クローニングを行う際、ベクターを2種類の制限酵素で切断する場合がよくある。その場合、クローニングサイト内で隣接している、または近い位置にある制限酵素認識部位の2種類の制限酵素で切断すると、その両方の制限酵素で効率よく切断できない場合がある。
例えば、pUC18 DNAを認識部位が隣接しているKpn IおよびSma Iの両酵素で切断することは困難である。
また、2種類の制限酵素反応を行う順序が重要な場合がある。例えば、Sac IとKpn Iで切断する場合、先にSac Iで切断を行い、その後Kpn Iで切断しようとしても、うまく切断できない。しかし、先にKpn Iで切断を行い、その後Sac Iで切断すると両酵素で切断することができる。
このような結果は、切断反応を行う際に必要な制限酵素認識部位の周囲の数が、制限酵素によって異なるため、切断効率に影響を与えたと考えられる。
pUC18/19/118/119 DNAに対して、マルチクローニングサイト内にある2種類の制限酵素を用いて切断を行ない、切断効率を確認した。表1は、2種類の制限酵素で順番に切断した時の結果、表2は2種類の制限酵素で同時に切断した場合の結果である。
これらの結果より、マルチクローニングサイト内の2種類の隣接している制限酵素で切断する場合、同時に2種類の酵素で切断する場合は効率よく切断されない場合が多いため、それらの切断部位の位置関係を考慮し、効率のいい順序を確認して順番に切断することを推奨する。
表1. 2種類の制限酵素による2段階切断
表2. 2種類の制限酵素による同時切断
○:切断効率が良い △:切断効率が良くない ×:切断効率が非常に悪い