pUC118DNAマルチクローニングサイト中にあらかじめ挿入してあるカナマイシン耐性遺伝子(約1.5 kb)について、M4、RVプライマーを用いてPCRを行った。この反応液について、アガロースゲル電気泳動を行い、ゲルを切り出した後、SUPREC-01(終売しました)、フェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿で目的DNA断片を精製した。このDNA断片を基質としてカナマイシン耐性遺伝子のサブクローニングを試みた。以下にその手順、結果を示す。
このDNA断片(約500 ng、0.5 pmol)をStandard Protocolの1. にしたがい、平滑末端化した後、pUC118/
Hinc II 分解物(約100 ng、0.05 pmol)とライゲーション(10 μl平滑末端化反応液、1 μl vector DNA、40 μl Ligation Solution A、10 μl Ligation Solution B、16℃、30 min)した。このライゲーション産物20 μlで
E. coli Competent Cells JM109(製品コード 9052)100 μlを形質転換させ、X-Gal、IPTG、アンピシリンを含むプレート上でコロニーを形成させた。プレート上の白色コロニーの一部をカナマイシンプレートに移し実際のクローニング効率を調べた。
さらにベクターのセルフライゲーションによるバックグラウンドを避けるために平滑末端反応後のDNAの5'末端をT4 Polynucleotide Kinase(製品コード 2021)を用いてリン酸化し、脱リン酸化処理済みのpUC118/
Hinc II とのライゲーションを行い、形質転換した。この場合、平滑末端反応後のDNAの5'末端のリン酸化は、5 μl平滑末端化反応液、2.5 μl 10×リン酸化 Buffer(500 mM Tris-HCl(pH7.6)、100 mM MgCl
2、50 mM DTT)、1 μl 10 mM ATP、15.5 μl滅菌蒸留水、1 μl T4 Polynucleotide Kinase(Total 25 μl)を37℃で30分間保温した後、65℃、10分で酵素を熱失活させた。以上の結果を表1に示した。
表1 PCRによって増幅したカナマイシン耐性遺伝子のクローニング効率
インサート |
ベクター 脱リン酸化 |
形質転換効率 青色コロニー/白色コロニー (コロニー/μg vector DNA) |
カナマイシン 耐性コロニー/白色コロニー (%) |
平滑末端化 |
平滑末端化後の 5'末端リン酸化 |
- |
- |
- |
1.4×106/1.8×104 |
0 |
+ |
- |
- |
1.2×106/3.2×104 |
64 |
+ |
+ |
+ |
6.0×102/2.1×104 |
71 |
本実験に使用したコンピテントセルの形質転換効率は1.5×10
7/μg pUC118DNAであった。
平滑末端反応に用いる基質は精製度が高いほど高いクローニング効率が得られる。
5'末端リン酸化の際、末端平滑反応液の持ち込みが少ないほど高いクローニング効率が得られる。