Adenovirus Dual Expression Kit (CAG/EF1α)
プロトコールの概略
作業内容 |
プロトコール |
必要日数 |
組換えコスミドの構築 および調製 |
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4~5日 |
↓コスミドベクターへのインサートの挿入 |
A-1 |
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↓構築した組換えコスミドの構造確認 |
A-2 |
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↓構築した組換えコスミドの大量調製 |
A-3 |
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組換えアデノウイルスの作製 および確認 |
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約3週間 |
↓組換えアデノウイルスの作製 |
B-1-① or B-1-② |
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↓組換えアデノウイルスの確認 |
B-2 |
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高力価組換えアデノウイルスの調製 |
C |
約1週間 |
↓ |
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品質検定 |
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↓(力価測定([50% Tissue Culture Infections Dose(TCID50)法] |
D |
約2週間) |
↓(RCA チェック |
付録6 |
約1週間) |
目的細胞へのアデノウイルスの感染 |
E |
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* いずれのコスミドベクターでも、プロトコールに記載の方法により、組換えアデノウイルスを作製することができます。組換えアデノウイルスの作製ステップのプロトコールは、「完全長DNA導入法」で行う場合はB-1をご参照ください。
ウイルス株分離の重要性
本プロトコールでは、組換えアデノウイルス作製の最初のステップにおいてウイルス株を分離することをお勧めしています。
293細胞に組換えコスミドをtransfectionし、翌日に細胞を回収、希釈して96ウェルプレートに播きます。18日間、培地を加えながらCO2インキュベーター内で培養し、8日目以降に細胞が完全に変性するウェルを1次ウイルスとして採用します。約2週間半(その構造確認も含めると3週間)の時間が必要ですが、このようにして得られる組換えウイルスは、シングルクローンである確率が高いと考えられます。
ウイルス株を分離する工程は、大変重要です。「完全長DNA導入法」では、理論上、親ウイルスの混入はありませんが、インサートの一部が欠失したウイルスが生じる可能性が、低くてもあります。万が一、微量でも一部欠失ウイルスが存在すると、拡大調製時や実験系において突然優勢になる可能性もありますので、transfectionして得たウイルス液をそのまま増幅して用いることはお勧めできません。ウイルス株の分離は「完全長DNA導入法」においても、必ず、プロトコールどおりに、実施されることをお勧めいたします。
また、得られたウイルスを各ステップで確認することも大切です。本プロトコールでは、2次ウイルスの調製後(「VII. B-2. 組換えウイルスの確認」)および、4次ウイルスの調製後(「VII. C. 高力価組換えウイルスの調製」)に構造確認を行います。特に、非常に多くの時間と労力を要する動物実験等に進まれる場合は、より確実に、信頼性のある結果を得るためにも、プロトコール通りに、確実に高品質な組換えウイルスを作製、調製されることをお勧めいたします。
コントロール実験
目的とする組換えアデノウイルスを作製する際には、コントロール実験を行うことを強くお勧めします。
Adenovirus Dual Expression Kitにはコントロールコスミド pAxCAiLacZitが含まれています。pAxCAiLacZitは、大腸菌のβ-ガラクトシダーゼ(lacZ)遺伝子がコスミドベクター pAxCAwtit2のSmi I (Swa I)サイトに挿入されています。そのため、「完全長DNA導入法」でも組換えアデノウイルスAxCAiLacZを作製することができます。
このようにして、作製した組換えアデノウイルスAxCAiLacZは、β-ガラクトシダーゼ(lacZ)遺伝子を発現するため、目的細胞への感染条件の検討実験(「E. 目的細胞への組換えウイルスの感染)にも使用することができます。
Adenovirus Dual Expression Kit (CAG/EF1α)