Retro-X Universal Packaging System
本システムには、ウイルス粒子の形成と複製に必要なMMLVの
gag遺伝子と
pol遺伝子をゲノムに安定に組み込んだGP2-293パッケージング細胞株ならびに4種類のエンベロープベクター(pVSV-G、pEco、pAmpho、pA10A1)が含まれている。ウイルスのエンベロープは宿主細胞への侵入に利用する受容体によって分類されている。例えば、エコトロピックウイルスはマウスやラットの細胞上に存在する受容体のみを認識できるが、アンホトロピックウイルスやデュアルトロピックウイルスは広範な哺乳類の細胞種に存在する受容体を認識する。パントロピック(VSV-G)、エコトロピック(gp70)、アンホトロピック(4070A)、あるいはデュアルトロピック(10A1)なエンベロープタンパク質をコードする4種類のベクターからひとつを選択して用いることで、パッケージングしたレトロウイルスの宿主指向性を標的細胞に合わせることができる(表1)。コトランスフェクション後、わずか48時間で高力価の組換えレトロウイルスが得られる。本システムのGP2-293パッケージング細胞は、Pantropic Retroviral Expression Systemで用いる細胞株と同じである。Universal Packaging SystemはクロンテックのすべてのRetroviral Expression SystemやRetroviral Vectorと併用可能である。
表1. 各種エンベロープを発現するパッケージング細胞株の宿主域
標的細胞*1 |
デュアルトロピック (p10A1) |
アンホトロピック (pAmpho) |
エコトロピック (pEco) |
パントロピック*2 (pVSV-G) |
Mouse |
+ |
+ |
+ |
+ |
Rat |
+ |
+ |
+ |
+ |
Hamster |
+ |
+/- |
- |
+ |
Mink |
+ |
+ |
- |
+ |
Cat |
+ |
+ |
- |
+ |
Dog |
+ |
+ |
- |
+ |
Monkey |
+ |
+ |
- |
+ |
Human |
+ |
+ |
- |
+ |
Avian |
- |
- |
- |
+ |
Fish |
- |
- |
- |
+ |
Insect |
- |
- |
- |
+ |
*1 | この一覧表は一般的な標的細胞を示しており、すべてを網羅するものではない。ここに示していない他の細胞にも感染する可能性がある。 |
*2 | パントロピックエンベロープでパッケージしたウイルスは軟体類や両生類、アメーバ、線虫の細胞にも感染する。 |
図1. 高力価が得られるRetro-X Universal Packaging System
CalPhos Mammalian Transfection Kitを用いて、赤色蛍光タンパク質DsRed2を発現するRetro-X Qベクターと適切なエンベロープベクターをGP2-293細胞にトランスフェクトし、48時間培養後に得られたウイルス10 μlを用いてNIH 3T3細胞に感染させた。48時間後、DsRed2を発現している感染細胞をBDFACScaliburフローサイトメーターを用いてFACS解析により計数した。力価は、感染細胞率(感染単位)に総細胞数を掛け、ウイルス容量(ml)で割って算出した。陽性細胞は赤線で示し、陰性対照細胞は緑線で示した。
パネルA:pEco パネルB:pAmpho パネルC:p10A1 パネルD:pVSV-G RetroPack PT67 Cell Line
RetroPack PT67 Cell LineはNIH/3T3由来のパッケージング細胞で、10A1ウイルスエンベロープタンパク質を発現する。PT67でパッケージングしたウイルスは、2種類の異なる表面分子、すなわちアンホトロピックレトロウイルス受容体(Ram-1)とGALV受容体を介して細胞内に侵入可能なので、広範な哺乳類細胞の感染に使用できる。RetroPack-PT67 Cell LineはRetro-X Systemに含まれている。
Pantropic Retroviral Expression System
Pantropic Retroviral Expression Systemでは、水疱性口内炎ウイルスのエンベロープ糖タンパク質VSV-Gを使用している。VSV-Gは細胞表面上の受容体に依存せずに、脂質への結合と細胞膜の融合によって細胞内に侵入する(2)。VSV-Gエンベロープタンパク質には若干の細胞毒性があるため、本env遺伝子はゲノム中に組み込まれていない。Pantropic Systemには2種類の発現ベクターが含まれており、目的遺伝子発現用のプロモーターとして5’LTRとDrosophila hsp70プロモーターを選ぶことができる。
また、本システムではHEK 293細胞由来のGP2-293細胞株を使用する。GP2-293からは約10
6 cfu/mlの力価でウイルスが産生される。超遠心でウイルスを濃縮すれば、10
9 cfu/mlもの高力価が得られる。そのため、非常に広範囲の哺乳類および非哺乳類の分裂細胞に対し、たとえ形質導入が難しい細胞であっても感染が可能である。
図2. Pantropic Retroviral Expression Systemの広範な宿主への感染能
レトロウイルス発現ベクターとpVSV-GエンベロープベクターをGP2-293パッケージング細胞株へコトランスフェクトすると、増殖能を欠くレトロウイルス粒子が産生される。得られたウイルスは、哺乳類および非哺乳類の広範な宿主に対して高い効率で形質導入が可能である。図には宿主の一例を示した。Pantropic Systemで産生したウイルスは、哺乳類および非哺乳類動物のほぼすべての分裂細胞に感染可能である。 表2. レトロウイルスパッケージング細胞株
*1 | Retro-X Universal Packaging SystemおよびPantopic Retroviral Expression Systemのコンポーネント |
*2 | GP2-293 Cell LineとVSV-Gの組み合わせは細胞表面受容体に依存せず、脂質結合と細胞膜融合を通してウイルスの侵入を促進する組換えレトロウイルスをパッケージングする。
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内容
Retro-X Universal Packaging System
(製品コード 631530)
・GP2-293 Packaging Cell Line
・p10A1 Vector
・pAmpho Vector
・pEco Vector
・pVSV-G Vector
・pQCLIN Retroviral Vector
Pantropic Retroviral Expression System
(製品コード 631512)
・pVSV-G Vector
・pLXRN Vector
・pLNHX Vector
・pLLRN Control Vector
・GP2-293 Packaging Cell Line
保存
#631530
GP2-293 Packaging Cell Lines:液体窒素*
その他のコンポーネント:-20℃
#631512
GP2-293 Packaging Cell Lines:液体窒素*
その他のコンポーネント:-20℃
#631510:液体窒素*
* 到着後、ただちに液体窒素中で保存してください。
液体窒素保存ができない場合は、ただちに細胞を融解し、培養を行ってください。