T細胞拡大培養

レトロネクチン®共刺激によるTリンパ球(T細胞)拡大培養

RetroNectin®(製品コード T100A/B、T201)

レトロネクチン法は、レトロウイルスベクターやレンチウイルスベクターを介する哺乳類細胞への遺伝子導入法として広く活用されているが、さらにTリンパ球の培養を増強する効果が確認された。

T細胞は通常、抗CD3抗体刺激によりインターロイキン-2(IL-2)の存在下で拡大培養を行うが、このときレトロネクチンを共存させることで拡大培養効率が格段に増大する。得られたT細胞集団中には未分化な細胞であるナイーブT細胞が多く含まれている。ナイーブT細胞は、抗原提示を受け細胞傷害性T細胞に分化する能力を有する。

※レトロネクチンを用いたリンパ球拡大培養を研究目的以外で実施の場合には、個別に当社とのライセンス契約の締結が必要となります。

実験例:ガス透過性培養バッグを用いた閉鎖系培養システムでのレトロネクチン共刺激T細胞拡大培養の実例

【培養スケジュール例】

セットアップ (Day0)
1)CultiLife 215への抗CD3抗体とRetroNectinのコーティング
・抗CD3抗体(OKT3)(5 μg/ml)とRetroNectin(25 μg/ml)を含むPBSを30 ml調製する。
CultiLife 215 Culture bag(製品コード FU0005)内に全量添加する。
  ※OKT3とRetroNectinを固定化するにはCultiLife 215が適している。
    GT-T610 (CultiLife Eva) Culture bagは本目的には使用できない。

・37℃ CO2インキュベータ中で2~5時間保温し、コーティングする。
・バック内溶液を全量除去する。
・PBS 30 mlを用いてバッグ内を3回洗浄する。
(最後の洗浄液は、細胞播種直前に除去する)

2)PBMC播種
・PBMC 3×107細胞を0~1%の血清または血漿を含む培地(LymphoONE T-Cell Expansion Xeno-Free Mediumなど)30~50 mlに懸濁する。
  ※LymphoONE T-Cell Expansion Xeno-Free Mediumを使用する場合、通常0.5~1%の血清または血漿を添加する。
・PBMC懸濁液に必要量のIL-2を添加する(最終培養液量に対し、200~1,000 U/ml)。
・ステップ1)でコーティング処理したCultiLife 215内にIL-2入りPBMC懸濁液を全量添加する。
・さらにバッグ内に同じ培地を添加し、合計200~300 mlとする。
・37℃ 5% CO2インキュベーター内で培養する。


継代 (Day4以降適宜実施)
・CultiLife 215内の細胞を懸濁し、一部~全量をGT-T610(CultiLife Eva)内に移す
 ※RetroNectinの刺激により、リンパ球は培養バッグに強く接着するため、
   図のように両手で50回程度交互に押さえて培養液を揺らすことにより、
   細胞をバッグ面から剥がすことができる。
 ※CultiLife 215内の細胞は顕微鏡下で観察が可能であり、
   細胞がバッグ面から剥がれたかどうか確認できる。
・培地とIL-2(200~1,000 U/ml 培養液量)を必要量添加する。
 ※ GT-T610 (CultiLife Eva)バッグの最大液量は1,000 ml
・37℃、5%CO2インキュベーターで培養継続する。
・以降、細胞増殖に伴って、適宜希釈しながらGT-T610(CultiLife Eva)の枚数を増やし、10~14日間培養継続する。
回収 (Day10~14)
・GT-T610(CultiLife Eva)内の細胞を懸濁する。
・遠心等により回収する。
参考:

Day0Day4Day7Day10
細胞数3×107 cells スタート


液量300 ml500 ml×5枚*31,000 ml×5枚*4
面積215 ㎝2 *1640 ㎝2 *2×5枚

CultiLife 215 1枚GT-T610 5枚
*1 CultiLife 215の培養面積は215 ㎝2です。
*2 GT-T610の培養面積は640 ㎝2です。
*3 Day4での細胞濃度が4×105 cells/ml未満の場合はさらに1日そのまま培養することをお勧めします。
     Day4は5×104 cells/ml以上の細胞濃度になるように継代してください。
*4 培養中期は5×105 cells/ml以上の細胞濃度になるように継代してください。

【健常人PBMCからの拡大培養例】

方法

インフォームドコンセントの得られた健常人ボランティア2名より得られた50 ml採血から、末梢血単核球(PBMC)及び血漿を単離し、本培養システムによりRetroNectin共刺激の効果を検討した。なお、血漿は非働化して、day0、day4にそれぞれ終濃度0.6%となるように添加した。また、培地はGT-T551 Culture medium(製品コード KB551S)を使用した。

結果


抗CD3抗体にレトロネクチン刺激を組み合わせることで、ナイーブT細胞を多く含むT細胞集団が得られた。