Adeno-X Expression System 1はライゲーション法を用いたシステムで、広範な哺乳類の宿主細胞で高レベルのタンパク質発現を行う。Adeno-X Expression Systemは、標準的なトランスフェクション法や他のアデノウイルス系と比較して以下の点が優れている。
・高いタンパク質発現量
アデノウイルスを介する遺伝子導入法は、哺乳類細胞内で大量のタンパク質を発現できる(1)。標的細胞には目的の遺伝子を含む組換えアデノウイルスが高い効率で複数コピー感染するため、目的タンパク質を高いレベル(最大、タンパク質総量の20%)で一過性に発現できる。
・多くの種類の哺乳類細胞に効率よく感染
アデノウイルスはヒト由来細胞の大部分に感染する他、マウス、ラット、イヌ、ニワトリ、ウサギ、ヒツジ、ブタなどヒト以外の霊長類細胞の多くにも感染する(2~11)。またアデノウイルスは、分裂細胞と非分裂細胞いずれにも感染する。広範囲の宿主細胞域と高レベルな遺伝子発現が相まって、遺伝子機能解析、アンチセンスやRNAi実験、ワクチン開発の他、トランスジェニック動物の研究などにも理想的なシステムである。
・短期間で結果が得られる最適化されたプロトコール
Clontechのプロトコールは、10~17日間で組換えアデノウイルスが得られるように最適化されている。本プロトコールでは相同組換えの代わりに効率の良いライゲーション法を取り入れ、さらにそのままライゲートできるよう直鎖状のAdeno-X System 1 Viral DNAを使用している。本システムには便利なシャトルベクターpShuttle2や、クローニング時間を短縮する独自の二重消化バッファーも含まれている。
・シンプルなクローニング操作
Adeno-X System 1ではライゲーション法を使用しているために、非組換え型のアデノウイルスが除去される。この
in vitroライゲーション法と最適化プロトコールにより、従来の相同組換え法よりも短期間でより確実に、組換え型アデノウイルスが得られる(表1)。
表1. アデノウイルスを介する遺伝子伝達法の比較
方法 |
主要な技術 |
特徴 |
Adeno-X System 1
(販売終了)
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- 消化済みのアデノウイルスDNAとシャトルプラスミドのライゲーション
- 組換えプラスミドで大腸菌を形質転換
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- 迅速な産生とライゲーション
- 高収量の組換えアデノウイルス
- 容易なクローニング手順
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Adeno-X System 2 (販売終了) |
- Creator技術によるin vitro組換え反応
- 簡素化されたプロトコール
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293細胞における相同組換え |
- 293細胞におけるアデノウイルスDNAとシャトルプラスミドの組換え
- 低収量の組換えウイルス
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細菌における相同組換え |
- 細菌内でのアデノウイルスDNAとシャトルプラスミドの組換え
- 増幅のため別の菌株に移動
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- 低効率の組換え反応
- 低収量の組換えウイルスDNA
- 煩雑な手順
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図1. Adeno-X System 1では他のアデノウイルスシステムの数分の1の時間で組換え体を作製できる
Adeno-X Expression System 1では、シャトルベクターpShuttle2を使用して目的遺伝子をクローニングする。組換え型アデノウイルスは、pShuttle2の発現カセット中に存在するMCSに遺伝子を組み込んで作製する。発現カセットには非常に存在率の低い2箇所の切断サイト、PI-Sce IサイトとI-Ceu Iサイトが隣接しているが、両切断サイトはAdeno-X Viral DNA中にも存在している。PI-Sce IとI-Ceu Iを用いてpShuttle2の二重消化を行い、目的遺伝子が含まれる断片をウイルスDNA(予めPI-SceとI-Ceu Iで消化済み)にライゲートする。さらにSwa Iで消化して、自己ライゲートDNAや非組み込み型アデノウイルスDNAを除去する。ライゲーションが終わった後、大腸菌の形質転換を行い、制限酵素で切断して組換えクローンを同定する。次に組換えアデノウイルスDNAを用いて継代数の少ないHEK 293細胞にトランスフェクトを行い、4~7日後に組換えアデノウイルスを回収する。
Adeno-X Expression System 1には、そのまま使用可能な消化済みAdeno-X Viral DNAの他に、pShuttle2 Vector、pShuttle2-lacZ Control Vector、PI-Sce I、I-Ceu I、Double Digestion Buffer、BSAが含まれている。
消化済みAdeno-X Viral DNAは、別途購入できる。