下水疫学調査(下水サーベイランス)用リアルタイムPCRキット

【アストロウイルス/アデノウイルス】下水中のウイルス遺伝子のモニタリング実施例

【対象製品】
Astrovirus/Adenovirus F Detection RT-qPCR Kit for Wastewater(製品コード RC385A)

【概要】
山梨県内の下水処理場において2023年1月~12月の期間に月2回の頻度で採取した下水流入水サンプル(計24サンプル)について、アストロウイルスおよびアデノウイルスF種の検出を行った。反応はN=2で実施した。

【結果】
全てのサンプルにおいてN=2でアストロウイルスおよびアデノウイルスF種が検出された。サンプル中の各ウイルスの濃度は、アストロウイルスは7月に、アデノウイルスF種は1月、2月にピークが確認された。
下水中のアストロウイルスコピー数の推移
図1.下水中のアストロウイルスコピー数の推移

下水中のアデノウイルスF種コピー数の推移
図2.下水中のアデノウイルスF種コピー数の推移

【方法】
ウイルスの濃縮:PEG沈殿法
  1. 40 mlの下水サンプルにPEG8000を4.0 gおよびNaClを0.94 g添加し、混合する。
  2. 12,000×g 99分 4℃の条件で遠心する。
  3. 上清を除去する。
  4. 12,000×g 5分 4℃の条件で遠心する。
  5. 上清を除去する。
  6. 800 μlの滅菌水で沈殿物を懸濁する。
従来法の4℃での一晩の振とうおよびその後の遠心の工程を、手順2~5にて代用することにより作業時間を短縮しました。
公益社団法人日本水環境学会COVID-19タスクフォース発行「下水中の新型コロナウイルス遺伝子検出マニュアル」(2021年3月)

核酸精製
上記の方法で得られたウイルス濃縮液から分取した200 μlについて、核酸抽出キットのプロトコールに従って精製を行い、DNA/RNA抽出液100 μlを回収した。
※本キットはDNAウイルスであるアデノウイルスF種、およびRNAウイルスであるアストロウイルスをマルチプレックスで検出します。そのため、核酸抽出キットはDNAおよびRNAの両核酸を抽出するものを使用しています。

  • リアルタイムPCR反応液組成:取扱説明書記載の通り。
  • リアルタイムPCR装置:Thermal Cycler Dice Real Time System III (Cy5) with PC(製品コード TP990)
  • リアルタイムPCR条件:
    25℃
    42℃
    95℃
    95℃
    56℃
     10 min.
    5 min.
    30 sec.
    5 sec.
    30 sec.
    45 cycles

本手順およびデータは、弊社との共同研究を通じて、国立大学法人山梨大学国際流域環境研究センター 原本英司教授よりご提供いただきました。

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