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Protocols

Adenovirus Dual Expression Kit (CAG/EF1α)

プロトコール B. 組換えアデノウイルスの作製および確認

B. 組換えウイルスの作製および確認

組換えアデノウイルスの作製および調製には293細胞が不可欠です。293細胞のメンテナンス方法、注意事項については、「付録1」をご参照下さい。また、作製した組換えアデノウイルスの取扱い、注意事項については「付録2」をご参照下さい。

B-1-2. 組換えウイルスの作製
B-1-(1). 「完全長DNA導入法」

(注意)ゲノムDNAの切り出しは、アデノウイルスゲノムの末端により近い位置で行うほうが、効率よく組換えアデノウイルスを作製することができます。インサート配列中にBsp T104 I認識配列(TTCGAA)およびPac I認識配列(TTAATTAA)がともに存在しない場合は、アデノウイルスゲノム末端により近い位置に認識配列があるBsp T104 Iで切断してください。インサート配列中にBsp T104 I認識配列が存在し、Pac I認識配列が存在しない場合のみ、Pac Iで切断してください。
インサートの配列内に、Bsp T104 I認識配列およびPac I認識配列がともに存在する場合、この方法は使用できません。「COS-TPC 法」(B-1-(2))で組換えウイルスの作製を行ってください。

  1. A-3.で調製した組換えコスミドDNAを制限酵素BspT104 Iで消化する。以下の反応液を調製し、37℃で2時間インキュベーションする。

    組換えコスミドDNA

    15 μg

    BspT104 I(10 U/μl)

    5 μl

    10×L Buffer

    10 μl

    滅菌精製水

    up to 100 μl

  2. フェノール/クロロホルム抽出後、クロロホルム抽出を2回行う。エタノール沈殿後30 μlの滅菌精製水に溶解する。
  3. 1 μlを用いてアガロースゲル電気泳動を行い、制限酵素BspT104 Iによる消化を確認する。完全に切断された場合、1.49 kb、9.96 kbおよび30 kb以上※の3本のバンドが確認できる。1.48 kbのバンドの濃さを既知濃度DNAのバンドの濃さと比べて収量を計算する。
    ※ 例えば、pAxCAwtitに1 kbのインサートを挿入した場合、34.6 kbになります。(図2-1., 2-2.参照)
  4. 6 cm細胞培養用シャーレ2枚に293細胞を用意する。
    * 1枚は、B-1-①-5.で使用、もう1枚は、B-1-①-7.で使用します。各々使用時に、100%コンフルエントになるように用意してください。
  5. BspT104 I消化済みコスミド10 μgを6 cmのシャーレで培養した293細胞1枚にリポフェクション法、またはリン酸カルシウム法でtransfectionする。
    * ご参考までに下記にTransIT-293(製品コード MIR2700)を使用した例を示します。
    1)6 cmシャーレで培養した293細胞の培地を除き、無血清培地(Life Technologies、Opti-MEMなど)2.5 mlを加える。
    2)TransIT-293 Reagent 15 μlと無血清培地250 μlを混合し、ボルテックスミキサーで懸濁する。室温で5分静置する。
    3)組換えコスミドDNA 10 μgに滅菌精製水を加えて30 μlとする。
    4)2)に3)を加え、穏やかに混合した後、室温で5分静置する。
    5)1)のシャーレに滴下し、均一になるように穏やかに混合し、37℃、CO2インキュベーター内で培養する。
  6. 翌日の午前中、継代時と同じくEDTA-PBS(‐)を用いて細胞を剥がし、回収する。
    * 剥がれにくい時は、通常より薄い濃度(0.025%程度)のトリプシンを用いて下さい。
  7. 回収した細胞懸濁液原液、10倍希釈液のそれぞれをコラーゲンコート96ウェルプレート2枚に播き直す。細胞数が各プレートで大きく違わないように10倍希釈液には、6cmシャーレで培養しておいたtransfectionしていない293細胞を以下の割合で混ぜて細胞数をそろえ、1ウェルあたり100 μlずつまく。

    transfectionした6 cmシャーレの293細胞→11 mlの培地に懸濁;(A)
    transfectionしていない10 cmシャーレの293細胞→30 mlの培地に懸濁;(B)
    100倍希釈プレート=0.1 ml(A)+11 ml(B)
    10倍希釈プレート=1 ml(A)+10 ml(B)
    原液プレート=10 ml(A)

  8. 5~6日後と10~11日後に各ウェルに10% FCS-DMEM 50 μlを加える。ウェルごとにチップを替える。
    * ウイルスサンプル間のコンタミや汚染を防ぐため、フィルター付き滅菌チップをご使用ください。
  9. ウイルスが増殖し細胞が変性したウェルが7~15日の間に現れる。すべての細胞が変性したウェルごとに、培養液ごと細胞を滅菌1.5 mlチューブに無菌的に移して、ドライアイスで急凍し、-80℃に保存する。
    * ウイルスが増殖すると細胞は接着能力が低下し丸く浮き上がって見えます(付録1-6)。ウェル内のすべての細胞がこのような状態になったらチューブに移してください。
  10. 15~18日で判定を終了する。1/10のプレートを優先して、比較的遅く(8日以降)細胞が変性したウェルから回収した培養液のチューブ(B-1-①-11.)を4個程度選ぶ。
    * ウイルスの増殖が早く起こったウェルは、複数のウイルスクローンが混入している可能性が高いので選ばないで下さい。
  11. 凍結融解する。ドライアイス中で急凍、37℃温浴で溶解を6回繰り返す。

  12. 凍結融解後、5,000 rpm、5分、4℃で遠心した上清を1次ウイルス液として-80℃で保存する。

B-1-(2). 「COS-TPC法」
  1. 6 cm、10 cm細胞培養用シャーレにそれぞれ1枚ずつの293細胞を用意する。
    * 6 cmシャーレの293細胞は、B-1-②-2.で使用。10 cmシャーレの293細胞は、B-1-②-4.で使用。各々使用時に、100%コンフルエントになるように用意する。
  2. A-3.で調製した組換えコスミドDNA 8 μgとAdenovirus genome DNA-TPC 10 μl(製品コード 6171)とを混合し、6 cmのシャーレで培養した293細胞にリポフェクション法、またはリン酸カルシウム法でtransfectionする。
    * 組換えコスミドを制限酵素消化する必要はありません。
    * ご参考までに下記にTransIT-293(製品コード MIR2700) を使用した例を示します。
    1)6cmシャーレで培養した293細胞の培地を除き、無血清培地(Life Technologies、Opti-MEMなど)2.5 mlを加える。
    2)TransIT-293 Reagent 15 μlと無血清培地250 μlを混合し、ボルテックスミキサーで懸濁する。室温で5分静置する。
    3)組換えコスミドDNA 8 μgとAdenovirus genome DNA-TPC 10 μlに滅菌精製水を加えて30 μlとする。
    4)2)に3)を加え、穏やかに混合した後、室温で5分静置する。
    5)1)のシャーレに滴下し、均一になるように穏やかに混合し、37℃、CO2インキュベーター内で培養する。
  3. 翌日の午前中、継代時と同じくEDTA-PBS(-)を用いて細胞を剥がし、回収する。
    * 剥がれにくい時は、通常より薄い濃度(0.025%程度)のトリプシンを用いて下さい。

  4. 回収した細胞懸濁原液、10倍希釈液および100倍希釈液のそれぞれをコラーゲンコート96ウェルプレート3枚に播き直す。細胞数が各プレートで大きく違わないように10倍希釈、および100倍希釈液には、10 cmシャーレで培養しておいたtransfectionしていない293細胞を以下の割合で混ぜて細胞数をそろえ、1ウェルあたり100 μlずつまく。

    transfectionした6 cmシャーレの293細胞→11 mlの培地に懸濁;(A)
    transfectionしていない10 cmシャーレの293細胞→30 mlの培地に懸濁;(B)
    100倍希釈プレート=0.1 ml(A)+11 ml(B)
    10倍希釈プレート=1 ml(A)+10 ml(B)
    原液プレート=10 ml(A)

  5. 5~6日後と10~11日後に各ウェルに10%FCS-DMEM 50 μlを加える。ウェルごとにチップを替える。
    * ウイルスサンプル間のコンタミや汚染を防ぐため、フィルター付き滅菌チップをご使用ください。
  6. ウイルスが増殖し細胞が変性したウェルが7~15日の間に現れる。すべての細胞が変性したウェルごとに、培養液ごと細胞を滅菌1.5 mlチューブに無菌的に移して、ドライアイスで急凍し、-80℃に保存する。
    * ウイルスが増殖すると細胞は接着能力が低下し丸く浮き上がって見えます(付録1-6)。ウェル内のすべての細胞がこのような状態になったらチューブに移してください。
  7. 15~18日で判定を終了する。最終的にウイルスの増殖(細胞の変性)が見られたウェルが10ウェル程度のプレートから、比較的遅く(8日以降)細胞が変性したウェルから回収した培養液のチューブ(B-1-②-8.)を10個程度選ぶ。
    * ウイルスの増殖が早く起こったウェルは、多数のウイルスクローンがが混入している可能性が高いので選ばないで下さい。
  8. 凍結融解する。ドライアイス中で急凍、37℃温浴で溶解を6回繰り返す。
  9. 凍結融解後、5,000 rpm、5分、4℃で遠心した上清を1次ウイルス液として-80℃で保存する。
B-2. 組換えウイルスの確認
  1. コラーゲンコート24ウェルプレートにそれぞれ70~100%コンフルエントまで培養した293細胞とHeLa細胞を用意する。
  2. 1次ウイルス液の各サンプルを、2ウェルの293細胞および1ウェルのHeLa細胞に感染させる。培地を除き、ウェルあたり1次ウイルス液10 μlと5%FCS-DMEM 0.1 mlを加える。
    * 細胞が乾燥しないように操作を行って下さい。
  3. プレートをシーソーのように数回、ゆっくりと振とうさせ、ウイルス液をすべての細胞にいきわたらせ感染を行う。この操作を15~20分ごとに3~4回行う。この間、細胞はCO2インキュベーター内(37℃、5%CO2)においておく。
  4. 1時間の感染後、5%FCS-DMEM 0.4 mlを加える。
  5. 3日後にHeLa細胞で変性が認められず、293細胞が完全に変性したクローンを選ぶ。
    * 本来の組換えアデノウイルスは293細胞以外では増殖しません。HeLa細胞で変性が認められるクローンは、E1部分をもつウイルスの混在の可能性があるためこの段階で除外します。
  6. 各サンプルについて感染させた293細胞のウェルの1つから培養液ごと細胞を回収し、凍結融解を6回行う。
  7. 5,000 rpm、5分、4℃で遠心した上清を、シーリングキャップ付マイクロチューブに移し、ドライアイスで急凍後、-80℃で保存する(2次ウイルス溶液)。
    * ウイルス液の保存には、コンタミ防止や安全性の面から、O-リングなどのついたシーリングキャップのマイクロチューブの使用をお勧めします。
  8. 293細胞のもう1つのウェルからは、培養液ごと細胞を回収し、5,000 rpm、5分、4℃で遠心して上清を除き、細胞だけを‐80℃で保存する(cell pack)。
  9. cell packから以下の方法で全DNAを抽出し、組換えアデノウイルスDNAの構造を確認する。
    以下の10-15. のDNA抽出操作のかわりに、NucleSpin Tissue(製品コード 740952.10)を用いると、簡便、迅速にDNA抽出を行うことが可能です。
    * 293細胞では組換えウイルスが細胞あたり、10,000コピーにまで増殖するため、以下のように感染細胞の総DNAを抽出し、制限酵素で処理することにより、組換えウイルスの構造確認を行うことができます。
  10. cell packに以下の試薬を加え、全量を400 μlとする。
    10×TNE Buffer 40 μl
    Proteinase K(20 mg/ml) 4 μl
    滅菌精製水 up to 400 μl
  11. ボルテックスミキサーでcell packを十分に懸濁する。
  12. 10%SDS 4 μlを加え、ボルテックスミキサーでさらに十分に懸濁する。
  13. 50℃、1時間インキュベートする。
  14. フェノール/クロロホルム抽出を2回行った後、クロロホルム抽出を2回行う。
    * このときボルテックスミキサーで十分に攪拌します。
  15. エタノール沈殿後、20 μg/ml RNase Aを含むTE Buffer 50 μlに溶解する。
    * エタノール沈殿の後、沈殿を完全に乾かしてしまうと溶けにくくなります。
  16. 15 μlを用いて、インサートを切断する制限酵素で消化し、アガロースゲル電気泳動を行い、泳動パターンを調べる。このとき、同時にCla IまたはXho I消化を行い、左端断片の確認も行う。
    * 泳動パターンの確認
    反応液 Cla I 反応 Xho I 反応
    全DNA 15 μl 15 μl
    制限酵素 2 μl(約20 U) 2 μl(約20 U)
    Buffer×10 M Buffer 2 μl H Buffer 2 μl
    滅菌精製水 up to 20 μl up to 20 μl
    インキュベート 30℃ 2時間 37℃ 2時間

    * 左端断片の確認(図2、付録7もあわせてご参照ください。)
      Cla I 消化 Xho I 消化
    pAxcwit2 0.46 kb
    pAxCAwtit2 1.0 kb 0.48 kb
    wild type 0.92 kb 5.8 kb

    * pAxCAwtit2を使用した場合、Cla I消化による左端断片のサイズは1.0 kbです。wild typeの0.92 kbと見間違える可能性がありますので、Xho I 消化による確認もあわせて行うことをお勧めします。
    * 「A-2. 組換えコスミドの構造確認」と同様、Cla I消化によりインサートDNAを確認することができます。
    * コントロールとしてインサートを挿入したコスミドDNAをCla Iで切断したものを同時に泳動すると判定が容易になります。コスミドのパターン+アデノウイルスゲノムの左端のバンドが正確に出現しているものを選択します。
    * 説明できないバンドが薄く見えるクローンは、欠失のあるウイルスとの混合の可能性があるので、絶対に避けてください。
    * 細胞のゲノムDNAのために判断しづらいときには、ウイルスを感染していない293細胞のゲノムDNAをネガティブコントロールとして用います。
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