Cellartis® DEF-CS™ 500 Culture System

【ユーザー様実施例】 プラダーウイリー症候群患者由来iPS細胞から神経細胞への分化誘導

立命館大学 薬学部薬学科 助教 添田修平先生

Cellartis DEF-CS 500 Culture System(製品コード Y30010)のユーザー様である立命館大学薬学部薬学科 添田修平先生らによるプラダーウイリー症候群患者由来iPS細胞から神経細胞への分化誘導の研究成果がNeuroscience Lettersに掲載されました。
【論文名】
Neuronal differentiation defects in induced pluripotent stem cells derived from a Prader-Willi syndrome patient.
Shuhei Soeda, Ryo Saito, Norihisa Fujita, Katsuichiro Fukuta, Hideo Taniura. Neuroscience Letters (2019) 703, 162-167.
添田先生よりご研究の内容や本製品についてのご感想をいただきましたので、是非ご覧ください。

■研究内容と結果

Prader-Willi syndrome (PWS)は第15番染色体の特定領域の遺伝子欠損によって突発的に生じる神経発達障害であり、稀少疾患である。視床下部からのホルモン分泌異常が起こることによって様々な症状を示すことが知られている。染色体を父親、母親の両親から受け継ぐのが正常であるが、母親のみの染色体を受け継ぐ片親ダイソミーやゲノムインプリンティングという遺伝子発現制御の異常によってもPWSは発症し、生まれた段階でPWSかどうかが決まる小児病である。低身長になるケースが多く、過食症による肥満になりその結果糖尿病を併発する場合もある。今までは、PWSの患者は脳室が拡大される等の報告はあるが、脳の構造上の健常者との違いはないため視床下部に異常があること以外は詳しく脳への影響がわかっていなかった。本研究室はPWS由来iPS細胞を用いて解析を行い、PWS由来細胞では神経幹細胞、ニューロンへの分化が進みにくいことを明らかにした。今後は、何故神経系の方に分化が進みにくいのか原因を解明することを目標に研究を進めている。
  スケールバー:200 μm
図1. 正常ヒトiPS細胞から分化誘導させた神経幹細胞
A:正常ヒトiPS細胞(Nips)を神経幹細胞マーカーNestinで免疫染色した画像(ネガティブコントロール)。iPS細胞の培養にはCellartis DEF-CS 500 Culture System(製品コード Y30010)を用いた。
B:正常ヒトiPS細胞を神経幹細胞(NSC)に分化誘導後、神経幹細胞マーカーNestinで免疫染色した画像。左上は細胞一つを拡大したもの。iPS細胞の状態から形が変形し、細胞一つ一つがNestinで強く染まっている。
(Shuhei Soeda et al., Neuroscience Letters (2019) より引用)
doi.org/10.1016/j.neulet.2019.03.029

■インタビュー

質問1. Cellartis DEF-CS 500 Culture Systemを使ってみようと思ったきっかけは何ですか?
同僚の方に紹介され、使用することになった。iPS細胞を使用したことはなかったので不安はあったが、Cellartis DEF-CS 500 Culture Systemはフィーダーフリーで培養できると聞いて安心した。
質問2. 実際に使ってみた感想はいかがでしたか?
iPS細胞は培養が難しいと聞いていたのだが、今まで使用していた細胞に比較しディッシュのコーティングをするという一手間のみで培養できるので、抵抗なくiPS細胞を使用できている。次はiPS細胞を用いたシングルセルクローニングを用いた細胞株樹立を行う予定なので、よりこのCulture Systemの強みが発揮されると考えている。
質問3. まだ使われたことがない方に対して、一言お願いします。
iPS細胞の使用経験が無くても実験を始めて一年半で論文のpublishまで持って行けたのは、この Culture Systemの培養精度が高いからだと考えています。iPS細胞培養維持のコストは決して安くはありませんが、コストパフォーマンスを考えると一考の価値はあると思います。
- ご協力有難うございました -

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