Clontech PCR-Select cDNA Subtraction Kitを利用すれば、発現量に差のある差次的遺伝子(2種類のmRNA集団の一方で発現しているが、他方では低下または発現していない遺伝子)の選択的増幅を効率的に行うことができる(1~4)。通常、稀少転写産物の取得は非常に困難であるが、Clontech PCR-Select法はこのようなcDNAの同定に特に適している。本法では、一本鎖cDNAと二本鎖cDNAの物理的分離を要する他の方法とは異なり、目的の配列だけを指数的に増幅できる(図1)。Clontech PCR-Selectは次のように数多くの利点を有している。
・操作ステップが少なく、直接的な方法
Clontech PCR-Select法では、サブトラクションハイブリダイゼーションおよび差次的発現遺伝子増幅の一連の操作の過程で、遺伝子のサブトラクションが行われる。物理的分離は不要である。
・稀少転写産物を1,000倍以上に濃縮
本キットでは、転写産物の存在率の補正とサブトラクション操作を同時に行う。その結果、差次的に発現された稀少転写産物を得る確率が非常に高くなる。
・わずか2 μgのpolyA+ RNAでサブトラクションが可能
Clontech PCR-Selectで必要なpolyA
+ RNA量はわずか2 μgなので、調製が困難な少量のRNAサンプルには特に有用である。total RNAがng程度しかない場合は、SMARTerあるいはSMARTer Pico PCR cDNA Synthesis Kit(製品コード 634925、634926あるいは634928)を利用し、Clontech PCR-Select cDNAサブトラクションに適する高品質のcDNAを作製する。
Clontech PCR-Select cDNA Subtraction KitにはPCR酵素は含まれていないので、別途用意する必要がある。ClontechではAdvantage 2 Polymerase Mix(製品コード 639201)の使用を推奨している。
図1. PHA/PMA処理ヒトJurkat T細胞中の活性化遺伝子の濃縮
サザンブロット解析によって、サブトラクト済みcDNA中においてハウスキーピング遺伝子量が低下していることが示された。PHA 2 μg/mlおよびPMA 2 ng/mlと共にヒトJurkat T細胞性白血病細胞を72時間培養し、テスターcDNAを調製した。ドライバーcDNAは未処理の同細胞から調製した。増幅したテスター、ドライバー、サブトラクト済みcDNAを、1.5%アガロースゲル(0.3 μg/レーン)で電気泳動した。泳動後ナイロンメンブレンに転写し、既知の活性化マーカーであるIL-2aプローブ(パネルA)、またはハウスキーピング遺伝子であるG3PDHプローブ(パネルB)でハイブリダイズを行った。