ApopLadder Ex™
(Apoptotic DNA Fragments Extraction Kit)

アポトーシスの早期検出

ApopLadder Exにより断片化DNAの高感度な定量解析が可能であることから、アポトーシスの早期検出への応用を試みた。一般に、アポトーシスの後期過程では細胞膜の透過性が増大しているため、アポトーシス細胞はトリパンブルー染色によって死細胞とともに青く染色される。しかし、アポトーシスの初期過程ではDNAの断片化は惹起されているが、細胞膜透過性の変化はまだ起こっていないと考えられる。そこで、P3U1細胞を種々の濃度のアクチノマイシンDで20時間処理し、トリパンブルー法とApopLadder Ex/SYBR Green I 法でアポトーシスの検出を比較検討した。
図4に示すように、トリパンブルー法では30 ng/ml以上のアクチノマイシンD処理によってアポトーシス率[トリパンブルー染色細胞数/全細胞数 ×100(%)]の増加が認められた。一方、ApopLadder Exで抽出した断片化DNAにSYBR Green Iを加えてその蛍光強度を測定した場合では、5 ng/ml以上の処理によって蛍光強度の明らかな増大が検出され、アポトーシスの初期段階を高感度に検出できることが示された。


図4 アポトーシスの初期段階の検出
種々のアクチノマイシンDで処理されたP3U1細胞について、トリパンブルー法によりアポトーシス率(%)を、また、ApopLadder Ex/SYBR Green I法により微量断片化DNAの相対蛍光強度を測定し、両者の比較を行った。

さらに、HL60細胞をスタウロスポリンで処理した後のアポトーシス断片化DNAの出現を、ApopLadder Exを用いて、時間経過を追って解析した。電気泳動で検出を行ったところ、スタウロスポリン処理1時間後および2時間後では検出限界ぎりぎりのladderingしか検出されず、3時間後および5時間後で明確なladderingが検出された(図5a)。一方、この抽出されたDNA溶液にSYBR Green Iを加えてその蛍光強度を測定し、アポトーシス断片化DNA量を調べたところ、スタウロスポリン処理後1時間という非常に初期の段階でアポトーシス断片化DNA量の顕著な増大が認められた(図5b)。光学顕微鏡による観察では、スタウロスポリン処理1~3時間後までは形態的には何らの変化も認められなかった。以上の結果は、アポトーシスの初期段階の高感度検出に本法が非常に有効であることを示している。


図5 アポトーシス断片化DNAの出現の経時解析
HL60細胞(3×105個)をスタウロスポリン(1 μM)で処理し、0、1、2、3、5時間後にApopLadder Exを用いてアポトーシス断片化DNAを抽出した後、2%アガロースゲルにより分離した(図5a)。また、抽出した断片化DNAにSYBR Green Iを加えてその蛍光強度を測定し、断片化DNAの定量を行った(図5b)。

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(Apoptotic DNA Fragments Extraction Kit)