Dominant-Negative Vector Setを用いて、主要なシグナル伝達経路の活性と相互作用を研究することができる。これら5つのベクターセットには、強力な野生型タンパク質を発現するベクターと非機能的なドミナントネガティブ変異体を発現するベクターがそれぞれ含まれており、経路の活性化やノックダウンが可能である。これらのベクターと適切なシス作用性レポーターベクターを同時発現させて完全なアッセイシステムを構築し、シグナル伝達経路の活性化測定やその定量化を行うことができる。
p53
p53 Dominant-Negative Vector Setは、p53および関連するシグナル経路の研究に使用できる。これらのベクターは、野生型p53とそのドミナントネガティブ変異体を高いレベルで構成的に発現する。単に野生型p53遺伝子を含むベクターをトランスフェクトするだけで、その後、形態や他のタンパク質の発現の変化を調べることにより、p53の発現が特定の細胞株に与える影響を解析できる。
IκBα
IκBα Dominant-Negative Vector Setは、NFκBの阻害物質であるIκBα(普段はNFκBを不活性に保ち、サイトゾル中に隔離させている)を操作することにより、NFκBの制御を調査可能な便利なベクターセットである。このベクターセットを用いれば、IκBαを過剰発現させた場合の影響(薬剤により特異的にリン酸化)と、IκBαM(いかなる条件下でもリン酸化を受けない)の効果を比較することができる。これらのベクターとcis-acting NFκB Vector(1)を組み合わせて使用することで、NFκB経路の活性化を測定、研究するための完全なアッセイ系を構築可能である(図1)。
CREB
CREB(cAMP応答配列結合タンパク質)はプロテインキナーゼA(PKA)シグナル伝達経路の下流で働く転写因子である。CREB Dominant-Negative Vector Setには、構成的に活性化された2種類のドミナントネガティブ変異体が含まれており、異なる機序でCREBシグナルを遮断することにより、CREBで活性化される遺伝子を明らかにすることができる。
RasおよびRaf
Ras Dominant-Negative Vector Setは、Ras(ヒトの腫瘍成長を含む多くのシグナルを中継するGTP結合タンパク質)の研究に使用できる(2)。また、Clontechでは最もよく研究の進んだRasの下流エフェクターであるRafの解析用ベクターセットもご用意している。Ras/Raf Vector SetをPathway Profiling Systemと組み合わせれば、異なるシグナル伝達経路間のクロストークを簡単にモニターできる。
なお、すべてのベクターはCMVプロモーターを含んでいる。
図1. pCMV-IκBとpCMV-IκBαMを用いたNFκB活性の阻害
HEK 293細胞に図中に表示した各プラスミドを一過的にトランスフェクトした。16時間後、細胞にTNFを含む新鮮な培地を加え、NFκB経路を誘導した。6時間後、SEAP活性アッセイを行い、NFκBの活性を測定した。