I.一過性発現を顕微鏡下で比較
【方法】AcGFP1遺伝子を挿入したpBApo-EF1αおよびpBApo-CMVを、
Xfect Transfection Reagentを用いて各細胞に一過性に導入し(血清添加培地と無添加培地で検討)、48時間後に位相差および蛍光顕微鏡を用いて観察した。(画像は血清無添加の場合)
【結果】全ての細胞株でAcGFP1が検出され、EF1αプロモーター活性を確認することができた。AcGFP1陽性細胞の割合は、EF1αとCMV IEであまり差がなく、発現量も同程度だった。
II.一過性発現および安定発現をFACS解析で比較
(A)一過性発現
【方法】遺伝子導入から48時間後に細胞を回収し、Flow cytometerにてAcGFP1陽性細胞を計測した。陽性細胞の割合を%positiveで示し、各陽性細胞におけるAcGFP1の発現強度をMFI(Mean of Fluorescent Intensity)で示した。
【結果】Jurkat細胞へは比較的良好に遺伝子導入を行うことができた(30~40%)。K562細胞、L1210細胞への導入効率は10%程度だったが、トランスフェクション時に培地から血清を除くことにより、L1210の導入効率を大幅に高めることができた。発現強度は細胞株により差が認められ、Jurkat細胞ではEF1αのMFI値がCMVのMFI値の2倍以上となり、プロモーター活性の指向性が認められた。
(B)安定発現
【方法】遺伝子導入から48時間後に細胞(血清無添加培地でのトランスフェクション)を回収し、1:10~20に希釈継代し、G418を終濃度1 mg/mlで添加、選択培養を開始した。耐性細胞が増殖してきたところで再度1:10~20に希釈継代し、2回の選択継代を経て増殖した細胞を薬剤耐性集団とし、各耐性細胞集団におけるAcGFP1発現をFACSにて計測した。
【結果】全ての細胞株で薬剤耐性細胞を取得することができた。薬剤耐性細胞においては、どの細胞株でもEF1αプロモーターがより高い活性を示した。MFI値で比較した場合、Jurkatで29.6倍、K562で3.4倍、L1210では7.7倍、EF1αは高レベルの発現を示し、特にJurkat細胞での差は顕著だった。
EF1αプロモーターはメチル化による遺伝子サイレンシングに耐性があるため安定発現株の作製に有効といわれている。今回は4週間程度の短期な培養であるため、サイレンシングの影響か否かは不明であるが、使用した3株の血球由来細胞でも優位性が確認できた。