Kilo-Sequence用 Deletion Kit

Standard Protocol
 (Kilo-Sequence用 Deletion Kit)

Kilo-Sequence用 Deletion Kitを用いたデレーションミュータントの作製

通常、1回のシーケンシング操作では300塩基前後のDNAしか解析できないため、さらに長鎖のDNAを解析する場合にはデレーションミュータントを作製することが多い。以下に示す操作により、インサートされたDNAをプライマー側より段階的に欠失させた一連のプラスミド(あるいはファージ)DNAを得ることができる。

得られたコロニーの中から適当なサイズのデレーションミュータントをスクリーニングする。
* この操作により、デレーションの起こらなかったプラスミドによるバックグラウンドを下げることができる。


Note

Kilo-Sequence用 Deletion Kit使用上の注意
  • 最初のDNA切断に用いる制限酵素として
    a:5'-突出、あるいは平滑末端を生じるもの(EcoR I 、Sma I 等)、
    b:3'-突出末端を生じるもの(Pst I 等)
    の2つが必要である。また、インサート内に切断部位がある酵素は用いることができない。使用できる酵素はDNAがマルチクローニングサイトのどの位置にインサートされているかにも左右されるので、サブクローニングの際に以上の点を考慮すること。なお、3'-突出末端であってもその末端の形状および配列によってはExonuclease III の基質となり得る場合があるため注意が必要である(Exonuclease III 参照)。適当な3'-突出型酵素がない場合には5'-突出末端を[α-S]dNTPで修復することによりExonuclease III の作用から保護することができる3)。また8塩基認識制限酵素Sse8387 I (製品コード 1183)はpUC18、19、118、119、M13 mp18、19のPst I siteを切断できるので有用である。
  • oc-DNAを用いてデレーションミュータントの作製を行うとExonuclease III がニックの入った場所から作用して非特異的なデレーションを起こしたミュータントができる。このため実験にはoc-DNAの含量が低いプラスミド(あるいはファージ)DNA標品を用いる必要がある。oc-DNAの含量が高い場合にはCsCl密度勾配超遠心分離等でccc-DNAを精製して実験に使用する。
  • 制限酵素消化を行う際、Star活性の出現しやすい条件で反応を行った場合等には、DNAにニックが入ってしまうことがある(Sac I はこの傾向が特に強いので、通常の条件でも過剰量の使用は避ける)。また隣接する2つのsiteでのdouble digestionは効率が悪いことがあるため注意する。
  • Exonuclease III によるDNA分解速度はDNAのGC含量等によってかなり変化する。反応速度が速すぎる(あるいは遅すぎる)場合には、反応温度やサンプリングの時間を調節する必要がある。
  • デレーションミュータントの作製では、デレーションの程度に偏りができて同じような大きさのクローンばかりが数多く取れることがある。Mung Bean Nuclease処理後、あるいはKlenow Fragmentによる末端修復後にサンプルの一部をアガロースゲル電気泳動してDNAの鎖長を確かめておけば、このようなトラブルを減らすことができる。
    また、末端修復後のサンプルをアガロースゲル電気泳動した後、適当な間隔で切り出したゲル断片よりDNAを回収してそれぞれライゲーション~トランスフォーメーションを行うサイズ分画法は、必要なクローンを得るためにスクリーニングするコロニー数が少なくてすむため、とても効果的である(Applicationの「超短時間サイズ分画法によるデレーションミュータントの作製」を参照)。

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