ゲノム編集技術の登場により、旧来は大きな労力を伴った遺伝子改変マウスの作製は、急速に手軽なものに変わったと考えられています。実際に、以前はそれ自体で単独の論文として発表されていた遺伝子改変マウスの樹立は、今日では論文中の1つのFigureのほんの一部となってしまうこともあります。一方で、その敷居を大きく下げたと考えられている遺伝子改変マウスの作製ですが、ゲノム編集技術を用いた改変には得手不得手があることが知られています。すなわち、単純なフレームシフトや一塩基多型の導入には比較的良好な作製効率を示しますが、それらの改変と比べると大きなサイズのtransgeneをゲノム上へ組み込むことはやや苦手としていると考えられています。Cloning-free法はこの問題を解決するために開発された改善策の一つであり、演者の所属する東京医科歯科大学では本法を用いて、数kb~10kb程度のカセットノックインマウスやfloxedマウスなどの比較的大きなtransgeneの導入を数多く成功させています。
本セミナーでは、Cloning-free法を用いた遺伝子改変マウスの作製の実態について、演者も運営に関わっている遺伝子改変マウス作製支援サービスから、実例をあげながらその作製法の詳細や留意点について、また作製されたマウスを用いた解析の一例などをご紹介します。
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