)/acetonitrile(35/65,v/v)
Solvent B:200 mM acetic acid-triethylamine(pH7.3)/acetonitrile(50/50,v/v)
Gradient:0→35 min, 0→70% B
Flow Rate:1.0 ml/min
Column Temp:40℃
Detection:Fluorescence(Ex:310 nm, Em:380 nm)
図5
順相系HPLC条件
Column :PALPAK Type S(4.6 mmΦ×250 mm)
Solvent A:500 mM acetic acid-triethylamine(pH7.3)/acetonitrile(35/65,v/v)
Solvent B:500 mM acetic acid-triethylamine(pH7.3)/acetonitrile(50/50,v/v)
Gradient:0→50 min, 0→110% B
Flow Rate:1.0 ml/min
Column Temp:40℃
Detection:Fluorescence(Ex:310 nm, Em:380 nm)
      各ピークを分取

逆相系HPLC条件
Column: PALPAK Type R-MB(2.1 mmΦ×150 mm)
Solvent A: 20 mM sodium phosphate(pH4.0)
Solvent B: Solvent A containing 1% 1-butanol
Gradient: 0→90 min, 5→50% B
Column Temp: 40℃
Flow Rate: 0.5 ml/min
Detection: Fluorescence(Ex:320 nm, Em:400 nm)
表1

*は、Galが結合している可能性のある位置を示す
R:-4GlcNAcβ1-4GlcNAc-PA
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