Tet-Dual Expression System(Tet-Advanced IRES Fluorescent Vector Set)は、クロンテックのTet-On AdvancedまたはTet-Off Advancedシステムに独自の技術を盛り込んでいる。IRES配列と蛍光タンパク質(mCherry、ZsGreen1)マーカーを利用することにより、発現調節、誘導が良好なクローンの選抜を容易に行え、スクリーニングにかかる時間を大幅に短縮できる。
哺乳類細胞で2種類のタンパク質の同時発現が可能
Tet-Dual Systemの特徴はIRES(internal ribosome entry site)配列を利用していることである。真核生物のmRNAは5’端に近い開始コドンから選択的に翻訳が開始される。IRES配列はリボソームを引きつけてmRNAの途中から2度目の翻訳を開始する。このため2つの異なる遺伝子がバイシストロニックに1つのmRNAから翻訳されることになる(図1、2)。バイシストロニックに転写される2つ目の遺伝子の発現レベルは蛍光タンパク質マーカーを指標に視覚的に容易にモニターできる。
一過性のプラスミド導入でも優れた調節性と高い誘導能
目的遺伝子の高い発現レベルと厳密な調節性が、一過性のプラスミド導入でも得られる(図3)。より高い発現レベル、またはより厳密な調節性を示すクローンを必要とされる場合には従来法どおり、調節ベクター、応答ベクターをトランスフェクション後、安定株のスクリーニングを行うことで可能になる。
図1. Tet-Dualシステムによる2つのタンパク質の同時発現
IRES配列は1つの転写産物からバイシストロニックに目的遺伝子とmCherryを発現
図2. Tet-Dualシステムベクター
pTet-Dual ON/OFF ベクターは、構成的にTet-On AdvancedまたはTet-Off Advanced調節因子と蛍光タンパク質ZsGreen1を発現する(パネルA)。
Tet調節性の応答ベクターpTRE-Dual2は、mCherryとMCSにクローニングした2つ目の遺伝子を同時に発現(パネルB)。pTRE-Dual1(終売)はMCS上の任意の2つの遺伝子を同時に発現する。
図3. 誘導された発現の確認
pTet-Dual OFFベクター、pTRE-Dual2-luciferaseコントロールベクター、ピューロマイシン耐性ベクター(リニアライズド)をHEK 293細胞にトランスフェクションしてから14日後、ピューロマイシン選択培地上のコロニーは2種類の蛍光を示した(パネルA)。クローンはTet-Off Advanced調節タンパク質とZsGreen1を共発現している。Doxの非存在下で、クローンはmCherryとルシフェラーゼ遺伝子の発現が誘導され、HEK 293細胞は赤色の蛍光を示している。Dox濃度依存的に減少するルシフェラーゼの発現(RLU)をパネルBに示した。
語句補足
・Tet調節ベクター:
トランスアクチベーター(Tet-On/Off Advancedタンパク質)を発現するベクター(pTet-Dual ON/OFF Vector)
・TRE
*応答ベクター:
Tet調節タンパク質により誘導される発現ベクター(pTRE-Dual1(終売)、pTRE-Dual2 Vector)
* Tet Response Element
内容
Tet-On Advanced IRES Fluorescent Vector Set
(製品コード 631112)
・pTet-DualON Vector
・pTRE-Dual2 Vector
・pTRE-Dual2-Luc Control Vector
・Linear Hygromycin Marker
・Linear Puromycin Marker
Tet-Off Advanced IRES Fluorescent Vector Set
(製品コード 631113)
・pTet-DualOFF Vector
・pTRE-Dual2 Vector
・pTRE-Dual2-Luc Control Vector
・Linear Hygromycin Marker
・Linear Puromycin Marker
保存
-20℃
注意: | IRES配列上流のMCSに翻訳されるORFをクローニングしていない状態では、蛍光タンパク質の発現が弱く、蛍光顕微鏡による検出が難しい場合がある。IRES前のMCSに約0.7~1.2 kbの遺伝子を挿入して使用することをお勧めする。
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