Takara FFPE DNA QC All-in-One Kit

ホルマリン固定強度によるDNA品質の違い

ホルマリン固定パラフィン包埋(Formalin Fixed Paraffin Embedded:FFPE)試料は臨床・研究を問わず広く利用されており、近年FFPE試料を解析する頻度が増加しています。しかし、FFPE試料は長期保存に有効ではありますが、固定プロセスで用いるホルマリンにより核酸やタンパク質に化学的・物理的修飾を引き起こし、下流アッセイ(PCR増幅など)に影響を与えることが知られています。
ホルマリン濃度、固定時間を変えて、ホルマリン固定方法による抽出核酸の品質への影響を評価しました。

● 材料および方法

HEK293T細胞を異なるホルマリン濃度、固定時間により固定した。ホルマリン固定された細胞からNucleoSpin DNA FFPE XS(ゲノムDNA抽出・精製キット:製品コード 740980.50)を用いてDNA抽出を行った。抽出DNAは、Takara FFPE DNA QC All-in-One Kit(製品コード NN0001)での品質検定、および電気泳動に供した。
また、ThruPLEX Tag-Seq HV(ライブラリー調製キット:製品コード R400742)を用いてライブラリーを調製し、Takara FFPE DNA QC All-in-One Kitによる断片化スコアとホルマリン固定条件がライブラリー収量に与える影響を評価した。 実験の流れ

● 結果および考察

結果(A)電気泳動
結果(B)10%ホルマリン固定時間の違いによるLong/Short比およびDIN値の推移
結果(C)ホルマリン濃度によるLong/Short比への影響と固定時間によるLibrary yieldへの影響
HEK293T細胞を異なるホルマリン濃度(10%, 20%)、固定時間(20 min, 1 hour, 6 hours, 24 hours, 72 hours)で固定した。固定した細胞からDNAを抽出し、Takara FFPE DNA QC All-in-One Kitを用いて品質検定行い、Long/Short比を算出した。また、電気泳動により抽出DNAのサイズ分布およびDIN値を得た(A)。
ホルマリン濃度を10%に固定し、固定時間を変化させところ、サイズ分布およびDIN値への影響は限定的であったが、Long/Short比は固定時間と共に減少した。Takara FFPE DNA QC All-in-One KitはqPCRにより試料の増幅効率を評価していることから、ホルマリン固定時間が長くなることで有効なDNA分子数が少なくなることが示唆された(B)。
また、ホルマリン固定濃度を濃くすると、6時間固定ではLong/Short比およびLibrary収量が低下する結果を得た(C)。ホルマリン固定によるDNA品質への影響は、時間および濃度によってよりダメージを受け、Takara FFPE DNA QC All-in-One Kitを用いてDNAの品質を評価することで、以降の増幅効率の推測が可能となることが示唆された。

  Takara FFPE DNA QC All-in-One Kit