下水疫学調査(下水サーベイランス)用リアルタイムPCRキット

【腸管系病原細菌】下水検体によるシングルプレックスとマルチプレックスにおける検出感度の評価

【対象製品】
Intestinal pathogenic bacteria Detection qPCR Kit for Wastewater(製品コード RC383A)

【概要】
下水由来の精製核酸(10検体)を用い、EHEC (検出対象遺伝子:VT)、サルモネラ属菌(検出対象遺伝子:invA)、赤痢菌(検出対象遺伝子:ipaH)について、シングルプレックス、およびマルチプレックスにより検出をおこないました。反応はN=2で実施しました。

【結果】
VT、invAipaHいずれのターゲットにおいても、マルチプレックスではシングルプレックスと比較して蛍光値の低下が確認されました。シングルプレックスにおいてCt値が算出されたサンプルの一部で、マルチプレックスではCt値が算出されませんでした。

横にスクロールできます
マルチプレックスとシングルプレックスの蛍光値の比較

【考察】
ターゲット濃度が低いサンプルにおいて、マルチプレックス検出による蛍光値の低下がCt値算出の有無に影響を与える可能性が考えられます。

【方法】
  • 細菌の濃縮:遠心濃縮法
    1. 下水検体を50 mlずつ4本の50 ml遠沈管に分注し、20,000×g、25分、4℃で遠心しました。
    2. 上清を除去します。
    3. 各遠沈管に150 μlずつ滅菌超純水(MilliQ水)を加え、沈渣を懸濁させます。
    4. 懸濁液を2 mlチューブ1本にまとめます。
    5. 洗浄回収をおこない、回収液を4. の2 mlチューブに入れます。
      (懸濁液回収後の遠沈管のうち1本に滅菌超純水150 μlを入れて撹拌し、その水を別の遠沈管に移します。これを他の遠沈管にも繰り返します。)

  • 核酸精製
    濃縮液から200 μlを分取し、核酸抽出キットを用いて精製した。プロトコールに従いDNA/RNA抽出液100 μlを得ました。

  • リアルタイムPCR反応組成:
    • シングルプレックス用:取扱説明書記載の通り。
    • マルチプレックス用: 横にスクロールできます
      試薬使用量(1反応当たり)
      qPCR Mix w/UNG12.5 μl
      VT Primer/Probe25×1.0 μl
      invA Primer/Probe25×1.0 μl
      ipaH Primer/Probe25×1.0 μl
      RNase Free H2O4.5 μl
      Template5.0 μl
      Total25.0 μl

  • リアルタイムPCR装置:Thermal Cycler Dice Real Time System III (Cy5) with PC(製品コード TP990)
    HEXオプションフィルター(Filter Unit Premium (HEX/VIC) for LED(製品コード TP704))を追加。

qPCR条件:
25℃
95℃
95℃
56℃

10 min.
30 sec.
5 sec.
30 sec.
45 cycles

本データは、弊社との共同研究を通じて、国立大学法人山梨大学国際流域環境研究センター原本英司教授よりご提供いただきました。

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