SMART-Seq Total RNA Mid Inputは、rRNAを除去した100 pg~100 ngのRNAからインデックスを付加したイルミナ社次世代シーケンサー対応のライブラリーを調製するキットです。本キットはランダムプライマーによるcDNA合成を行うため、真核生物および原核生物のRNAから、コーディングRNAとノンコーディングRNAの両方のトランスクリプトを99%以上の精度でカバーしたライブラリーの調製が可能です。イルミナ社次世代シーケンサー対応のインデックスとアダプターを組み込むステップがワークフロー中に含まれているため、別途、ライブラリー調製キットを用意する必要はなく、別売りの
Unique Dual Index Kit(製品コード 634752~634756)と組み合わせることにより、最大384サンプルのマルチプレックス解析に対応可能です。
なお、ヒト、マウス、ラットtotal RNA(10~100 ng)サンプルからのrRNAの除去には、
RiboGone-Mammalian(製品コード 634846、634847)の使用をおすすめします。
図1. SMART-Seq Total RNA Mid Inputを用いたライブラリー調製の概要
※ 以下のデータは、SMART-Seq Total RNA Mid Inputを同じ原理・性能のSMARTer Stranded RNA-Seq Kit(製品コード 634836~634839)で得たものを示しています。
図2. テクニカルレプリケート間での遺伝子発現量の比較
RNA 100 ngまたは100 pgを用いた繰返し実験において、再現性の高いデータが得られた。
図3. インプット量を変えたライブラリー間での遺伝子発現量の比較
ヒト脳poly(A)
+ RNA 100 ngおよび100 pgから調製したcDNAライブラリーの発現解析結果(FPKM:fragments per kilobase of exon per million reads mapped)を示す。
RNA量に1,000倍差のあるサンプル間の比較においても、高い再現性と同様の感度が示された。
図4. 12種類のインデックスを用いたcDNAライブラリーのイルミナ社HiSeqシーケンサーによる解析
ゲノムDNAの各strandから転写されたリードは正確に区別されるため、転写産物の発現定量や正確なアノテーションが可能である。RNA-Seqリードの99%は正しいDNA鎖へ正確にマッピングされた。
表1. RNA量100 pgを用いたシーケンス解析
わずか100 pgのインプットからでも転写されたDNA鎖を正確に特定することができ、また約15,000種類の遺伝子を検出することが可能であった。
図5. ERCC解析での高い再現性
事前に取得した複数のERCC(External RNA Control Consortium)データセットの相対的転写産物量に、SMARTer Stranded RNA-Seq Kit(製品コード 634836)で得られたFPKMをマップした。92個のERCCセットがスロープ=0.934、R
2=0.9725でマップされた。
図6. cDNAライブラリーの収量および純度
ヒトpoly(A)
+ RNA 100 ng~100 pgから調製されたcDNAライブラリーの収量、純度をAgilent 2100 Bioanalyzerを用いて分析した。cDNAの増幅に使用したサイクル数も示す。cDNAライブラリーはSeqAmp DNA Polymerase(本キットに含まれる)により増幅した。
RNAのインプット量にかかわらず、一貫した収量と純度でライブラリー調製が可能であることが示された。
図7. ライブラリーの重複転写産物とアンチセンス転写産物の区別
パネルA:ヒト脳poly(A)
+ RNA cDNA libraryのリードをヒトゲノムDNAに対してマッピングした。
SMARTer Strandedメソッドにより、PHC1とM6PRのリードが重複する場合でも、シーケンスリードを正しくマッピングすることができた。
パネル B:CDR1 locusのStrand特異的カバレージ。ほぼすべてのリードは、アノテーションされたトランスクリプトに対してアンチセンス側の配列を示した。
Hansen, T. B.
et al. (2011)
EMBO J.
30(21):4414–4422.
パネル C:strand-agnostic法またはstrand-aware法によって得られたCDR1遺伝子カウントの比較