BcaBEST® Isothermal FluorDetect Kit (DNA/RNA)

簡易核酸抽出試薬により得られた粗核酸抽出液のLAMP反応例

本製品は、検体からの核酸精製を行うことなく、簡易処理によって得られた粗核酸抽出液からの目的遺伝子の検出も可能です。ここでは、疑似陽性検体をProteinase K(製品コード 9034)処理して得た粗核酸抽出液をLAMP/RT-LAMP反応液に添加して目的遺伝子を検出した反応例を紹介します。

I.鼻咽頭ぬぐい液にスパイクしたSARS-CoV-2ウイルスの検出

鼻咽頭ぬぐい液に非感染性SARS-CoV-2をスパイクした疑似陽性検体に、Proteinase Kを添加して簡易処理したものを粗核酸抽出液とした。この粗核酸抽出液を各社LAMP試薬に添加してSARS-CoV-2 N遺伝子の検出を行った。

【方法】
粗核酸抽出液の調製
  1. 健常人の鼻咽頭を拭ったスワブを0.1%(v/v)Tween20を含むRNase-free Waterに懸濁する。
  2. 上記懸濁液に非感染性SARS-CoV-2(ZeptoMetrix社、Cat No.NATSARS(COV2)-ST)をスパイクした検体を疑似陽性検体とする。疑似陽性検体は、1反応当たりのウイルスゲノムコピー数が1,000 copies、懸濁液の持ち込み量が0、0.1、1 μlとなる濃度で3種類を用意する。
  3. 疑似陽性検体にProteinase Kを終濃度10%となるように加え、ピペッティングしてよく混合する。
  4. 95℃ 5分加熱してProteinase Kを失活させたものを粗核酸抽出液とする。

プライマー設計領域
  • SARS-CoV-2 N遺伝子

リアルタイムRT-LAMP反応液の調製
試薬液量(μl)
BcaBEST Isothermal Mix (2X)12.5
10×LAMP primer2.5
25×TB Green Solution1.0
粗核酸抽出液(1,000 copies/rxn)4.0
RNase-free Water5.0
合計25.0

リアルタイムRT-LAMP反応
リアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice Real Time System III(製品コード TP950)を使用して反応させた。

Cycles:30
63℃ 30秒
63℃ 30秒(データ取得:FAMフィルター)

他社製品は各社推奨プロトコールに従って反応液を調製し、推奨温度にて反応を行った。反応時間は一律30分とした。

【結果と考察】
いずれのLAMP試薬においてもSARS-CoV-2が検出されたが、A社試薬では反応液へ添加する鼻咽頭成分の量に応じて検出に遅れが生じた。この反応系においては、本製品はA社試薬よりも反応阻害物質への耐性が高いことが示された。また、B社試薬は同等の耐性を示した。

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鼻咽頭成分を含むRT-LAMP反応におけるSARS-CoV-2 N遺伝子の検出時間n=2の平均値を示す
図1.鼻咽頭成分を含むRT-LAMP反応におけるSARS-CoV-2 N遺伝子の検出時間n=2の平均値

II.尿検体にスパイクしたクラミジア・淋菌の検出

尿検体に非感染性のChlamydia trachomatis、あるいはNeisseria gonorrhoeaeをスパイクした疑似陽性検体に、Proteinase Kを添加して簡易処理したものを粗核酸抽出液とした。この粗核酸抽出液を各社LAMP試薬に添加して目的遺伝子の検出を行った。

【方法】
粗核酸抽出液の調製
  1. 非感染性Chlamydia trachomatis(ZeptoMetrix社、Cat No.NATCT(D-UW3)-ERCM)、あるいは非感染性Neisseria gonorrhoeae(ZeptoMetrix社、Cat No.NATNG-ERCM)を尿検体にスパイクした検体を疑似陽性検体とする。疑似陽性検体は、1反応当たりの細菌ゲノムコピー数が180 copies、尿の持ち込み量が0、2.25、4.5 μlとなる濃度で3種類用意する。
  2. 疑似陽性検体にProteinase Kを終濃度10%となるようにそれぞれ加え、ピペッティングでよく混合する。
  3. 95℃ 5分加熱してProteinase Kを失活させたものを粗核酸抽出液とする。

プライマー検出領域
  • Chlamydia trachomatis 23S rRNA遺伝子
  • Neisseria gonorrhoeae 16S rRNA遺伝子

リアルタイムLAMP反応液の調製
試薬液量(μl)
BcaBEST Isothermal Mix (2X)12.5
10×LAMP primer2.5
25×TB Green Solution1.0
粗核酸抽出液(180 copies/rxn)9.0
合計25.0

リアルタイムLAMP反応
リアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice Real Time System III(製品コード TP950)を使用して反応させた。
Cycles:30
63℃ 30秒
63℃ 30秒(データ取得:FAM フィルター)

他社製品は各社推奨プロトコールに従って反応液を調製し、推奨温度にて反応を行った。反応時間は一律30分とした。

【結果と考察】
Chlamydia trachomatisの検出においては、いずれの試薬においても尿検体の量に応じて検出に遅れが生じた。一方で、Neisseria gonorrhoeaeの検出においては、尿検体を添加したことによる検出の遅れが最も小さいのは本製品であった。これらの結果から、尿に由来する反応阻害の影響は反応系により差があること、および本製品は他社製品に比べて阻害耐性が高いことが示唆された。

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LAMP反応におけるChlamydia trachomatis検出時間n=3の平均値を示す
図2.LAMP反応におけるChlamydia trachomatis検出時間n=3の平均値

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LAMP反応におけるNeisseria gonorrhoeae検出時間n=3の平均値を示す
図3.LAMP反応におけるNeisseria gonorrhoeae検出時間n=3の平均値

  BcaBEST® Isothermal FluorDetect Kit (DNA/RNA)