16S DNA Quantitative Standard for Microbiomeは、次世代シーケンサー(NGS)で定量的な16S rRNA細菌叢解析を行うことができる人工核酸標準物質です。異なる12種類の人工16S rRNA遺伝子(rDNA)の可変領域(V1~V9)が設計されており、それぞれが既定のコピー数で混合されています(図1)。自然界に存在しない人工配列を用いているため、解析サンプルにスパイクインをしても菌叢解析に影響を与えず、あらゆる生体サンプルにスパイクインすることが可能です。
本製品を解析サンプルDNAにスパイクインして16S rRNA NGS解析を実施し、X軸に各標準配列の16S rDNA copy数理論値、Y軸に各標準配列の取得read数をプロットして検量線を作成することで、従来の16S rRNA NGS解析では困難であった菌の絶対定量が可能です(図1)。また、本製品をコントロールとすることで、試験デザインの性能評価や、試験ごとの精度管理に用いることが可能です。
図1. 12種類の16S rDNA配列を異なるコピー数で混合
可変領域には設計された人工配列を用いており、保存領域は16S rDNAの配列を用いている。そのため保存領域にプライマーを設計することで菌の持つ16S rDNA配列と、本標準物質の16S rDNA配列を同時に増幅することが可能である(パネルA)。
標準物質【16S DNA Quantitative Standard (1.3×10
8 copies/μl
*)】の組成(パネルB)
*12種類の人工16S rRNA遺伝子配列合計のコピー数
図2. 絶対定量16S rRNA菌叢解析ワークフロー
*データ解析パイプラインの詳細(実施例)は、
こちら
図3. 従来の相対定量16S rRNA菌叢解析と絶対定量16S rRNA菌叢解析の違い
従来の16S rRNAシーケンスは相対的な存在比を算出しているが、本製品をスパイクインすることで、試料中の菌のコピー数を絶対定量することが可能となる。菌叢全体に占める割合が等しくてもコピー数が異なる場合があり、コピー数を定量することで菌の多い/少ないがわかるようになる(パネルA)。
また絶対定量16S rRNA解析では、特定の菌の存在比の影響を受けずに菌のコピー数を評価することが可能になる(パネルB)。
図4. 本製品の基本性能
ヒト糞便由来DNAと本製品をスパイクインしたDNAを鋳型に、16S (V3-V4) Metagenomic Library Construction Kit for NGS(製品コード R161A)を用いてライブラリーを調製し、NextSeq 2000を用いてシーケンスを行い、スパイクインの有無による検出される菌種への影響を確認した。スパイクインの有無による菌の存在比のピアソン相関係数は(r)=0.99となり、標準物質のスパイクインによるサンプルへの影響は無いことが分かる。
図5. 様々な可変領域(V3-V4、V1-V2、V4)で定量可能
本製品の16S rRNA遺伝子V3-V4、V1-V2、V4領域をターゲットとしてライブラリーを調製し、NextSeq 2000を用いてシーケンスを行い、各ターゲットことに検量線を作成した。 V3-V4、V1-V2、V4領域すべてにおいて直線性の高い検量線を作成することができた。
図6. 絶対定量16S rRNA菌叢解析による各菌のコピー数の算出
10 ng、5 ng、2.5 ngの微生物由来DNA混合物(ZymoBIOMICS:Microbial Community DNA Standard)に本製品をスパイクインしたサンプルを鋳型に、16S (V3-V4) Metagenomic Library Construction Kit for NGS(製品コード R161A)を用いてライブラリーを調製し、NextSeq 2000を用いてシーケンスを行った。得られた標準物質のリードより検量線を作成し、各サンプルの16S rRNA遺伝子のコピー数を計算し、理論値との比較を行った。絶対定量16S rRNA菌叢解析により得られたコピー数は、理論値と近い結果を得た。
図7. 異なるサンプルにスパイクインした際の安定性
由来の異なるDNAに等量の百日咳菌gDNAまたはNegative ControlとしてHuman gDNAを添加したサンプルを鋳型にし、絶対定量16S rRNA菌叢解析を行った。16S (V3-V4) Metagenomic Library Construction Kit for NGS(製品コード R161A)を用いてライブラリーを調製し、NextSeq 2000を用いてシーケンスを行った。得られた標準物質のリードより検量線を作成し、百日咳菌の16S rRNA遺伝子のコピー数を計算し、サンプルごとに比較を行ったところ、由来の異なるDNAでも百日咳菌由来の16Sコピー数が同等に算出された。
図8. 絶対定量16S rRNA菌叢解析とデジタルPCRによる定量値の相関
10 ng、5 ng、2.5、1 ngの微生物由来DNA混合物(ZymoBIOMICS:Microbial Community DNA Standard)
に含まれる
Listeria monocytogenesと
Pseudomonas aeruginosaを絶対定量16S rRNA菌叢解析とデジタルPCRで定量した結果、絶対定量16S rRNA菌叢解析とデジタルPCRの結果に相関を認めた。