ノロウイルス(GI / GII)遺伝子型判別用PCRキット Ver.2

ノロウイルス遺伝子型判別用PCRキット Ver.2による実検体由来精製RNAを用いた検出確認試験

ノロウイルス遺伝子型判別用PCRキットVer.2(以下、本製品:製品コード RC122A/RC123A)*1を用いて、実検体より精製されたRNAを供し、検出確認試験を行いました。比較として、病原体検出マニュアル*2を一部改変した反応系(以下、標準法)による試験も行いました。試薬組成、PCR条件、試験結果を以下に示します。また、本試験にて増幅不良となった検体については、さらに追加試験を行いました。

【方法】

<鋳型RNAの調製>
遺伝子型既知の検体(便乳剤)より、NucleoSpin Virus(製品コード 740983.10/.50/.250)を用いてRNAを抽出し、TaKaRaノロウイルスGI/GII検出キット(1液タイプ)Ver.2(製品コード RR204A)により各検体のCt値を求めました。

<試薬組成・PCR条件>
上記で求めたCt値を参照して高~低コピーの21検体を任意に選定し、本製品による試験に供しました。
(選定した検体のCt値は、ノロウイルス・GI(以下、GI)の検出において、19.6≦Ct≦35.3、ノロウイルス・GII(以下、GII)の検出において19.1≦Ct≦37.7でした。)
標準法は、One step RT-PCR法として実施しました。
PCR産物の電気泳動にはTAE bufferと3%アガロースゲルを使用し、PCR産物5 μlを供して、100 V/25分間の泳動を行いました(図1、2、3)。

本製品(製品コード RC122A/RC123A)
(試薬組成)
RT-PCR Mix (NV)-225 μl
Enzyme Mix (NV)4 μl
GI or GII Primer Mix (NV)-22 μl
滅菌水17 μl
精製RNA (Template)2 μl
Total50 μl


(PCR条件)
42℃20分
94℃1分
98℃10秒
 
45サイクル
52℃15秒
68℃30秒
標準法
(試薬組成)
2×PCR Buffer for KOD -Multi & Epi-25 μl
KOD-Multi & Epi-1 μl
M-MLV Reverse Transcriptase(200 U/μl)-0.2 μl
Forward primer(10 μM)*32.5 μl
Reverse primer(10 μM)*42.5 μl
滅菌水16.8 μl
精製RNA (Template)2 μl
Total50 μl

(PCR条件)
42℃20分
94℃2分
98℃10秒
 
45サイクル
50℃15秒
68℃30秒

【結果】

本製品により得られたPCR産物の電気泳動について、以下のとおり示します。

<GI>
標準法では21検体中18検体(85.7%)、本製品では21検体中20検体(95.2%)で、増幅産物を用いた配列解析が可能でした(図1)。


図1. PCR産物(GI)の電気泳動写真
矢印は増幅不良により、配列解析不可となった検体を示す。
Marker: 100 bp ladder GI目的産物鎖長: 579 bp

<GII>
標準法では21検体中17検体(81.0%)、本製品では21検体中19検体(90.5%)で、増幅産物を用いた配列解析が可能でした(図2)。


図2. PCR産物(GII)の電気泳動写真
矢印は増幅不良により、配列解析不可となった検体を示す。
Marker: 100 bp ladder GII目的産物鎖長: 570 bp

得られた精製RNAのCt値・遺伝子型および電気泳動での検出可否を下記に示します(表1)。
表中の数値はCt値です。またCt>30を太字で示しています。

<表1.得られた精製RNAの遺伝子型およびCt値と検出可否の一覧>
No.既知の
遺伝子型
Ct値
(精製RNA)
本製品標準法
1GI.2[P2]32.0
2GI.3[P3]26.9×
3GI.3[P3]30.2
4GI.3[P3]27.8
5GI.4[P4]33.7
6GI.4[P4]28.7
7GI.4[P4]24.8
8GI.6[PNA4]34.3
9GI.6[PNA4]19.6
10GI.6[PNA4]35.3
11GI.7[P7]28.5
12GI.7[P7]32.0
13GI.7[P7]28.1
14GI.7[P7]31.5
15GI.7[P7]25.8
16GI.7[P7]29.1×
17GI.7[P7]29.7×
18GI.7[P7]33.1
19GI.7[P7]23.4
20GI.7[P7]30.3
21GI.7[P7]33.5×
No.既知の
遺伝子型
Ct値
(精製RNA)
本製品標準法
1GII.2[P16]29.2
2GII.2[P16]37.7
3GII.3[P3]22.3
4(GII.3[P12])21.8
5GII.3[P12]28.3
6GII.3[P29]27.5×
7GII.4[P4]23.6
8GII.4[P16]Ct>30
9GII.4[P1]26.4
10GII.4[P31]20.5
11GII.5[P5]26.2
12GII.6[P6]19.1×
13GII.6[P7]23.7
14GII.6[P7]19.5
15GII.6[P7]24.4
16GII.6[P7]25.1×
17GII.627.4×
18GII.625.7×
19GII.10[P12]25.5×
20GII.12[PNA7]25.7
21GII.17[P17]24.4

本製品にて増幅不良となった検体(表中×)は、いずれもCt<30であり、また特定の遺伝子型によるものでもありませんでした。


【増幅不良となった検体の追加検討】

本製品にて増幅不良となったGI 1検体とGII 2検体について、それぞれの精製RNAを滅菌水により2~100倍まで希釈し、本製品に再度供しました。その後、PCR産物5 μlを電気泳動に供しました(図3)。


図3. 希釈精製RNAを用いたPCR産物の電気泳動写真
Ctは各検体の精製RNA原液のCt値を示す。
Maker:100 bp ladder GI目的産物鎖長: 579 bp GII目的産物鎖長: 570 bp

2~8倍までの鋳型希釈により、2検体で目的産物の増幅が認められました(検体 No.2、No.12)。一方で、検体によっては、~100倍程度の鋳型希釈が有効であることも確認されました(検体 No.19)。

【まとめ】

本製品では、実検体由来の精製RNAを供した場合にも、90%以上の検出率を示しました。増幅不良となった検体は、滅菌水により適宜希釈することで、検出可能となりました。

第43回 日本食品微生物学会学術総会 発表資料より
(タカラバイオ比較データ)

*1 Norovirus (GI) RT-PCR Kit for genotyping Ver.2(製品コード RC122A)、Norovirus (GII) RT-PCR Kit for genotyping Ver.2(製品コード RC123A)
*2 国立感染症研究所「病原体検出マニュアルノロウイルス(第1版)(令和元年6月)」
*3 病原体検出マニュアル掲載のプライマー GI: MON432, GII: MON431
*4 病原体検出マニュアル掲載のプライマー GI: G1-SKR, GII: G2-SKR

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