【対象製品】
BRDC Virus Direct Detection RT-qPCR Kit(製品コード RC250A:以下、本製品)
【概要】
実検体(牛鼻腔スワブ懸濁液、一部臓器乳剤を含む)
*1を以下に示す3種の方法に供試し、対象ウイルス遺伝子6種の検出結果を比較した。
*1 検出対象のウイルス6種が網羅されるように検体を選択した。
<検出対象>
- 牛パラインフルエンザウイルス3型(以下、BPIV3)
- 牛RSウイルス(以下、BRSV)
- 牛伝染性鼻気管炎ウイルス(以下、IBRV)
- 牛アデノウイルス4~7型(以下、BAdV)
- 牛コロナウイルス(以下、BCoV)
- 牛ウイルス性下痢ウイルス(以下、BVDV)
- 従来法
牛鼻腔スワブ懸濁液(一部臓器乳剤を含む)から核酸抽出を行い、以下の文献を従来法として、6種類のウイルスを検出した。
- BPIV3(real-time PCR):Kishimoto et al. JVMS (2017)*2
- BRSV(real-time PCR):Kishimoto et al. JVMS (2017)*2
- IBRV(conventional PCR):病性鑑定マニュアル第4版(Schynts, F., et al. Vet. Microbiol. 66, 187-195(1999). のgE1+gE2プライマーセット)
- BAdV(nested PCR):病性鑑定マニュアル(Maluquer de Motes, C., et al. Appl. Environ. Miocrobiol. 70, 1448-1454 (2004).のBALF+BARF、BALN+BARNプライマーセット)
- BCoV(real-time PCR):Kishimoto et al. JVMS (2017) *2
- BVDV(conventional PCR):病性鑑定マニュアル(Vilcek S, et al. Arch Virol 136. 309-323.(1994) の324+326プライマーセット)
*2 Kishimoto, Mai, et al. "Development of a one-run real-time PCR detection system for pathogens associated with bovine respiratory disease complex."Journal of Veterinary Medical Science 79.3 (2017): 517-523.
- 本製品を用いたダイレクト法
牛鼻腔スワブ懸濁液(一部臓器乳剤を含む)を、本製品に含まれるSolution Qにて検体サンプルの調製を行い、本製品での反応に供した。
- 本製品を用いた核酸精製法
牛鼻腔スワブ懸濁液(一部臓器乳剤を含む)から核酸抽出を行い、本製品での反応に供した。
【結果】
<BPIV3>
本製品を用いたダイレクト法および核酸精製法のいずれにおいても、従来法より検出感度が低下したが(ダイレクト法:3/6、核酸精製法:4/6)、核酸精製を行わないダイレクト法も適用可能であることが示唆された。
<BRSV>
従来法と本製品を用いた核酸精製法では、同程度の検出感度が認められた。ダイレクト法については、従来法よりも検出感度がやや低下した(4/7)。一方で、従来法では不検出となった2検体が、ダイレクト法にて検出される様子も確認された。
<IBRV>
本製品を用いたダイレクト法および核酸精製法のいずれにおいても、従来法より高い検出感度が示された。
<BAdV>
本製品を用いたダイレクト法および核酸精製法のいずれにおいても、従来法の1st PCR(すべて不検出、データ割愛)と比べ高い検出感度を示したが、その後のnested PCRよりは低い結果となった。また、ダイレクト法および核酸精製法の検出感度は同等であった。
<BCoV>
本製品を用いた核酸精製法の方が、従来法よりやや高い検出感度を示した(核酸精製法:18/24、従来法:16/24)。ダイレクト法については、従来法よりも検出感度がやや低下したが、核酸精製を行わないダイレクト法も適用可能であることが示唆された。
<BVDV>
従来法と本製品を用いたダイレクト法では、同程度の検出感度が認められた。核酸精製法については、従来法で陽性の3検体以外でも検出が確認された。
<参考情報:インターナルコントロール(IC)>
本製品を用いたダイレクト法および核酸精製方法のいずれにおいても、24検体全てで安定してICが検出された。
【考察】
今回の比較試験では、他2法と比して、本製品を用いたダイレクト法の検出感度が低い傾向にあった。これは、他2法では、核酸抽出により反応阻害物質が除去されるとともに、核酸溶出時に濃縮された精製核酸が供試されたことが要因と推察される。一方のダイレクト法は、煩雑な核酸抽出操作を経ずとも、対象ウイルス遺伝子6種を検出可能であったことから、スクリーニング目的では、本製品によるダイレクト法が好適である。
また、本製品を用いた核酸精製法にて牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)が多数検出された事例については、従来法であるConventional PCR法と比して高感度とされるReal-time PCR法に精製核酸を供試したことで、検体中に極わずかに存在する対象ウイルス粒子(もしくは対象ウイルス核酸)が検出されたものと推測される。
※本データは、弊社との共同研究を通じて、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門よりご提供いただきました。