Viable Salmonella Selection Kit for PCR

操作

Viable Salmonella Selection Kit for PCR(製品コード 7711)

検体から調製したEMA処理ありサンプル、EMA処理なしサンプルについて、それぞれ以下のキットを用いてリアルタイムPCR検出を行うことで、より正確に生菌由来DNAの選択的検出を行うことができる。

EMA処理使用する検出キット目的
ありCycleavePCR Salmonella Detection Kit Ver.2.0生菌由来DNAを検出
Control Test Kit(Viable Bacteria Selection)検体由来成分によるEMA処理反応阻害の有無を確認
なしCycleavePCR Salmonella Detection Kit Ver.2.0死菌および生菌由来DNAを検出

A.サンプル調製
下記には、液卵中のサルモネラ菌を検出する場合のサンプル調製例を示す。
なお、リアルタイムPCRによる検出は、非常に高感度である。実験環境や使用器具の汚染には極力注意を払い、コンタミネーション防止を心がけること。
例)可能な限り、使い捨て器具を使用する。
使い捨てにできないものは、洗浄後、乾熱滅菌処理を施す。
マイクロピペットは用途別に準備する(本キットを用いた検体EMA処理及びDNA抽出用とリアルタイムPCR試薬調製用を分ける)。

【液卵からのサンプル調製】
  1. 液卵 5 gに45 ml(9倍容)の生理食塩水を加え、撹拌する(10%液卵)。
  2. 10%液卵 1 mlに、10 ml(10倍容)の生理食塩水を加え、よく撹拌した後、3,000×gで4℃、5分間遠心分離し、上清を除く(デカントでよい)。
  3. 沈殿を1 mlの生理食塩水で懸濁した後、Protease Solution-1を3 μl、Protease Solution-2を10 μl加え、37℃で、1.5時間、振とうする。
  4. 反応後、3,000×gで4℃、5 分間遠心分離し、上清を除く。
  5. 沈殿に生理食塩水100 μlを加え、懸濁する。
  6. 懸濁液100 μlのうち、40 μlを「B. サンプルのEMA処理」に使用する。
    残りは氷上もしくは4℃で保存し、[懸濁液40 μl+滅菌精製水25 μl]を比較のための「EMA処理なしサンプル」として、「C. NucleoSpin Tissue XSを用いたDNA抽出」に使用する。

B. サンプルのEMA処理
*光照射装置 [LED Crosslinker 12(製品コード EM200)、LED Crosslinker(製品コード EM100)]を使用する場合
  1. 1.5 mlチューブ(もしくは0.2 mlチューブ)に調製サンプル(Aで調製した残渣液など)40 μlを準備する。
  2. Solution A-sal 10 μlを添加し、混合*1 後、軽くスピンダウンする。
  3. Solution B-sal 5 μlを添加し、混合*1 後、軽くスピンダウンする。
  4. 遮光して氷上で5分間静置する。
  5. 光照射装置にセットし、5分間光照射する。<処理1回目>*2
  6. Solution B-sal 5 μlを添加し、混合*1 後、軽くスピンダウンする。
  7. 遮光して氷上で5分間静置する。
  8. 光照射装置にセットし、15分間光照射する。<処理2回目>*2
  9. サンプルをスピンダウンし、95℃、5分間ヒートブロックで加熱する。[加熱殺菌]

*1 短時間の緩やかなボルテックスもしくは数回のタッピングで混合

*2 光照射装置がない場合は、氷上にチューブを横置きし、光照射用ランプを上部から照射する。下記の照射条件で同等の結果が得られることを確認している。
ハロゲンランプ     照射距離 20 cm(A-8の光照射は5分で行う)
[岩崎電気株式会社、写真証明用アイランプ スポット(集光形)、PRS500W]
LED ランプ       照射距離2 cm
[Panasonic、EVERLEDS(エバーレッズ)LED 電球 6.9W(昼光色相当)、LDA7DA1]

C.NucleoSpin Tissue XSを用いたDNA抽出
  1. B-12で調製したサンプル全量およびA-6で氷上(もしくは4℃)保存していた残渣液40 μl(+滅菌精製水 20 μl)*1に、それぞれBuffer T1を160 μl加える。軽く混合して、スピンダウンする。
  2. さらにProteinase K*2を16 μl加える。ボルテックスにて混合(5秒×2)して、スピンダウンする。
  3. 56℃、10分間インキュベートする。
  4. スピンダウンしたサンプルにBuffer B3を160 μl加える。ボルテックスにて混合(5秒×2)して、スピンダウンする。
  5. 70℃、5分間インキュベートし、ボルテックスする。
  6. 各サンプルが室温に戻ったことを確認して、スピンダウンしたサンプルにエタノール(96~100%)を160 μl加え、ボルテックスにて混合(5秒×2)して、軽くスピンダウンする。
  7. NucleoSpin Tissue XS ColumnをCollection Tube(2 ml)にセットする。
  8. 6.の溶液をカラムに添加し、11,000×g、1分間遠心する。
  9. カラムを新しいCollection Tube(2 ml)にセットする。
  10. カラムにBuffer B5*3を50 μl添加し、11,000×g、1分間遠心する。
    ろ液を捨てた後、同じCollection Tubeにカラムをセットする。
  11. カラムにBuffer B5*3を50 μl添加し、11,000×g、2分間遠心する。
    カラム上に液が残っていないことを確認する。
  12. カラムを1.5 mlマイクロチューブにセットする。
  13. カラムにBuffer BEを20 μl添加し、11,000×g、1分間遠心し、DNA溶液を回収する。
  14. 得られたDNA溶液の液量がおおよそ20 μlであることを確認する。

    *1 B-9.の加熱殺菌と同様の処理を行う。

    *2 Proteinase K:製品コード 740901.50(50 回用)の場合:Proteinase K(凍結乾燥品)20 mg(1 vial)に、Proteinase Buffer 1 mlを加え溶解する。溶解後のProteinase K溶液は-20℃で保存する。

    *3 Buffer B5:Wash Buffer B5(concentrate)2 mlあたり、8 mlのエタノールを加える。


D.リアルタイムPCRまたはエンドポイントPCRによる検出
C-13で調製したEMA処理あり及びEMA処理なしのDNA溶液を用いてCycleavePCR Salmonella Detection Kit Ver.2.0によるリアルタイムPCRを行う。
CycleavePCR Salmonella Detection Kit Ver.2.0 の説明書の「V.操作 V-2.反応液の調製と反応開始」から、操作を行ってください。
また、EMA処理ありサンプルについては、Control Test Kit (Viable Bacteria Selection) (製品コード CY290)を用いて、本キットの試薬中に含まれる反応確認用プラスミドDNAが、EMA処理操作後、qPCR/PCRで検出されないことを確認することにより、本キットによるEMA処理操作が正しく行われたことを確認することができる。

E. 検出結果の判断基準について
タカラバイオでは、本キットを用いたEMA処理操作で、少なくとも標準的な条件下では2×106個のサルモネラ菌の死菌をEMA処理可能なことを確認している(実験例参照)。それ以上の死菌を含む検体を用いた場合は、EMA処理操作で死菌由来DNAを完全には修飾することができず、EMA処理済みサンプルで生菌由来DNAと一緒に死菌由来DNAの一部が検出される可能性がある。
CycleavePCR Salmonella Detection Kit Ver.2.0を用いて、同一検体由来のEMA処理あり、EMA処理なしサンプルで検出を行った場合、それぞれの増幅結果から以下のように判断することができる(陽性コントロール、陰性コントロール、インターナルコントロールが妥当な結果を示すことを前提とする)。

パターン1
EMA処理ありサンプルで増幅が見られない(Ct値 -)→ 生菌由来DNAが検出限界以下
EMA処理なしサンプルで増幅が見られない(Ct値 -)→ 死菌由来DNAも検出限界以下
⇒ 検体サンプル中のサルモネラ菌が検出限界以下である。
パターン2
EMA処理ありサンプルで増幅が見られない(Ct値 -)→ 生菌由来DNAが検出限界以下
EMA処理なしサンプルでは増幅が見られる(Ct値を表示)→ 死菌由来DNAはEMA処理で完全に修飾済み
⇒ 検体サンプル中のサルモネラ菌の生菌が検出限界以下である。
パターン3
EMA処理ありサンプルで増幅が見られる(Ct値を表示)
EMA処理なしサンプルで増幅が見られる(Ct値を表示)
⇒標準的な条件下で2 × 106個のサルモネラ菌の死菌をEMA処理可能なことを確認している。検体にさらに多くの死菌が含まれる場合にはEMA処理によって完全に死菌由来DNAを修飾できないため、EMA処理ありサンプルで見られる増幅が生菌だけでなく、生菌+死菌に由来する可能性がある。
【参考】
抑制可能な2×106個の死菌サンプルのEMA処理なしでのCt値(Xとする)を参考にすることで、測定したい検体サンプル中の死菌由来DNAが完全に処理されたかどうかを推測することが可能です。検体のEMA処理なしサンプルのCt値(Y)がY > Xであれば、死菌由来DNA はほぼ修飾されたと推測できます。Y ≦ Xの場合には、検体中の死菌量が多く、EMA処理により完全には修飾できなかった可能性を考慮する必要があります。
なお、標準的な条件下、プロトコールに従って操作を行いThermal Cycler Dice Real Time Systemで検出した場合(実施例-2)、X=22.9でした。

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